見出し画像

海外SFドラマの金字塔② 『アウターリミッツ』(The Outer Limits)

冒頭、「これはあなたのテレビの故障ではありません。」という若山源蔵の有名なナレーションで始まる『アウターリミッツ』。

予算や30分ものと1時間ものという違いはありますが、脚本に重きを置いたロッド・サーリングの『ミステリーゾーン』と比べると『アウターリミッツ』は、明らかにビジュアル面に力を入れていました。         特撮も『ミステリーゾーン』よりずっと大掛かりで頻繁に使われ、宇宙人や怪物たちの造形にもお金をかけています。               また、特に第1シーズンは怪奇幻想的な作品が多く、怪生物が数多く登場するのも特徴でした。

第1話『宇宙人現わる』は、反物質?で出来たような宇宙人が事故によって地球に転送されてしまったことから起きるパニックを描いたファースト・コンタクトもの。

昔、淀川さんの「日曜洋画劇場」で1度だけ放映されて、視聴者を恐怖のどん底に突き落した伝説の怪奇映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』(1964)と同じ手法の、ネガを反転させたようなギラギラした宇宙人の姿が、この世のものならざる雰囲気を出していて非常に不気味でした。

画像1

余談ですが、『シェラ・デ・コブレの幽霊』の監督は、『アウターリミッツ』第1シーズンの制作を担当したジョセフ・ステファノその人なのであります。                               

全49話の同シリーズ、他にも名作が目白押しなので、何本か紹介してみましょう。 

『ガラスの手をもつ男』(脚本ハーラン・エリスン)           地球最後の「男」のサバイバルをゲームのようにスタイリッシュな演出で描いた『アウターリミッツ』の最高傑作。

1000年後の未来、カイバン星人との戦いに敗れた人類は一夜にして姿を消してしまいます。人類はどこに消えたのか。残されたのは、ガラスの義手をした男トレント(ロバート・カルプ)ただ一人。人類消失の謎を探るためにトレントは現代にタイムスリップして来ます。

トレントが気が付いた時、3本のガラスの指が欠けていました。応答型のコンピューターであるガラスの手から「カイバン星人に奪われた3本の指を取り戻せば、人類の行方が分かる。」と告げられたトレントは、未来の人類の存亡をかけてカイバン星人に戦いを挑んでいきます・・・。       現代人の女性とのロマンスもからませたほろ苦いラストが秀逸。

画像6

ハーラン・エリスンは『アウターリミッツ』では、この作品とタイムスリップSF『38世紀から来た兵士』の2本の脚本を書いていますが、ジェームス・キャメロンの『ターミネーター』はこの2作品のパクリだと訴え、勝利を勝ち取っています。

これに懲りたのか、キャメロンは『ターミネーター2』の制作にあたって、訴えられないように岩明均の傑作マンガ『寄生獣』の映画化権をあらかじめ押さえたのは、結構有名な話。                   キャメロンさん、『寄生獣』を読んでいたんですね。

『人工惑星ウルフ359』                      実験室に20万分の1サイズの地球そっくりの惑星を人工的に作り出し、生物の進化を顕微鏡で観察する男を描いたマッドサイエンティストもの。                                     生物は超スピードで進化し続け、ついに人類が出現します・・・・。   もし、宇宙に進出したミニ人類が宇宙の果てに到達して真相を知った時、どんな反応をするのか大変興味深いものがありますが、残念ながらドラマの人工地球はその前に破壊されてしまいます。

画像6

この作品は観察者である科学者の視点から人工地球の生物進化過程を描いていますが、もし、これが『ミステリーゾーン』で作られていたらどうでしょう。

ロッド・サーリングなら視点をミニチュア地球の人類の側に転換する可能性が高いのでは?                           うまくすれば、萩尾望都の『百億の昼と千億の夜』(原作 光瀬龍)のような作品が出来上がるかもしれません。ラストで主人公の阿修羅王は、宇宙を作り変える「超越者」の存在にまでたどり着くのです。

逆に、そのミニチュア地球の科学者も同じような実験をしていたら、これはもう完全に無限ループ状態ですね。                  

クレジットされていませんが、元ネタがエドマンド・ハミルトンの傑作短編『フェッセンデンの宇宙』であることは確実です。『フェッセンデンの宇宙』でもラストは、無限ループ的なオチが使われていました。      無限の宇宙の外に無限の宇宙があり、無限の宇宙の内側にもまた無限の宇宙がある・・・。

『二階にいる生物』                         時間の流れから隔絶された二階家の中で、脳髄だけの宇宙人によって長期間囚われの身になっている人々の運命を怪奇幻想的ムードたっぷりに描いた秀作。

家の敷地から一歩でも外に出た人間は急激に年をとり、最後は崩れて灰になってしまいます。人々は、宇宙人の実験材料にされていたのです。   まるで、若き日のジャック・ニコルソンが主演したロジャー・コーマンの『古城の亡霊』のラストシーンのようですね。                                               もしかすると元ネタは、1942年に怪奇幻想パルプ雑誌『ウィアード・テールズ』に掲載されたカート・シオドマク『ドノヴァンの脳髄』(映画化あり)あたりかもしれません。

画像3

                                 『蟻人の恐怖』                           ザンティ星人が勝手に地球を流刑地に指定して、囚人(蟻人)たちを送り込んでくるという一種の地球侵略もの。脚本がひねってあって皮肉っぽい結末が印象的でした。                           一部ではあるものの、襲ってくる蟻人の特撮にお金と手間がかかるコマ撮りアニメをTVドラマの中で初めて使ったのは画期的。

画像4


『火星!その恐るべき敵』(原作、脚本ジェリー・ソウル)        火星の砂の海に生息する蟹と龍が合体したような肉食怪獣と宇宙飛行士との戦いを大掛かりなセットを組んで描いた宇宙怪獣もの。         放送局が変わり、シリーズ名も『ウルトラゾーン』と改題されて放映された第2シーズンの第1話として放映されました。

他にも紹介したい作品はまだまだありますが、今回はこの位にしておきましょう。    

後継番組の『新アウターリミッツ』は1995年から7年間に渡って全7シーズン計154話も作られた人気番組でしたが、旧シリーズのリメイクはほんの一握り。内容も怪奇的な作品や怪物ものはほとんどなく、正攻法のオリジナルSFが大部分を占めていました。

その意味では肩透かしでしたが、出来不出来の幅が大きかった旧シリーズに比べると質的なばらつきがあまりなく、割合安心して観ていられました。 その代わりラリー・ニーヴン原作の『無常の月』などごく一部の例外を除くと、大傑作として心に残る作品が少ないのも事実です。

画像5

『新アウターリミッツ』の後、長らく後継作品が途絶えているので、このあたりで最新VFX技術を使った旧シリーズの忠実なリメイク・シリーズを期待したいところです。


                            

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

ドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?