漫画原作「成実 ー勇武無双ー」前編

① 平地
耕地ではない広い平地。
足軽の足が地を踏む。
N 「天正13年」
叫ぶ足軽達。
N 「ここは、福島県安達郡人取橋」
激突する足軽達。
N 「伊達政宗の父晴宗の死を端に発した政宗の南奥羽を巡る戦いは、伊達家対会津の蘆名家と常陸の佐竹家、奥羽の諸大名のとの戦いに発展していった」
槍を叩く様にして戦う足軽。
N 「そして、晴宗の死を原因になった二本松城の畠山家を攻める伊達政宗に対し佐竹義重が蘆名を始めとする奥羽の諸大名と連合軍を組み伊達家と人取橋で合戦に突入した」
槍対刀の足軽の戦い。
N 「この伊達家対連合軍の合戦を『人取橋の合戦』と呼ぶ・・・」
先程の刀で戦っている足軽の兵士、劣勢気味。
また、倒れて取っ組み合いになる足軽の兵士。
兵士壱「ウッ・・・」
下で倒されている兵士。
上にいる兵士が脇差で止めを刺そうとする。
馬の蹄と馬の足のアップの図。百足の兜の前立てのアップの図。
足軽達の戦場に颯爽と現れる馬に騎乗した少数の騎馬武者達。その後ろには、槍を携帯した足軽達がいる。騎馬武者の中心には、百足の前立ての兜の武将伊達成実(本作の主人公、イメージ横浜流星)がいる。
成実 「我こそは、伊達成実(だてしげざね)なり! 腕に覚えのある奴はかかって来い! 」
成実の顔のアップ。と同時に『伊達家家臣 伊達成実』と言う文字が表記。
兵士弐「成実様だ! 」
先刻の刀の兵士、成実の到着を見て、敵の兵士に向かって、刀で突いて反撃に転じる。
兵士壱「援軍に来てくださった! 」
下にいた兵士壱も、一瞬の隙を突いて、反撃に転じる。
成実を襲いかかる連合軍の足軽の兵士達。成実、襲い来る兵士達を睨み、右手に持っていた槍を両手で持つ。
成実 「ウォォォー」
馬を走らせて、(右側面で)両手で槍を振り回し、襲いかかる兵士達に戦う成実。兵士達に向かって、槍を振り回して、叩きつけて戦う成実。  
成実 「ハッ! 」
倒した兵士の鎧で保護されていない部分を槍で突いて、止めをさす。
成実 「さあ、次の命知らずはどいつだ? 」
向かい来る連合軍の兵士達に睨む。
成実に同行していた騎馬武者達も勇敢に戦う。援軍に来た足軽の兵士達も槍を叩きつける様に敵兵士にぶつけて戦う。
敵兵士壱「こいつ等が伊達家の別動隊か・・・」
槍で止めを刺され、倒される兵士。
騎馬武者壱「成実様、この場所にいる敵軍は、ほぼ全滅しました。どうなされますか? 」
戦いが終わり、馬に乗った騎馬武者が成実に近付く。
成実 「瀬戸川館の別動隊の陣に戻るぞ。遠江にこっ酷く叱られるがな」
苦笑いする。

② 連合軍本陣 
連合軍本陣。杭や柵等が設営されている。陣幕も貼られている。
内部。太鼓、陣幕、床几、篝火等がある。
N 「前田沢城・連合軍本陣」
扇に月丸の家紋の旗。内部の中央には、床几に座っている連合軍大将の佐竹義重と家来達。
野心家の佐竹義重(イメージ春田純一)。
敵家来壱「義重様(との)」
義重「何だ? 」
義重のアップの図。と同時に『連合軍総大将 佐竹家 佐竹義重(さたけよししげ)』と言う文字が表記。
敵家来壱「蘆名、岩城等奥羽の諸大名を呼ばずに、殿が連合軍の総大将と名乗って大丈夫でしょうか? 」
義重「大丈夫だ、奥羽の大名達には、儂が総大将と名乗って良い様に手筈は付けてある」
不敵に笑う。
敵家来壱「ハイ・・・」
若干、腑に落ちない。
義重「儂の答えに文句はあるか! 」
鋭い義重の眼光のアップの図。
敵家来壱「いえ! ありませぬ! 」
慌てて、返答する。
敵家来弐「殿! 瀬戸川館付近の部隊が劣勢気味です! 」
家来が急いでやって来る。
義重「指揮している武将は? 」
敵家来弐「伊達成実です! 」
義重「政宗の従弟か」
脳裏に成実の顔が浮かぶ。
敵家来弐「殿、どうなされますか? 」
義重「雑魚は兵を使い足止めをさせろ」
敵家来弐「ハッ! 」
了解する。
義重「儂の欲しいのは伊達家の総大将の政宗の首のみ」
義重の横顔のアップ。
義重「儂には、連合軍の3万の兵がいる」
回想。多くの槍を持った足軽達や騎馬武者の図。
義重「そして、圧倒的な物量 」
回想。多量の槍、刀、弓矢、そして、鉄砲の図。
義重「だからこそ、策を用いて、連合軍の総大将となったのだ! 」
手を強く握る。
義重「この合戦に勝利し、奥羽の覇権を我が手に収める」
回想。東北(地図)のアップの図。
義重「必ずだ! 」
義重の正面の顔のアップの図。

