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参政党と「統一教会」①~ビジネスカルト参政党が急激に勢力を拡大できた秘密



無党派中流層をターゲットにしたネットワークビジネスで儲ける参政党

2022年7月の参院選で国政選挙に初挑戦した参政党は、比例で事務局長の神谷宗幣が当選、併せて得票率が2%を上回って政党要件を満たし、国政政党としての資格も獲得した。それまで一般国民には全くと言っていい程知られていなかった結党2年目の無名の政治団体が一気に議席を獲得し、国政政党に躍り出たのは異例中の異例で世間を大いに驚かせた。

参院選挙後もその勢いは止まらず、選挙直後の8月21日には幕張メッセで「国政政党誕生予祝パーティー」という名の大規模政治資金パーティーが開催された。巨大な会場が最後尾の席までぎっしり満席と言う大盛況。しかもこの1回だけで2億円が集まったというから凄まじい集金力だ。参加者は6500人(オンラインも含めれば7千人)という事なので、一人当たりだと平均約3万円強を支払った事になる。

高校生と25歳以下1万円、一般席2万円、S席5万円、SS席10万円の政治資金パーティーに6500人が集ったというのもひとつの驚きだが、コロナ禍にも関わらず参加者の大半がノーマスクというのもいかにもカルト政党らしい。SS席の10万円と言えば労働者の4割を占める非正規労働者の手取り月額平均の半額以上の高額で、一般庶民がおいそれと出せる額ではない。

参政党が特異なのは、「ネットワークビジネス企業」でもある事。そのネットビジネスのひとつが党員のための政治学校「参政党DIYスクール(SDS)」。「DIYスクール」について「文春」は、「サマソニの隣で6500人ノーマスク集団が… 排外主義、陰謀論で党員10万人を集めた“参政党現象”の“正体”」という記事の中で次のよう書いている。

党員が議員として活動したい場合は、通学が18万円、通信が6万円。他党の「政治塾」には1000円のものもあるから桁が違う。あまりに高額な印象だ。

参政党の党員種別は0円のサポーター、党費月500円のメルマガ会員、党費月1000円の一般党員、党費月額4000円の運営党員にわかれている。一番高い運営党員には、大規模イベントへの運営参加資格、政策立案における投票権、公認出馬議員の党内予備選挙における投票権などが与えられる。しかし、党費は自民党や立憲民主党の党費(年間4000円)の12倍。決して安くはない。

「参政党DIYスクール」の収入だが、結党1年目である令和2年度の収支報告書によれば、約4700万円となっている。

神谷が設立した「イシキカイカク株式会社」が運営するリアル参加とオンラインを組み合わせた社会人向けのセミナー「イシキカイカク大学」第5期の受講料はもっと高額で、通学コース40万円、通信コースでも15万円と一般庶民には手が出ないお値段。通学コースの募集人員は80名、通信コースは無制限。通学コースだけでも3200万円を集められる計算だ。

講師陣は、元自衛隊特殊作戦群指揮官で退官後は明治神宮至誠館の館長を務め、アニミズムのような自然信仰の信奉者荒谷卓、米海兵隊や民間軍事会社で訓練を受けた対テロ戦闘の専門家という丸谷元人、幼い頃よりサイキック能力を自覚し、霊能力者に師事したと自称するスピリチュアル・カウンセラー並木良和、ガチガチの転向反共主義者長篠原常一郎など、経歴を見るだけでも怪しげな面々がずらりと顔を揃えている。

スクール・セミナー系ネットビジネスには、以上の他に「統一教会」系地方議員の巣窟で超保守王国石川県で開いている「加賀塾」がある。これは神谷が加賀市で展開している「加賀プロジェクト」の一環で、保育園、私塾、フリースクールなどの学校を開設、これに共鳴した移住者希望者を呼び込んでいる。

旧小学校校舎や看護学校などの市の施設を借りて開講したので、地元では神谷が大阪吹田市議時代に立ち上げた保守系地方議員組織「龍馬プロジェクト」との関係や市有施設の政治利用ではないかと問題になっている。

この「プロジェクト」には国会議員参与として優生思想で有名になった杉田水脈をはじめ、大岡敏孝、鈴木英敬の3人の自民党国議員が関わっているので、裏に美味しい利権でもあるのかもしれない。

こちらも3時間のオンラインセミナー受講料が5万円と3万円という結構な値段

                                  この他に相当高額な「教育商材」「体験ツアー」等もネットで手広く販売している。下記のような商材の他に演説会や大規模屋内集会会場でも「各種参政党グッズ」が売られている。

