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笑うな

最近、私のSNSのタイムラインには「恋文を笑うな」とよく流れる。
誰かのためだけに書いたそれを、さらされることはあってはならないし
その人にだけ伝わればいいのだから、部外者がとやかく言う資格はない。

私が恋愛に踏み出せないのは、全てが共有されるという恐れがあるからだ。
大学生の恋愛となれば、セフレがなんだ、相性がなんだ、下世話な話が共有されやすい。

聞きたくもないこと、言って欲しくもないことが友人間で、マウントを取り合うように共有される。
私はそれがとんでもなく気持ち悪い。

ただ、その「嫌だ」という感覚が、どうやら私の星の空間では正しいようで、安心する。


というのも、先日、朝井リョウさんの「スター」を読んだ。
圧倒的で全人類が認めるスターがいなくなっている今、たくさんの小さな集合体によって世間は構成されており、
異なる集合体のことは完全に理解できずとも、
否定することはしたくないよね
ただ、同じ価値観を持つ人がいると安心するよね
そして、すごく良い物(コンテンツ)は集合体をも超越していくものになる

といったようなことが大まかに描かれている(主観だが)

その中で、星型を例に挙げ、
星は☆の形をしていないのに、ほとんどの人が☆の形をみると星だという
だけど、その形は星ではないという人が現れてもおかしくはないし、
同じように、星型だという人がいるのもおかしくはない
☆を星だと言う人と出会ったときに、一緒にいようと思う

というようなことが、主人公の彼女によって語られる。

最近のSNSは自分の興味によって、かなり情報が精査されている。
私のタイムラインは「SixTONES」「オードリー」「King&Prince」「ドラマ実況垢」「オールナイトニッポン」が占めている。
まさに私の興味をもっているものばかりだ。

そんな私の星の空間の中で、「嫌だ」と思うものが共通している意見にたくさん出会う。
もしかすると自分の意見が全て「正しい」というように勘違いしてしまう恐れもあるのかもしれない。
それでも安心できるし、同時に、私は「恋文を笑うな」と言える空間にいてよかった、そう思う。

自分の価値観は揺るぎやすいし、不安になることもある。
ただ、「嫌だ」という感覚が同じ人は信用してもいいのではないか、
そう思った、最近の話。

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