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ポテト再会

 マクドナルドでハンバーガーのセットを頼む。セットのポテトはSサイズだ。
 世界的なパンデミックの影響で物流が混乱し、北米からの輸入が遅れていたために、ポテトの供給が足りなくなっていた。
 そのためしばらくの間、MとLサイズのポテトは販売が停止し、Sサイズのみが購入可能であった。
 しかしそれが、ようやく再開された。
 だけども僕は、相変わらずSサイズのポテトを頼んだのだ。

 そう言えば、ポテトが足りなくなった頃と時同じくして、僕は恋人ともなかなか会えなくなっていた。
 長距離恋愛の僕の恋人は、感染防止のために、しばらく会っていない。
 Zoomでの会話にも疲れて、そろそろ会いたいと思う。
 そんな寂しさの中で、僕は一人でハンバーガーを食べるのだ。

 彼女はポテトが大好きだ。だからいつもポテトはLサイズだ。
 僕は一人だから、Sサイズを頼んだのだ。
 ポテトが少ないことが、余計に寂しさを誘う。
 こんなことだったらLサイズのポテトを頼むべきだったりと後悔する。
 今ならLサイズを注文できるのだから。

 恋人からLINEが来た。
「今どこ?」
「マクドナルド」
 と僕は答える。
 返事はなかった。
 既読スルーかよ、と思う。

 窓際のカウンター席で、ハンバーガーを頬張る。
 窓の外には都会の人混み。


 少しして、誰かが僕の隣の席に座った。
 誰だろう、と思って見ると、それは僕の恋人だった。

「ポテトのL、再開したのよ」
 と言って僕の恋人は微笑んだ。


 僕は、ポテトのLに再会した。
 いや、僕は恋人に再会した。



おわり

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