いつまでも大切にしよう(短編小説)

仕事を終えた後、いつものように家路を急ぐ。

だが、その足取りは普段よりも速い。

今日は早く帰りたい理由があったからだ。

「ただいま」

玄関のドアを開けると、すぐに台所からパタパタと足音が聞こえてくる。

そしてエプロン姿の彼女が、ひょっこりと顔を出した。

「おかえりなさい! お仕事お疲れ様!」

満面の笑みを浮かべて出迎えてくれる彼女。

その笑顔がとても眩しい。

彼女の笑顔を見ただけで、仕事の疲れなど吹き飛んでしまう。

俺は靴を脱いで家に上がると、彼女をぎゅっと抱きしめた。

「えへへ……ご飯にする? お風呂にする? それとも……」

彼女は恥ずかしそうにもじもじしながら、上目遣いで見つめてくる。

もちろん、答えは決まっている。

「……君がいい」

俺がそう答えると、彼女は顔を真っ赤にした。

そして、小さな声で呟いた。

「……ばか」

俺たちはそのまま寝室に向かい、ベッドに倒れこむ。

そして、お互いの愛を確かめ合うのだった。

「ねえ、あなた。このお洋服、似合うかしら?」

そう言って妻が見せてきたのは、新品のワンピースだった。

妻はスタイルがいいので、なんでも着こなしてしまう。

だから、どんな服を着ようとも似合ってしまうのだ。

なので、わざわざ聞かなくても分かるのだが、あえて聞くということは、俺に褒めてほしいのだろう。

「ああ、よく似合ってるよ」

そう言うと、妻は嬉しそうに微笑んだ。

それからしばらく他愛のない会話をした後、妻が不意に聞いてきた。

「あなたは、私に何をしてほしい?」

突然の質問に困惑するが、素直に答えることにした。

「いつもみたいに笑っていてほしいかな」

それを聞いた妻は、一瞬きょとんとする。

しかし、すぐに笑顔になった。

「それなら、私はあなたの隣でずっと笑っているわ」

そう言った妻の顔は、今まで見た中で一番輝いて見えた。

「ねえ、あなた。何か欲しいものはある?」

夕食を食べながら、妻が尋ねてきた。

特に欲しい物はないが、強いて言うなら妻の手料理だろうか。

だが、そんなことを言えば怒られそうなので黙っておくことにする。

「そうだなあ……君の作ったものならなんでもいいよ」

すると、妻は少し考えこんだ後、再び口を開いた。

「それじゃあ、私の全てをあげるわ」

それを聞いて、思わず吹き出してしまった。

「なんで笑うのよ!?」

「ごめんごめん、君があんまり可愛いことを言うからさ」

そう言うと、妻は顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

そんな姿も愛おしいと思ってしまうあたり、俺も相当やられているなと思う。

「でも、君さえよければ俺の全てをもらってほしい」

それを聞いた妻は、さらに顔を真っ赤にしてしまった。

やはり、可愛らしい人だ。

俺はそんな妻を、いつまでも大切にしようと心に誓うのだった。

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