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目が飛び出る程高額のリンスやシャンプーも売られている

                                  これだけ幅広くネットビジネスを展開しているのを見ると「政治とビジネスのどちらが本業なんですか?」と聞きたくなるのだが、要するに参政党自体が二足の草鞋を履いた「政治ビジネス政党」というコンセプトなのだろう。両者の相乗効果も狙えるので「一粒で二度美味しい」新しい政治ビジネス・モデルという訳だ。

以上のような集金活動の手法を見ると、参政党は高額な参加費など払えない低所得層などはそもそも最初から相手にしておらず、経済的に比較的ゆとりがあり、食の安全や健康、自己啓発、スピリチュアルなど精神的なものへの関心が高い所謂「意識高い系中流無党派層」をターゲットにしている様子が伺える。       

参政党大躍進の謎

参政党は2020年の結党後、2年間で9万人近い党員と5億円以上の政治資金を集めたと公表している。

今でこそ大学教授でテレビにもよく出ていた武田邦彦が参院選の候補者となり、歌手の長渕剛などとの関係も取りざたされているが、結党時は「れいわ」の山本太郎のような有名人は一人もおらず、日本第一党、新党くにもりなどと同様、一般人には無名の群小右派政治団体のひとつに過ぎなかった。

元俳優・現職国会議員で有名人の山本太郎率いるれいわ新選組さえその主張からテレビには一切出してもらえないめ、結党当初は党員や資金集めに非常に苦労していた。ましてや参政党のような有名人のいない無名の弱小政治団体がいくらネット戦略に長けていたとしても(実際にはそれ程でもないが)最も影響力の大きなテレビにでも大々的に取り上げられでもしない限り、短期間での勢力拡大には大きな限界があると考えるのが普通であろう。

参政党は上に書いたようにはDIYスクール、セミナー、商材ネット販売などを行って来た。これ以外にユーチューブの参政党公式チャンネル、ユーチューバーを使ったネット広報活動、クラウドファンディング、ネット記事、各種SNS、グループチャット、街頭演説や政治集会、宣伝チラシの配布、タウンミーティング、口コミなどを活用した宣伝広報活動展開している。

しかし、このような草の根宣伝活動だけで短期間に9万人近い党員と5億円以上の政治資金を集める事は、通常なら不可能に近い。

こうした宣伝手法の中で最も威力を発揮するのはネット活動だろう。そこで参政党のネット空間における実力だが、以前は自身もネトウヨで、その後、ネトウヨを卒業した評論家古谷経衡は、「羽鳥慎一モーニングショー」で、参政党公式ユーチューブ登録者数が19万6千人だった事にについて次のように解説している。

「政党としては多い方だが、これを政治系ユーチューバーとしてみるとそれ程多い数ではない。政治系ユーチューバーの中には50万、100万の登録者を持つものはざらにいる。」

確かにユーチューブの政党別動画再生回数で比較すると、参政党は多いどころかむしろドン尻に近く、昨年の参院選終盤ではネット選挙に弱い共産党にすら後れを取っているのが分かる。この例を見ても参政党がネット選挙にそれほど強い訳ではないことが見て取れる。

参院選地方区45選挙区すべてに候補者を立て、全国区でも5名を擁立と、大量立候補させたもののマスコミの受け止め方はあくまで諸派扱い。選挙期間中は、最も影響力の大きなテレビでも取り立てて注目を浴びる事はなかった。

ところがである。いざ選挙戦が始まってみると街頭演説会には毎回数百人から多い時には千人近くの熱心な聴衆が押し寄せて拍手喝采、屋内集会をやればどの会場も熱気ムンムンの超満員。大規模イベントを開けば10万円の高額SS席が飛ぶように売れてすぐに完売。会費月4千円の党員数もうなぎ上りで、あっという間に9万人に達する勢い。

政治にはあまり関心のない一般国民にはほぼ知名度ゼロの政治団体が、初挑戦の参院選比例で一気に約177万票を得て見事1議席を獲得するという異常事態、いや「超常現象」を巻き起こしたのだ。

5億円の選挙資金で50人の候補者を擁立して選挙を戦う事は可能か?

