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3-6.ひとりひとりが書く答辞P②

さて、このプログラムがPBLの中で難易度が高く、かつPBLとして学生のファシリテーション力・時間内に何をどうすべきかを考える力=マネジメント力を鍛える所以になったのは、答辞の作文というアウトプット=目に見える成果を上げる必要があるからだ。
これは、初回のH小以来である。
H小では5年生の1年間のなかでいくつか選択肢があり、そこから選んだ中でエピソードを想起するので、テーマ設定にそこまで時間は要しなかったが、今回は答辞なので、3年間の過去からテーマを選定するところに大学生が付き合うことになる。
時間が足りないことは、最初から想定されていた。
それをどうすればいいのかを考えるのが書くPの醍醐味のひとつだ。
社会には、こんな問題はゴロゴロしている。
学生の間はこういう機会があっても「頑張りましたが、できませんでした」が「学生さんだからね」と許される環境にある。
が、許されるかどうかは別にしても、「自分たちが関わった以上は、中学生に自分らしい答辞を作ってもらいたい」と参加する学生たちが本気で思い、その思いで「答辞を書き上げることができるようにする」プログラムにしていくことが、このプロジェクトの成功のためには不可欠だ。

ざっくりとした出来上がりの作文(答辞)イメージとシナリオはこうだ。

中学生が3年間(1000日間)を振り返って、一番伝えたいことを、伝えたい人に、自分らしい言葉や表現で綴られた答辞にして贈る。一人一人が書いた答辞はクラスごとに束ねる文集となる。

中学生にはテーマやエピソードを選んでもらい、大学生がそれを掘っていく。掘ってでてきた言葉や文章、感覚などを素材に文章にしたてる。
このようなワークを大学生は4、5名の中学生を相手にリードする。

本番では、大学生のリードとファシリテートで、中学生が事前にシートに書き込んだ言葉よりも多くの、また思いもよらなかった未知の言葉を中学での3年間を振り返りながら掘り起こしていく。書くPの基本スキームである。
シートを埋め、それを構成に落とし、最後に文章にする。この一連のワークをシナリオに落とし、プログラムの構成と流れを時間配分に落とす。シナリオに落とすことでワークの中身もあらたにみえてくる。大学生の事前ワークや事前研修の状態をみながらワーク、シナリオに修正等を加える。この一連のプログラム開発作業が書くPのエッセンスであり、書くPの成否を左右する。
プログラム全般の企画・プランニング、シナリオ、シートの開発・作成は、これまで同様、私が行った。

大学生に期待される関与は、これまでとは異なり、高いファシリテート力が求められる。だが、大学生の3分の1は書くP未経験者である2年生が占める。大学生には、これまで以上のチームワーク力が必要だった。


事前の取り組み~リーダーおよびメンバーの確定

大学生への告知とメンバー募集は、1月上旬にメールにて募集をかけた。
予想以上に43名の学生が手を挙げてくれた。
どのくらいの数、大学生が参加してくれるかにより、プログラムの内容は変化する。人数が多めに確定できるのは進行の助けになる。ちなみに中学生は180名だ。単純計算でいくと、大学生1人に4.5人の割合になる。

今回はそれに平行して、5名の学生にリーダーをお願いした。
リーダーとサブリーダーが確定したあと、経験の有無、掘る力、引き出すのレベルを考慮して5つの班と構成メンバーを(仮)決定した。

大学は1月中旬は定期試験中である。
メンバー全員への課題等のお願いは定期試験が終わるまで待つことにした。ただし、リーダー5名と希望者にはシートを送り、1月19日に立ち上げたMLへのアップをお願いした。

MLの立ち上げと活用
19日からリーダーおよび希望者とのやりとりがスタートした。
リーダーは、シートを埋めるワークをする中で気づいたことや疑問等をMLにアップ。T先生・私がそれにこたえる。
リーダーとのすりあわせがある程度進んでいないと、他のメンバーとの情報や指針の共有が難しくなる。

私は、リーダーに次のようなメッセージをMLにアップした。

<今回の目的と、大学生のチェックポイント>
今回のPの目的は何かということを何度も確認しておいた方がいいと思うので、再度スレッドを立てておきます。
まずは、このPでは、中学生に、自分の3年間のまとめとしての答辞を書いてもらうこと。そしてその答辞は、誰かに伝えるもの、として設定すること。ここを一番最初に明確にしておいてください。そのためになにをどうしたらいいのかを考えていくのが私たちのアクションです。
いくつかのワークを設定しています。シートの流れは、あえてこのままにします。
 「伝える相手を先に設定させたほうよいのでは?」という意見がありました。そこもあえてそのままにします。というのは、まずは自分が何を得たかとか何を感じたかとかそこを「自分なりに考えて落とすことが、がまず基本」だからです。「誰に伝えるためか」から行くと、中学生はぶれが出る可能性があるからです。大学生~社会人になると、誰に伝えるの?もかなり大きな目的の設定になります。だけど、中学生の場合、誰にからいくと、「誰に伝えるからこの表現にしないと」に限定される恐れもある。まずは、自分が自分の3年間をどうとらえてどう感じるかが先決ですよね(ここの違いは中学生には説明する必要はありません)
 中学生の考え方として、まず本人が何をいいたいのかをメインに考えることを優先して、統一しましょう。まず本人の考え・思い、を出していくこと。次に、そしてその考えや思いを自分だけで持っておくのではなく誰かに伝えよう、という順番となるということです。
 なお、そのうえでみなさんが、中学生に対峙する時に、テーマ・伝えたいことを、「誰に対して言うの?」と振り返るときに確認していくことは問題ない(というかやっていってほしい)ことです。

