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サブリミナル効果

「あなたって、会話の中にちょいちょい私を誘ってくるわよね? それってサブリミナル効果を狙っているの?」
 と彼女は言った。

「え? サブリミナル効果って、映像の中に人が認識できない一瞬の映像を入れ込んで潜在意識に直接刷り込ませる効果のことだよね? 意識できている時点でサブリミナル効果って言わないんじゃないか?」

「私は感が良いの。私はいつだって用意周到なの」
 何でここで「シン・仮面ライダ」ーの緑川ルリ子のセリフをぶっこんでくる? それって自分を浜辺美波と錯覚させて魅力的に思わせる効果を狙ってる?


「わかってる。欲しいんでしょ?」
 新しい学校のリーダーズのオトナブルーの歌詞を使ってイメージアップをはかろうとしてる? そのうえジェスチャーまで真似て僕を誘ってる? 首振りダンスをして魅力をアピールしてる?


「サプリメントを飲んだって、効果なんてないのよ」
 なんだかぜんぜん違う話になっちゃってる。序盤からぜんぜん違う話になっちゃってる。

「別にサブリミナル効果なんて狙っていないよ。君のことも狙っていない」
 と僕は答えた。

「そんな悲しいこと言わないでよ」
 と彼女は涙目になって、目をウルウルさせて、僕を見つめた。
 ああ、そんな目で僕を見つめないでくれ。

「君のことが好きだ」
 と僕は思わず言ってしまった。もう正直に言うしかない。君はもうみんなまるっとお見通しなのだから。

「ふふふ。私の勝ちね」
 と彼女は勝ち誇った笑顔を僕に向けた。

「え? これ何のゲーム? にらめっこ的なもの?」
「はい。あなたの負けー。私の言うとおりにしなさい」
「何でだよ?」
「私のことが好きなんでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ、クリスマス・プレゼントにティファニーのネックレス。それからティファニーで朝食をして、クリスマス・ケーキを買って」
「ティファニーは宝石店であって朝食はできないよ。あれはただの小説のタイトルであって、ものの例えだから」
「でもオードリー・ペップバーンは映画でパンを食べていたわよ」
「あれは映画の演出だよ。それにあんなことを許されるのはオードリー・ヘップバーンだけだ」


「何よ? 私に魅力が無いっていうの?」
「君は魅力的だよ」
「はい、私の勝ちー」
「え? まだゲームが続いていたの?」
「恋なんて、ゲームみたいなものよ」
「そうだけどさ」
「じゃあ、決まりね」

 いいけど。好きだから。


おわり。


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