次に参政党が集めたと言う5億1200万円で立候補者50人を擁立して選挙戦の費用を賄う事が出来るのか見てみよう。

まず集票ターゲットが被り、選挙手法も似ていると思われる「れいわ」と参政党とを比較してみる。7月の参院選における「れいわ」の立候補者数は比例区9名、選挙区候補者5名の計14名。これに対して参政党は比例名簿5名で「れいわ」より少ないものの、選挙区の方は何と全選挙区に45名の候補者を擁立している。

「れいわ」は2019年の結党後、2020年までに約5億円の個人献金があったと公表している。その後の国政選挙で所属候補が当選し、政党要件も満たした事で政党助成金の交付対象となり、2021年は2億600万円を得ている。2022年も参院選までに前期分1億円程度が交付されたはずだ。

2022年参院選のために前回衆院選前のように集会等で5億円程度の個人献金を集めたと仮定すると、政党交付金と合わせて約8億6千万円。党の運営費等や日常活動の経費も必要になるからこの金額をそのまま選挙に使える訳ではない。山本太郎は選挙前「30人は擁立したい。」と話していたように(うろ覚えで)記憶しているが、候補者の供託金合計6900万円と選挙スタッフ、選挙運動費用等を考えれば候補者14名を擁立するのが多分限界だったのだろう。

一方、参政党の国政選挙初挑戦費用だが、50名の候補者の供託金だけで合計1億6500万円。真面目に選挙を戦おうとすれば、これ以外に候補者毎に次のような経費が必要になる。

選挙事務所賃貸料と光熱費・電話代、宣伝カーリース代、ウグイス嬢、選挙事務所スタッフ、選挙ハガキ宛名書き・法定宣伝ビラ証紙貼付・ポスター貼り・演説会準備作業員などへの謝礼と弁当代・お茶代・交通費・宿泊費などの実費、看板や沢山の幟、オレンジ色のユニフォーム、政策宣伝ポスターと政策宣伝ビラの製作費(なお、選挙ポスター、法定宣伝ビラは公費負担あり)、新聞広告料、消耗品代その他。

経費内訳は以上のようなものだが、では、実際にはどのくらいの金額がかかるのか。参政党は、参院選に支出した選挙経費の総額は公表していない。ただし、「参院選にはいくらお金がかかる? リアルな選挙費用の実態」というネット記事に北海道選挙区で2019年に初当選した自民党新人候補の例が紹介されている。

それによると、選挙費用総額は2451万円。このうちポスター、法定ビラ、政見放送製作費などの公費負担分818万円を除いた候補者側の実費負担分は1830万円となっている。支出内訳は、「広告費565万円、印刷費558万円、宿泊費411万円、人件費349万円、家屋費287万円など」となっている。支出の1830万円のうち、1650万円は自民党の政党支部からの寄付。残り180万円は個人からの寄付。

この額を参政党が当選と党勢拡大をめざして全候補が真面目に選挙活動をやったと仮定した上で、立候補者数に単純に当てはめてみると、何と9億1500万円にもなる。供託金合計額1億6500万円と合わせれば10億8千万円!

この金額は、参政党が7月10日までに集めたとする5億2100万円の支援金の2倍を超える。しかもこれは17日間の参院選挙運動期間中だけに限った経費。

選挙区が広い参院選の場合、実際の「選挙運動」は投票日の半年以上前から始まっており、選挙事務所も数か月前から開設するのが当たり前とされてる。この結果、公示日以前に大勢はほぼ決まってしまっているとさえ言われる。

期間が長いだけに選挙公示日(告示日)前の「事前運動」の方が実際の選挙運動期間中より金がかかるのはこの「業界」の常識だ。「事前運動」期間まで含めれば候補者一人当たり総費用は6千万円という話もある。

衆議院が解散含みの政局となり、選挙に向けた事前の選挙活動が過熱し始めると立候補予定者たちが「一刻も早く解散してくれ!」と政権に解散圧力を強めるのは、長引けば長引くほど事前選挙運動に経費がかかって本番まで資金が持たなくなるからだ。

以上のように選挙には途方もないカネがかかるのだ。選挙資金面だけをみても参政党が全選挙区と比例区に50名もの候補者を擁立して真剣に選挙を戦う事自体が難しいはずなのだが、新参の小政治団体にも関わらず参政党はその高いハードルをいとも簡単に超えてみせたのだ。

(「NHK党」も参院選全選挙区に候補者を立てているが、実態は政党の体をなしていないいい加減な右翼パフォーマンス集団。選挙運動もまともにやっている形跡はないので、同列には扱えない。)

選挙運動期間だけをとっても不足分の5億円以上の資金は、いったいどこから湧いてきたのかという素朴な疑問を持たざるを得ない。どう見ても、これはおかしい、何か裏がありそうだと考えるのは筆者だけだろうか。

