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◇第4回「右に左に、そして真っ直ぐに」

みなさん、こんにちは。
キャリアコンサルタントの糸井です。
 
突然ですが、スティーブ・ジョブズさんを知っておられますか?
 
多分「知らない」と答えるのが難しいくらいの超有名人ですね。
 
アメリカApple社の共同創始者のひとりで元CEOですが、若くてしてこの世を去ってしまったことは残念でなりません。
 
生前、彼がスタンフォード大学の卒業式で語った有名なスピーチがあります。こちらも知っている人は多いのではないでしょうか。YouTubeなどにも当時の映像がありますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
(ネットでは、和訳したスピーチ内容なんかも掲載されています)


 
私個人の話をして申し訳ないのですが、私自身はこのスピーチの内容と自分の人生を照らし合わせて非常に共感と教訓を得ています。
 
さて、そんなスティーブ・ジョブズさんの卒業式でのスピーチに関して、キャリア理論に通ずる、興味深く、印象的な内容がありますので、ご紹介をさせてください。
 
少し長文になりますがお付き合いを頂ければ幸いです。
 
 


「(中略)そして17年後、私は大学に通うことになりましたが、スタンフォード並みに学費が高い大学に入ってしまったのです。労働者階級の両親は蓄えのすべてを学費に注ぎ込むことになってしまいました。
そして半年後には大学に通う価値が見いだせなくなってしまったのです。
当時は人生で何をしたらいいのか分からなかったし、大学に通ってもやりたいことが見つかるとはとても思えませんでした。私は、両親が一生かけて蓄えたお金をひたすら浪費しているだけでした。
私は退学を決めました。何とかなると思ったのです。
多少は迷いましたが、今振り返ると、自分が人生で下したもっとも正しい判断だったと思います。
退学を決めたことで、興味もない授業を受ける必要がなくなりました。そして、おもしろそうな授業に潜り込んだのです。
もちろん、いい話ばかりではありませんでした。
私は寮の部屋もなく、友達の部屋の床の上で寝起きしました。
食べ物を買うために、コカ・コーラの瓶を店に返し、5セントをかき集めたりもしました。毎週日曜日は7マイル先にあるクリシュナ寺院に徒歩で通って、温かい食べ物をもらったものです。しかし楽しい日々でした。
もちろん当時はそれが自分の人生で何かの役に立つとは考えもしませんでした。
ところが10年後、最初のマッキントッシュを設計していたとき、カリグラフの知識が急によみがえってきたのです。」
「(中略)将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。
だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと、信じるしかないのです、運命、カルマ、なんにせよ。
点が道をつなぐと信じていれば、あなたは自分の心に従う自信を得られるでしょう。困難な道を進まなくてはいけない時でさえです。そしてそれは大きな差をもたらしてくれると思っています。」
 
「(中略)私が30歳のとき、会社(共同創始者との意見の食い違いにより、取締役会の決定にて自ら築いたアップル社)から追い出されたのです。
(中略)それは周知の事実となりました。私の人生をかけて築いたものが突然消えてしまったのです。これは本当につらい事でした。アップルでのつらい出来事が変わるわけではなかったです。会社を追われました。しかし情熱は消えませんでした。そして、もう一度はじめからやりなおそうと決心したのです。
そのときは気づきませんでしたが、アップルから追い出されたことは、人生でもっともベストな出来事だったのです。」
 
「(中略)アップルを追われなかったら、今の私は無かったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私にはそういうつらい経験が必要だったのでしょう。人生においてまるでレンガで頭を叩かれるかのようなことがあっても、信念を失わないことです。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。
仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。
好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけません。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。すばらしい夫婦関係と同じように、年数が経つと共に少しずつ良くなっていくものです。だから探し続けてください。絶対に、立ちとまらないで。」
 
「(中略)あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。」
 
 
いかがでしょうか?
ふーん、と思われた方もいれば、何らか感じられた方もいるかもしれませんね。
 
最初にお伝えしたいのは、
 
・スティーブ・ジョブズさんのような超有名、優秀な人でも最初から綺麗にレールが引かれていた訳ではなく、むしろ予期しない多くの出来事が待ち受けていたこと。
 
・その予期しない多くの出来事が待ち受けていた中でも、新しい学びを摸索し、失敗に負けず努力し、状況に応じて姿勢や考えを変え新しい機会が必ず来ると信じ結果がどうなるか見えずとも行動をしてきたこと。
 
その結果として、世界中から称賛されるリーダーになった、ということ。
です。
 
「はいはい、それは偉人の話ですからね。私には関係ありませんよ、無理ですよ、できませんよ。」
 
いやいや、ちょっと待ってください。
 
そういう方もいるでしょうから、ここで皆さんに「プランドハプンスタンス」理論に関してお伝えしたいと思います。簡潔に述べますと、
 
偶然をチャンスに変える!
 
