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私の心は手が掛かる。

今日は朝から病院に行って、その後、約3ヵ月ぶりに会社にも行った。復職トレーニングを始めるにあたって、課長を交えて、今後のことを話すため。

面談の予定は、ちょうどお昼休みが終わって少し経った頃だったので、エントランス付近にはほとんど人がいない。今にも、手も足も震えだしそうなほどの緊張をごくっと飲み込んで、3ヵ月前と変わらぬ手付きで、社員証を首から掛ける。警備員さんに「お疲れさまです」と声を掛けて、手を消毒して、エレベーターのボタンを押す。

さっきまでの震えが嘘みたいに、久しぶりに会社に入った私は、なんだかすんっとしていた。

たった今出先から帰りました、みたいな顔していたと思う。背筋もしゃんっとしていたし、歩幅だってぐんっといつもより大きくなっていたと思う。我ながら、あっぱれ見事な「すんっ」ぷり。きっと、猪爪寅子*も感心するほどの「すんっ」ぷり。(*今期の朝ドラ『虎に翼』おもしろいよ、是非みてね!)

それでも心はビビってる。めちゃくちゃにビビっている。移動中ずっとハイキューの主題歌を聴いて、無理矢理奮い立たせようとしているくらいには竦んでいる。

だけど、心は外から見えないし、喋らないから、私が言葉にしなきゃこの緊張も不安も心配もなにも伝わらないのだ。家族にだって、上司にだって、もちろんカウンセラーさんにだって。「すんっ」とその場の空気に合わせるのが得意な私は特に。

ちゃんと言葉にしてあげなきゃ、何も伝えられないのだ。

全く心ってやつは、本当に手の掛かるやつだ。今もそう思う。自分の感情とは言え、自分でも理解しきれないくらい、ずっとぐらぐら不安定に揺れているものを、相手に伝わるように言葉にするのは一苦労。親にだって話すのは難しい。2週間に一度のカウンセリングの度に、台本を用意するくらいのレベル(しないけど)で、何度も何度もシミュレーションしてやっと言語化できているようなもの。

いっそ、しなくていいなら、さぼりたいくらいの重労働。

だけど、もうかれこれ3、4ヵ月ずっと向き合い続けてきたもんだから、多少は愛着だって沸いている。しょうがないな、喋れない君の代わりに今日も私が話して(書いて)あげるよ。そう思えるくらいには、大切にしてあげたいと思っている。

やっぱり少し震えてしまう声になんとか芯を通して、言葉にしていく。ここ最近の調子、復職に向けての想い、一つひとつ言葉にしていく。
本格的に復帰した後の不安についてはほとんど話せなかったんだけど、今のところはそれでいいか、これから時間を掛けて話していけばいいか、そう思えたのは、私が想像していた以上に、課長が私の復職に対して慎重になってくれていたから。

来月から復職トレーニング始めるって言っても、焦らなくていいし、途中でだめになったら、休んでまたやり直せばいい。最初の一週間なんて、始業時間に顔見せに来てくれるだけでいい、「おはよう」「さよなら」でいいから。

面談を終えて、エレベーターに乗り込んだ私は、さっきの「すんっ」よりも心に見合った表情をしていたと思う。今日は少し、手の掛かるこの心と距離を縮められたかな、仲良くなれていたらいいな。


おまけ:今日のお昼は宮近くんの苦手なシソが乗っていたたらこスパゲッティでした。