もっとも、参政党の候補者はそれほどお金を使っていなのではないか?という反論もあるだろう。確かに選挙活動自体をセーブすれば自民党程の選挙費用はかからないのかもしれない。現に埼玉選挙区参政党候補者の総支出費用は620万円、岡山選挙区は約335万円と報告されている。

確かにこの金額だと参考にした自民党候補者の場合より遥かに低いのは事実だ。しかし、これはあくまで17日間の選挙期間中の費用であり、その数倍はかかるとされている「事前運動」期間中の経費は含まれていない。

また選挙活動自体をセーブし、運動量を減らせばその分選挙費用を押さえられるのは確かだが、運動量は、得票の増減に直結する。ユーチューブにアップされている参政党候補者たちの選挙戦を見る限り、手を抜いている形跡は見られない。どの候補者も選挙カーをチャーターし、活発に選挙運動を展開している様子が伺えるし、だからこそ一部の熱狂的支持者を呼び込んで全国区で1議席獲得できたとも言える。

仮に「事前運動」期間も含めた総費用を1千万円と最低限に見積もったとしても、全候補者の総選挙費用は5億円を下らず、その場合でも供託金分がほぼ丸々赤字になる。また、また参政党より多い選挙資金を用意したと思われる「れいわ」の立候補者数と比較してもその不自然さは明らかだろう。

参政党とカルト宗教団体とのつながり

そこで、足りない選挙資金の出所や選挙スタッフの供給先で真っ先に思い浮かぶのが、巷間取りざたされている参政党と「統一教会」とのただならぬ関係。

昨年、ジャーナリストの鈴木エイト氏が、ワイドショーで「維新市議なりすましビラ騒動」に関連して「参政党も統一教会が支援に入っているというケースも結構報告されている」とコメント。これに対し、神谷宗幣が「印象操作だ。」とツイッターで噛みついていたが、鈴木氏が印象操作などをする理由はなく、そのような情報が寄せられているのは事実なのだろう。

参政党とカルト団体との関係が気になって少し調べてみると、参政党ボードメンバーと「統一教会」との人的つながりが段々見えて来て、今回の「急激な党勢拡大」、「大躍進」なるものの正体についても「なるほど、そういう事か」と合点がいったのだ。

つまり、国民一般にはほぼ知名度ゼロでもバックに豊富な資金や大きな動員力をもつ組織や団体が付いていたのであれば、このような「大躍進」もそれ程不思議な事ではないという事だ。

雪だるまのようなもので、最初からある程度の大きさの雪玉があれば転がしていくうちに短期間でどんどん大きくなっていく。無名の旗揚げメンバーだけでは、絶対にこうはならない。

初めから大きな組織や団体が入っていたのであれば、それは非常に大きな強みとなる。支援団体から政党の「核」となる党員や熱心な支援者、ボランティアの選挙運動員、事務所スタッフなどの他、パーティ券購入など様々な手段で選挙期間中も人手や資金を回してもらえるからだ。

ここで参政党の大規模選挙資金パーティのSS席が10万円と超高額だった事を思い出して欲しい。神谷宗幣自身も「統一教会」信者が個人的に応援してくれる分には問題ないと明言しているくらいだから、資金パーティに「統一教会」や日本会議などの極右カルトエセ宗教団体の信者が動員されていたとしても何ら不思議ではない。

また高額の参加費もカルト団体本部から「参政党への政治献金も教会への献金と同じだ。」と言われれば信者たちは「喜んで出す」と思われるし、指示されれば党員になって党費を納める事も躊躇しないはずだ。多分、自己啓発セミナーや高額教材についても同じ事が言えるだろう。

「統一教会」が自民党議員の選挙応援を行っている事は明白で、自民党候補者から見れば「手弁当でわき目も降らず一心不乱に働いてくれる」信者運動員・スタッフは非常に頼りになる有難い存在。何しろ、無給の上、一人でアルバイトスタッフ何人分もの働きをしてくれるのだから、これほど頼もしいものはない。

自民党と同様、参政党の街頭演説会や集会にもかなりの数の組織的動員がかけられていた可能性がある。その多くが「サクラ」であっても傍目にはそれとは分からない。

旗揚げ初期から街頭演説などに沢山の熱心な聴衆を集めれば、「雪だるま効果」で「出来たばかりの政党なのにすごい!」「熱気がある!」「参政党旋風!」などとと話題になる。SNSを使った「クチコミ」やユーチューブ動画などの格好の宣伝材料にもなり、それが多くの無党派層を引き寄せる事につながる。