・・・というお話となります。
 
「は?ギャンブルですか?」
 
違います。
 
 
プランドハプンスタンス理論は、これまた偶然にも”スタンフォード大学”の心理学者であるジョン・クルンボルツ博士によって提唱されたキャリア理論の一つです。
 
Planned(計画された)Happenstance(偶然の出来事)
 
「偶然が計画される・・・?意味不明。矛盾してる。」
 
まあ、そう言わずに。
 
 
私たちは、激しい社会の変化の中で生きています。
自然災害やコロナ感染症などなど、私たちがコントロールできないことが多々起こっています。
 
キャリアにおいても同様で、ひと昔前のように、大手企業に入れば階段式に将来は安泰だ!などという時代は過ぎ去ってしまい、「自分のキャリアはこうなんだ!」と決めつけたり、目標を決め込んでも計画が崩れる(総崩れ)などという事態は普通に起こり得ます。
 
目標を定めることが悪いと言っているのではありません。むしろ、プランドハプンスタンスになぞらえると、
 
目標にこだわりすぎず、方向性として定め、柔軟に対応する。
ことが大切だと言われています。また、クルンボルツ博士は、
 
「偶然の出来事は人のキャリアに大きな影響を及ぼし、かつ望ましいものである」
 
と述べています。つまり・・・
 
今の時代、社会の変化や会社の変化が激しく起こり、予期しない部署異動の発生、スキルや知識が不足していることで壁に当たる、そのため一生懸命勉強をすることによって仕事の幅が広がり新たなキャリアが開く、突然のライフイベント・・・こういった様々なことが思いもよらず目の前に訪れます。それは計画していたはずのことへも影響を与えていくことになります。


この計画(Planned)に対して予期せず影響を与えたり変更を余儀なくされる出来事(Happenstance)が起こった際に、自身がどのように振舞うかがその後のキャリアに影響を与えるということを理解することが大切ですよ、ということなんですね。
 
これまでの人生で、そういった予期しないことが起こった時に、あなたはどう振舞いましたか?
そのような時に、
 
「ふざけんな」「やる気なくなった」「もうやめた」などなど
 
こういった考え方ではこれからの時代、乗り切れないよ、というのがクルンボルツ博士の提言です。そこで、博士は変化を乗り切るために5つのスキルが必要と述べています。


  「そんな簡単に行くわけがないじゃないか」
 
そうですね。でも、そう言って諦めるか、自分で自分を変えるか、がこれからの時代を乗り切るために必要なことなんです。
 
更に、プランドハンプスタンス理論においては、
 
「キャリアの80%は偶然の出来事で決まる」
とも言われています。これは、ビジネスに成功した人のキャリア調査において、成功の転機となった80%が、本人が予期せぬ偶然によるものだったそうです。
偉人であるスティーブ・ジョブズさんの人生はまさにプランドハプンスタンスですね。歴史に名を残すような偉人でも最初から成功が約束されていた訳ではなく、前述の5つのスキルを持って道を歩んできたということです。
 
一緒にするなどは当然恐縮ながら、一日本人である私の人生もプランドハプンスタンスの連続でした(よろしければ第1回「ご挨拶」もご覧ください。拙い人生ですがきっとわかって頂ける・・・はず?)。成功者だけでなく、誰にでも大切な理論なのです。
 
転職活動を迎える(考えている)経験者の方に関しては、深くご理解頂ける内容ではないかと信じております一方、就職活動を迎える学生のみなさんにとっても大切なことと思います。
 
昨今、見えない未来を漠然と不安視し、内定をとっても決められないという方を多々お見受けします。確かに、進路選択をするに際して慎重になられることは大切です。ただ、どのような業界、職種、会社を選択しようとも、自身の予期せぬ何かが起こるものだと織り込んでおくべきだと思います。もっと言えば、変化の激しい世界の中で当然のことである、くらいに考えておく必要があるかもしれません。
しかしながら、一方で直面した予期せぬ出来事をチャンスに変える方向へベクトルを向け、5つのスキルをどう磨くかを考えつつ迷わず進んで頂きたいと切に願っています。
 
今回はかなりの長文になってしまいました・・・
途中で飽きてしまった方、申し訳ございません。
感心を持って頂いた方、深く深く感謝申し上げます。
 
次回もぜひお付き合いくだされば幸いです。

~Profile~
キャリアコンサルタント/ミツイワ株式会社 人財開発部 人財開発課長
糸井 圭吾(Keigo Itoi)
学習院大学 経済学部卒。外資系IT企業入社後、大手銀行向けSEを経験。
その後、外資系並びに国内系IT企業において人事職に転身し、企業制度
設計、評価システム導入、採用、人材教育等、人事業務全般に携わる。
2016年7月ミツイワ株式会社入社。人財開発部にて採用並びに教育責任者として現在に至る。
主な有資格は国家資格キャリアコンサルタント、キャリアデベロップメントアドバイザー、行動心理士、メンタルヘルスマネジメント など。

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