宮川 和工 / 日本伝統建築事務所

社寺建築や伝統技法に関するあれこれ。 最近良く聞かれますが、本名です。

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最近の記事

関東の神社 流造をみる②      「出雲伊波比神社本殿」

引き続き、最近気になっている関東の流造を見ていきます。 今回は埼玉県入間郡毛呂山町に鎮座する出雲伊波比神社にうかがいました。 第一印象は「大きい」こと、スケール感に圧倒されるとともに、装飾が少ないにもかかわらず、大味でないこと。とても魅力的です。 装飾でごまかさない、スッキリした意匠は木割を熟知している証拠かと思われます。  この御本殿で面白いのは、巻斗が桁を掴んでいるのですが、巻斗に入る部分だけ、桁幅を狭めていることです。  おそらく、実肘木に成りきらない時期の仕事で桁

    • 関東の神社 流造をみる①          「玉村八幡宮本殿」

      ここのところ関東で神社建築に携わる機会を得たため、類例調査として関東の流造を見て歩いている。 第1回目は群馬県佐波郡玉村町の「玉村八幡宮本殿」を見ていこう。 いろいろめずらしい部分が目に付くので、気になったことをかきだしてみたい。 ①華頭窓・桟唐戸が付いている禅宗様的な要素満載の神社本殿ということ。 ②向拝組物が出組であること。(向拝が出組のものは霊山寺本堂など仏殿ではみられる) ③実肘木を掴む巻斗と直接桁を桁を掴む巻斗が同居していること。  たぶん華頭窓は後補だろうから

      • 注連縄のはなし しめなわの向き

        以前「鳥居のはなし 左と右」のところで、一般的には注連縄(しめなわ)は神様から見て左に元(縄の綯い始め)を向けると書きましたが、一部例外もあることに触れています。 今回はこの例外について書いていこうと思います。 注連縄といえば 出雲大社が有名です。でも、この注連縄、よく見てもらうとわかるように神様からみて右、僕らから見たら左に元がきています。 私が知っている範囲では、島根の出雲大社と奈良の大神神社では注連縄のない始めが逆になっています。 なぜ逆に吊るのか? 以前、宮司

        • 木のはなし DNA

          きょうは、建築用の木材のはなし。 木の芽木の発芽には大きく2種類あると思っています。 生物学的にはそれ以上に種類はあるのかもしれませんが僕が知っている範囲では2種類です。 実生ひとつめは「実生」。 種が飛んで土から発芽した植物としては標準的な芽の出方。 挿し木もうひとつは「挿し木」。 枝の先端などを切り取り、土に挿し、差し口から根が出て成長する方法。人為的なので、自然界では起こりずらい現象だと思います。 大きくはこの2種類があります。 僕が聞いてる範囲では、挿し木では

        関東の神社 流造をみる②      「出雲伊波比神社本殿」

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        • 鳥居
          2本

        記事

          社寺建築のきほんのき 原寸図

          今日は社寺建築の基本、原寸図について。 原寸図は名前のとおり1/1 リアルスケールで図面を起こします。 神社やお寺の屋根のように軒が反ったり、屋根が弛んだりといった曲線を決定し製作するために原寸図が必要になります。 現在動いている仕事では連載している鳥居も原寸図を起こしていますし、お神輿の原型と言われる鳳輦の屋根や神社の屋根についても、原寸図を起こしてから部材を削り出しています。 鳥居の原寸図。 大きすぎてわかりにくいですが、このようにベニヤを並べて書くのが一般的です。

          社寺建築のきほんのき 原寸図

          鳥居のはなし 赤身

          引き続き鳥居の現場で話したことのメモを。 赤身赤身と言ってもマグロではありません。 材木にも「赤身」があります。表紙の写真の茶色いところのことです。 白っぽいところを「白太」と呼びます。 今回解体した鳥居の柱、地上部分で切断しました。 今回切断して解体した柱が上の写真です。写真では大きさがわかりずらいですが、直径90cmあります。 白太がほとんどないことがわかるでしょうか。 新たな鳥居の材料も白太部分はほとんど取り去って使っています。 なぜ白太(辺材)が嫌われるのか?

          鳥居のはなし 左と右

          いままで人前でしゃべったことを記録として残していこうと思っています。 僕は社寺建築や文化財建造物の設計をしているので、基本的にはそういった伝統建築に関することがほとんどになる予定です。 さて、記念すべき1回目は現在進行中の鳥居の建替え工事説明会でしゃべったことを残しておこうと思います。 いろいろしゃべった中でまずは「へぇ~」が多かったことを取り上げます。 材木の「元」と「末」木には「元」と「末」があります。 生えているときの根っこの方を「元」、空に近い方を「末」と呼びます