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あたらしいメニュー 

秋の新しいメニューをはじめて数日が経ちました。
たくさんの方に召しあがっていただけて、喜んでいただけて、ほっとひと安心。

初めましての方も、いつもの方も、お久しぶりの方も。「新しいの、食べに来ました!」なんて言っていただけると、心のなかで小躍りしています。

新しいメニューを考えるのは、そう簡単にはいかないことがほとんどで。
季節のめぐりを感じられるもの。何かわあっと驚くようなものをこっそりと隠しておきたいし、それでいてちゃんとしみじみとした美味しさであってほしい。
決して奇抜じゃなくって、でもうっとりするような静かな美しさを纒わせたい。

うんうんと頭を捻り、手を動かして、食べてみて、の繰り返しです。

私はどこかで修行を積んだ経験もないし学校で専門的なことを学んだわけでもない。かと言ってずば抜けたセンスがあるわけでもない…なんていう気持ちが心のすみっこにいつもあります。
でも、このお店を訪れてくださるひとりひとりのお顔を思い浮かべるのは私にしかできないこと。

難しい手の込んだお菓子は作れないけれど、あの人に喜んでもらいたいな、久しぶりにあのひとのお顔を見られたら嬉しいな、という気持ちで、いつもレシピを考えるようにしています。

そうやって拵えたメニューで、大切なお友達や家族を連れてきて食べさせてあげたい、お家でも試してみる、なんて言ってもらえたときは、飛び上がるほどに嬉しいです。
そういうときの心がきゅんとなる感覚をいつでも再生できる道具があればいいのになあと思うくらい。でも、そんな便利すぎるものはきっと発明されないから、また喜んでもらえるように、レシピをつくる。四季とともに螺旋階段を登ってゆくような毎日です。   

お店をはじめて3年とすこし。
新しいメニューのレシピが出来上がる度に、「もうこれ以上何も思いつかない、もう今度こそネタ切れだよ…」と弱音を吐いている気がします。でも、しばらくすると、あの人にああいうのを食べてもらいたいな、が浮かんでくるから不思議です。

顔の見える、手の届くところにいてくれるひとたちのために働けるって幸せな仕事だな、と思います。
いつも、ありがとうございます。


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