➂伊達家別動隊の陣
別動隊の陣。陣幕、篝火、床几が設置。
N 「瀬戸川館・伊達家別動隊の陣」
成実が戻って来る。
声 「成実様! 」
成実「!? 」
声に、ビビる。
遠江「無断で家来を率いて戦に出るとは何事です!」
成実の家臣の伊庭野遠江が現れる。と同時に『伊達家 伊達成実の家臣 伊庭野遠江(いばのとうえ)』と言う文字が表記。老将でありながらもしっかりとした家臣である(イメージは緒形拳)。
成実「いや~、家来には、ちゃんと出陣するぞといったんだけどなあ~」
遠く方向を見て言う。
遠江「そう言って、これで何度目ですか! 命も落とす可能性もあったのですぞ! 」
成実に近づいて言う。
成実「まあ、こうやって生きて帰って来た事だし」
遠江「成実様がこの様では、死んだ貴方のお父上の実元様に何と言えば良いか・・・」 
無念そうに言う。
成実「政宗の兄貴も言ってただろ。この戦は、伊達家の方が兵少ないけど、あっちの連合軍は団結力はないから勝て・・・」 
遠江「何を言っています! 」
真剣な表情の遠江。
遠江「連合軍の総大将は佐竹義重ですぞ! 」
成実「そりゃあ、分かってるよ」
遠江「成実様! 佐竹義重は『鬼義重』と呼ばれた武将ですぞ! 」
回想。鬼と佐竹義重が重なって現れる。
成実「鬼・・・」
遠江「一瞬にして、7人の敵兵を斬った恐ろしい武将です!  底知れぬ強さを持つからこそ『鬼』と呼ばれるのです!」
回想。不敵な表情で刀を持ち斬り掛かる義重。
遠江「成実様、貴方が今戦っているのは、そんな武将なのですぞ」
成実「分かったよ・・・」
渋々理解する。
家来壱「成実様! 殿の使いの者がきております!」
成実「分かった! 直ぐに行く! 」
方向を変えて、使いの所に向かう成実。
遠江「貴方は伊達家を背負って立つ御方。本当に一人前の武将になって欲しい、私の願いはそれだけです」
成実の後ろ姿の図。

④伊達家・本陣
伊達家の本陣。杭や柵が設置。陣幕、篝火、床几が設置。そして、竹に雀の伊達家の家紋のアップの図。
N 「観音堂山・伊達家本陣」 
本陣の内部。床几に座っている伊達政宗。隣は政宗の重臣の片倉小十郎。右目に眼帯、軍配を持ち三日月の前立ての兜の政宗(イメージ生田斗真)と八日月とお札の前立ての兜の小十郎(イメージ斎藤工)。
政宗「オイ! 小十郎」
政宗の顔のアップ。と同時に『伊達家総大将 伊達政宗(だてまさむね)』と言う文字が表記。
小十郎「何でしょうか? 政宗様(との)」
小十郎の顔のアップ。と同時に『伊達家家臣 片倉小十郎(かたくらこじゅうろう)』と言う文字が表記。
政宗「本当に、成実を別動隊の指揮を任せて本当に良かったのか? アイツには荷が重いんじゃないのか?」
成実の顔が脳裏浮かぶ。
小十郎「いえ、殿。成実は戦に出陣すれば、冴えに冴えわたり、家来を率いて活躍できる男です」
政宗「だが、成実は、時折無茶して、突っ走る所もあるぞ」
軍配を持って、両手を交差させて言う。
小十郎「だからこそ、成実の忠臣の伊庭野遠江がいるのです。歴戦の武将遠江なら、成実を諫め補佐できるでしょう」
遠江の顔が脳裏に浮かぶ。
政宗「成程! 良く考えたな! 」
笑う政宗。
小十郎「それに・・・」
政宗「何だ? 小十郎」
小十郎「成実は猪突猛進の武将ではありません。時に、戦局を見極めて重大な決断を行って、戦に勝利をもたらせる力があります! 」
政宗「全く、そこまで成実(アイツ)を推すとは、びっくりしたぞ小十郎! 」
小十郎「成実とは、子供の頃からの付き合いです。それは、殿も同じでしょう」
ニッコリと笑う。
政宗「そうだったな! 」
政宗も笑う。