 今回の目的は「答辞を書く」(自分なりの3年間を振り返って、まとめをすること)ということを再確認。(何度もいいます)
 答辞を書くには、
・中学での生活を振り返り・まとめる作業を行う(テーマ設定・何について書くのか・一番伝えたいことは何か(何をいいたいのか)・その理由・エピソードの設定)←これについては、まずはこの順番で作業を。止まってしまう子に関しては最終的に何を言いたいのか、なぜ言いたいのかが落とせるように、順番を変えてのアプローチはOK。五感シートでの感覚・感情の確認は、エピソードで設定したシーンを鮮やかによみがえらせ、文章に感情を添えていくためにしていく、ということにとどめましょう。
・構成を作る。
・本文を書く、の流れになります。
今回皆さんも感じているように、最初(初日)のワークがカギになります。で、ひっぱっていく大学生は、初日のワークを経て、構成~文章に落としていくことを、イメージングしておく必要があります。
以下、構成の形(ひな形)を決めておきます。
(FIX)は順番として固定という意味。
( )の数字は、シートと対応。
・あいさつ(FIX)
・伝えたい人は誰か(?)
・何について書いているのか(?)~具体的(5W1H)
・何を言いたいのか(?’一番伝えたいこと)~決め台詞
・なぜ言いたいのか(?)~理由
・エピソード(?)~出来事+思い・感覚・感情
・伝えたい人に感謝の気持ち(FIX)
以上は、大学生の頭に入れておくチェックポイントです。

リーダーとのすりあわせがほぼ終わった23日から、他のメンバーのMLへの登録を開始した。
今回も膨大なメールがML上にアップされることが予想されたので、
各班ごとのスレッドや全体共有のスレッドを立てることをメンバー、特にリーダー、サブリーダーには指示した。

オフサイトの事前研修、各班のMTG(ミーティング)
事前研修は1月26日(火)、27日(水)に実施した。
メンバーには、事前研修までにMLからシートをDLして、自分で取り組んでおくことが指示された。
当日は、シナリオをもとにプログラムの流れを共有すると同時に、シートをもとにプログラムの目的を確認した。
書くP未経験者は何をやるのかすらイメージできていないはずだ。イメージできないことに関して話を聞いても理解や認識は深まらない。
リーダーには、シートをお互いに掘り合う演習を未経験者に課すように指示した。

このプロジェクト準備時は、入試関係で教室が使えず、多目的スペースでしかMTGが持てない状況だった(ここには管理人のような方がいて、いすや机をこうして寄せたりして使うと、こっぴどく叱られた。場が他にないので、私やT先生は何度も「初めて聞きました」みたいな顔をして謝って何度も使っていたが、プロジェクト遂行には、MTGに適した場があることがとても重要だと思う。

ML上の事前研修・MTG(ミーティング)
班ごとの入念なミーティングが書くPには不可欠だ。
しかし、現実には、大学生の日程調整が困難を極める。
そのような状況を前提に書くPではMLが大きな役割を果たす。
あるいは大きな役割が期待される。

MLの一番のメリットは情報共有である。
個々のメンバーや班が今何をしているか、何に取り組んでいるか(課題達成に向けてどのような段取り、指針で臨もうとしているか、具体的な進め方でどのような工夫をし知恵を絞っているか、個々のメンバーはどのような意識やレベルで本プログラムに臨んでいるか)がML上で「見える」。
その進行状況に照らして、T先生や私から指示や提案がMLにアップされる。

今回はこれまで以上に、各班のリーダーがMLを活用した。
ML上で班のマネジメントを進めてくれた。書くPにとってMLは不可欠のツールであることが今回も確認された。

MLは、2012年以降はFBグループに移行したが、
ML時代の、全体を見渡せる形式は正直手放したくはなかった。
だが時代の流れに従って、FBにシフトした。
サイボウズ的なものの導入も考えたが、その環境でなければ使えないものでの意思疎通に学生が慣れてしまえば、それがない組織に行った時に彼らの中に違和感が先に立ってしまう可能性がある。
それは避けたかった。
なので、我々が使うコミュニケーションツールは、誰でもが無料で入手でき使えるツールで行うことを心掛けている。

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