無党派層にアピールする参政党のセールスポイント

勿論、演説の内容がつまらないものであれば、「聴衆が多い割には中身がない」とすぐに期待は凋んでしまうだろうが、その点については演説会やユーチューブ、SNSなどで初めて参政党を知った人を引き付けて離さないための「戦略と工夫」が用意周到に練られていた節がある。

これには二つの基本戦略があり、そのひとつが他党との差別化。
売り物は「食の安全」とオーガニック信仰、健康、自己啓発、スピリチュアル、排外主義と純血主義、「大和民族」は優れているとする選民思想、ニセ科学、反グローバリズム、反ワクチン・反マスク、そして陰謀論。

他党が言わないような事を意図的に前面に押し出している形跡がありありで、各党の政策の空白地帯を狙った所謂隙間産業のようなもの。

「食の安全」とオーガニック信仰、健康、自己啓発、スピリチュアル、反マスク、反ワクチン、陰謀論などは、先に書いたように比較的生活にゆとりのある意識高い系中流無党派層へのアピール素材。他党が絶対に口にできない日本版Qアノンのような陰謀論を前面に押し出しているところなどは、ニセ科学が大好きな参政党らしい。

もうひとつは極右国粋主義的視座、つまり右からの自民党批判。参政党の綱領には「日本の精神と伝統」「天皇中心」「天皇統治下の人民」を意味する「大御宝」(おおみたから)などという明治時代のアナクロ天皇崇拝用語が散りばめてあってびっくりするのだが、これは自民党に飽き足りない国粋主義的右派層を新興右翼政党としての参政党に取り込むための工夫。

参政党は、「LGBT法」には強硬に反対している。なぜなら、参政党が理想とする大日本帝国時代の女性は明治民法と「家父長制家族制度」にがんじがらめに縛られた無権利状態に置かれており、ジェンダー平等など存在しなかったからだ。

しかも、街頭演説会や集会では幹部たちが「LGBT法やジェンダー平等などは、共産主義者が日本破壊するための陰謀だ」と日本会議や「統一教会」とそっくりのデマを繰り返している。これだけでも、参政党のお里が知れるというものだ。

大和魂や「国守り」を強調し、祖国を外国から守る日本男児とそれを後ろから支える大和撫子という構図の「性による役割分業論」は、ジェンダー平等に大反対の極右層には心地よいはずだ。

日の丸が大好きな参政党 
写真はニセ医学「波動療法」を提唱する幹部の歯科医師吉野敏明

また、山本太郎ほどではないが、参政党の実質的党首である神谷宗幣も聴衆を引き付ける話術は心得ており、演説はそれなりに熱があってうまい事もプラスになっている。

以上のように、わざとごった煮かつカオス状態にしている節があるものの、他党の政策にはない目新しく特異な主張が保守層や選挙の度に揺れ動く無党派層、投票したい政党がない層の興味を引き付け、参院選での躍進につながったものと思われる。

                                  次回は、参政党ボードメンバーと「統一教会」等カルト団体との関係について考察する。

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さだまさし「檸檬」(1978)

歌詞の中に聖橋、湯島聖堂、(駅前の)スクランブル交差点、赤い快速電車と各駅電車のレモン色などの風景が散りばめられていて、お茶の水界隈で青春時代を送った(昔の)若者たちにはなつかしい曲。御茶ノ水駅周辺は私大がひしめいており、当時、駿河台にあったマンモス校中大も八王子に移転するがしないかの時期で、「石を投げれば学生に当たる」という時代だった。

この曲がヒットしていた頃、聖橋からレモンを実際に放り投げて快速電車や各駅電車との交差具合を確かめようとした不届き者が続出。夥しい数のレモンが神田川に浮かんだという噂があったが、私は一種の「都市伝説」だとばかり思っていた。

随分後になって大学の後輩にこの話をしたところ、本当の話だと言うのでびっくり。さだまさし本人が深夜ラジオ番組で、わざわざ「レモンの不法投棄は、おやめください。」と視聴者に呼びかける事態にまでなったそうだから、こうなるともう社会現象に近い。

神田川に浮かんでいたレモンの多くが、齧りかけだったというのも笑える。 この時投げられたレモンが「盗んだ」ものかどうかは定かではないが、さぞかし酸っぱかった事だろう。曲のベースとなった梶井基次郎「檸檬」には「一つだけ買うことにした。」と書かれており、「盗んだ」ものではないのだが。

御茶ノ水駅と聖橋 

                 
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