➄平地
平地。別動隊対連合軍の戦闘。
成実「ハッ! 」
馬に騎乗し、槍を振り回して、多量の兵士達と戦う。そして、別動隊の足軽達も槍を叩きつける様に戦闘。
成実「ウオー! 」
槍を叩きつける様に振り下ろす。
別の場所では、遠江も馬に騎乗し、槍を使い戦闘。
両手で槍を振り回し、戦う遠江。
成実「何だ? この敵の兵士の多さは! 」
戦闘しながら、疑問に思う。
遠江「おかしい、我等別動隊を足止めさせている様にしか思えん!」
遠江も戦闘を行いながら、敵の動きがおかしい事に気付く。
成実「もしや・・・」
険しい表情で戦う成実。
遠江「連合軍の狙いは」
額に汗して戦う遠江。
成実・遠江「伊達家の本陣か!」
両者の顔のアップ。

⑥人取橋
人取橋。文字通りの橋がある。足軽や騎馬武者達が激戦を繰り広げている。
N 「佐竹義重率いる連合軍による伊達家総本陣への総攻撃が、今正におこなわれようとしていた」
火縄銃の銃口のアップ。兵士達が火縄銃を撃つ。
兵士達「うわぁ! 」
銃弾が被弾し、次々と倒されていく伊達家の足軽の兵士達。
倒された兵士達。そして、多量の連合軍の足軽、徒歩武者、騎馬武者達が人取橋を前進していく。

⑦伊達家・本陣
本陣の内部。政宗、小十郎、家来達いる。
家来弐「連合軍が人取橋を突破しました! 」
ざわつく家来達。
政宗「連合軍が本陣に攻めて来るか! 」
軍配を強く握る。
小十郎「殿! ここは、我らが引き受けます。殿は万が一に備えて本宮城にお戻りください! 」
政宗「否! 俺は本陣に留まり戦うぞ! 」
小十郎「殿! 」
政宗「これは、父晴宗の仇と奥羽を賭けた合戦だ! そして、俺が仕掛けた戦(いくさ)! だからこそ、最後まで戦い抜く! 」
小十郎「しかし、連合軍が本陣に攻めて来た以上は、この合戦は我等伊達家の負けです! 一旦退却して、もう一度戦力整えてから戦いましょう! 」
政宗「小十郎! 俺は勝てぬ戦はせぬぞ! 」
小十郎「政宗様! 」
向かい合う二人。そして、銃声が鳴り響く。
政宗・小十郎「!? 」
銃声に驚く二人。
小十郎「遂に連合軍が攻めて来たか! 」
刀を抜き、政宗の前でに出る。
政宗「全く! 早すぎるぞ! 」
小十郎「政宗様! こうなった以上は、貴方を何が何でも守り抜きます! 」
政宗「スマン! 」
小十郎「貴方が亡くなれば、本宮城の奥方様が悲しみます! 」
政宗「愛姫(めごひめ)・・・」
政宗の脳裏に愛姫が浮かぶ。おっとりとしているが芯が強そうな政宗の正室の愛姫(イメージ有村架純)。

⑧連合軍本陣・内部
連合軍本陣。
敵家来三「義重様(との)! 我が軍が人取橋突破しました! 」
義重「よし! 前田沢城の兵力を伊達家の本陣目掛けて攻め込ませろ! 伊達家を一気に潰すぞ! 」
敵家来三「承知つかりました! 」
義重「さあ、政宗。お前の最期と刻だ」
ニヤリと笑う。脳裏に政宗が浮かぶ。

⑨伊達家・本陣
本陣。
小十郎「政宗様。成実に伝令の使いを出しました」
政宗「スマン、小十郎。成実(アイツ)には、生き残ってもらわんといかん」
目をつぶって言う。
火縄銃の銃口のアップ。そして、銃弾が発射されて、伊達家の兵士に被弾し倒れる。
ざわつく伊達家の家来や兵士達。
政宗「連合軍だ! 」
小十郎「政宗様お下がり下され! 」
政宗の前に出る。
そして、矢尻のアップ、弓から放たれる幾つもの矢。
弓に被弾し倒れる兵士達。
両矢懸かりで攻める連合軍の兵士。
小十郎「政宗様を守り切れるか? 」
焦る小十郎。
しかし、政宗達の知らない死角から、弓矢の兵士が政宗を狙う。
小十郎「!?」
それに気付く小十郎。
伊達政宗に向けて、放たれる矢。
小十郎「殿! 危ない! 」
叫ぶ片倉小十郎。政宗目掛けて一直線にめがけて来る矢が迫る。

(後編に続く)