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先っぽねずみの遺伝子|ショートショート


今日で最後かもしれない。 いつもそう思いながらこの小さく丸い網状のゲージにさきっぽねずみをいれる。 名前は付けない。 そういうしきたりなのだ。

 情が移っては困る、ということなのだろう。 
棒の先っぽに取り付けられた丸い網に入れられたさきっぽねずみは、いつものごとく堂々としている。
 さきっぽねずみは恐怖を感じることがないよう遺伝子操作されたねずみだ。

 大きな地殻変動が起こり、地球の地図が全く役に立たなくなってしまったこの世界で、今一番人気のある職業が冒険家だ。 
新しい土地と隠されていた鉱物を見つけ出すため多くの冒険家が生まれた。 
冒険家達の必須アイテムとして、重宝されているのがさきっぽねずみだ。

 慣れているねずみなら、ポケットの中に入れたり肩に乗せて連れて回るが、通常は丸い網状のゲージに入れてリュックなどにひっかけて持ち運ぶ。

 冒険をしていると空気があるのか、何か危険な動物がでてこないかしらべなければならない時がある。 そんな時に活躍するのがさきっぽねずみだ。

 そこらへんに落ちている枝や棒切れの先にさきっぽねずみの丸い網をくくりつけ、危険があるかもしれない場所に差し込む。

 さきっぽねずみが生きていれば危険はない。
 そうでなければ、対策を練ってふたたびチャレンジする。 そうやって近代の地球の冒険家は世界の地図を書き換えてきた。 
冒険が日常化した時代、最初の頃に危険な場所に置かれるねずみがかわいそうだということで、ねずみの遺伝子操作が行われた。

 名だたる冒険家の遺伝子を組み込んで恐怖を感じない生きものへと進化した。 
だからねずみではなくて人科に分類した方が良いという話も持ち上がっている。

果奈は大きく息をすって、震える手でさきっぽねずみをくくりつけた棒を洞窟の奥へ差し込んだ。
しばらく待っても何もおきない。
少し左右に振ってみる。
それでもくらいついてくる生き物や、さきっぽねずみの悲鳴は聞こえない。

今日もさきっぽねずみは生き延びた。
果奈も一緒に生き延びた。


まだ直したい所がいっぱいあるけど、ひとまず出す!

田丸雅智さんのショートショートメソッド「たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座」という本を読んで初めて書いたお話です。

衝撃的な書きやすさに、震えながらたぶん1時間くらいでできたとおもう。

衝撃すぎてオンライン講座にも申し込みました。
講座で書くやつものせよう。そうしよう。



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