LSD《リリーサイド・ディメンション》第40話「灼炎と絶氷の季節の終わり」
*
炎帝と氷帝、炎家臣三体と氷家臣三体、火属性の魔物たちと水属性の魔物たちを相手にオレたちは戦う。
火属性の魔物たちと水属性の魔物たちは空のエレメントが入った空想の箱で瞬間転移してきたエンプレシア騎士学院の生徒たちに戦わせている。
炎帝と氷帝と炎家臣三体と氷家臣三体はオレ、アスター、マリアン、メロディ、ユーカリ、チルダで戦っている。
炎帝と氷帝は風帝と同じく二十メートルを軽く超える巨体だ。
炎帝は赤色の剣を、氷帝は青色の剣を装備している。
炎家臣と氷家臣は風家臣と同じく十メートルを超える大きさであり、炎家臣は炎を出し、氷家臣は氷を出している。
だが、その攻撃はオレたちには効かない。
なぜならオレたちはチルダの特性を解析し、エンプレシア騎士学院の生徒全員に霊化能力を付与しているのだ。
だから、もうオレたちに攻撃は届かない。
あとは――。
「――フラミアっ! ミスティっ! 想いの力を強くしろっ! 火玉の指輪と水玉の指輪を錬成するんだっ!!」
「でもっ! おまえに恋をするなんて……」
「そうですわっ! もうちょっと時間が欲しいですっ!!」
「時間なんて必要ないっ! オレはキミたちが大好きだっ! だから一緒にセントラルシティへ行こうっ!!」
「へえっ?」「はいっ?」
「フラミアの相棒のサラマンダーも、ミスティと一緒にいた動物たちも一緒に連れて行くっ! 苦労はさせないっ! オレは、そういう男だからっ! だから、ずっと一緒にいようっ!!」
フラミアとミスティの顔が赤くなる。
「みんなでいこうぜっ! オレたちっ! だってオレは、みんなを守る後宮王《ハーレムキング》だからっ!!」
フラミアとミスティの胸から光が生じる。
「来たかっ!!」
フラミアの胸からは赤色の光が、ミスティの胸からは青色の光が、それぞれ輝き出す。
フラミアは火玉の指輪、ミスティは水玉の指輪、同時に出現した。
「よしっ、フラミア、ミスティ、この空想の箱を受け取れっ!!」
「ああっ!!」「はいっ!!」
フラミアとミスティにも空想の鎧を着装させる。
「火玉の鎧っ!!」「水玉の鎧っ!!」
この状態ならば魂の結合をこの場にいる全員にオレの∞のAPを付与できる。
「みんなっ! わかっているとは思うけど、今のオレは本調子じゃない。だから魂の結合は永続的には使えない。けど、ここぞというタイミングでAPを伝播するっ! 思いっきり戦えっ! 以上だっ!!」
『了解っ!!』
まずはユーカリが炎家臣三体に勝負を挑む。
「この有加利の指金具で、おまえたちを叩くっ、ですっ!!」
有加利の指金具は水属性の格闘武具だ。もちろん氷属性の技も使える。
「水流拳っ!!」
地のエレメントの空想の箱から出現した大地を足場にして、ジャンプしながら技を発動するユーカリ。
「氷結拳っ!!」
水と氷の技を順番に発動するユーカリ。
「水流氷結拳・連打っ!!」
水属性と氷属性の拳の攻撃が連続して炎家臣三体を襲う。
「これで、終わりですっ!!」
炎家臣三体は技を見せることなく消滅する。
「ユーカリに続く、ですよっ! この花蘇芳の杖でっ!!」
氷家臣三体を標的にするメロディ。
「花蘇芳の杖は花蘇芳の鎧を装備しているとき、風、火、水、地、空の五属性の魔法を使うことができるのですよっ!!」
メロディは風、火、水、地、空の五属性を組み合わせた極大魔法を作り出す。
「これで終わりですっ! 爆発新星っ!!」
氷家臣三体は爆裂の魔法により粉々に砕け散った。
「あとは、おまえたち帝だけだっ!!」
火属性と水属性の魔物たちは騎士学院の生徒たちによって殲滅された。
『…………』
風帝のように発言をしない炎帝と氷帝。
「まあ、あんたらはそれほどでもねえな。まだ風帝のほうが強かったぞ!!」
「いえ、後宮王《ハーレムキング》……そうではないんですよ。私たちが強くなりすぎたんですっ! この世界の法則を理解した、あなただからこそ、私たちが強くなることができたのです」
「アスター……ありがとな。もう、大丈夫だ!!」
炎帝と氷帝を見上げるオレは、ある空想の箱を開錠する。
「チルダの霊化能力の付与のおかげで、もう攻撃は効かない。だから……いくぜっ! ――咲け! 白百合の花よ! 空想の箱、開錠! 来い! 心器――白百合の双剣!!」
煌びやかな白き光をまとった二本の剣が、オレの両手に装備される。
「フラミアっ! ミスティっ! 指輪を薬指に装備して、祈れっ! フラミアはオレの左手の剣に、ミスティはオレの右手の剣に属性付加してくれっ!!」
「ああっ!!」「はいっ!!」
灼熱地獄の炎の膜と絶対零度の氷の膜をオレの両手の剣に属性付加させる。
「十秒だっ! 真・魂の結合、実行っ!!」
アスター、マリアン、メロディ、ユーカリ、チルダを含むエンプレシア騎士学院の全生徒にオレの∞のAPを伝播させる。
全員に、それぞれの属性の双剣の空想の箱を開錠させた状態で、すべての力を出し切る形で……全員で、同じ技を叫ぶ。
シンクロ率は無限大だった――。
――炎帝と氷帝が放つ炎と氷の攻撃はオレたちには通用しない――。
――もう、勝ちは決まっていた。
『灼炎十絶氷之二百合斬!!』
無量大数を超えるくらいのヒット数が出た。
全員ひとりずつ、二百ヒットの炎と氷の技である灼炎十絶氷之二百合斬を出したからだ。
これで四帝のうちの三体――風帝、炎帝、氷帝――が、オレたちによって倒された。
灼炎と絶氷の季節が終わり、もとの、おだやかな季節が来るのだった――。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?