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ピンク・ソリチュード/ブルー・ラプソディ展

中崎町のギャラリーイロリムラ様にて、は ま やさん企画のグループ展に参加させていただいておりました(8/1-8/6)。
ピンク・ソリチュード/ブルー・ラプソディとあるようにピンクとブルーを題材とした展示をそれぞれに分けての同時展示でした。ぼくはブルーの方にお声がけいただいたので、ブルー・ラプソディ展での展示でした。
ぼくが今メインで制作している作品はウッドバーニングという手法で木を焼いて焦げ加減の濃淡で絵を描いてます。絵の具はかれこれ5年以上まともに使ってない中で「青」はぼくにとって好きではありますが、手元から遠くにいってしまった色でした。そこで参加する旨の連絡をして間もなく、1枚絵のイラストレーションとして描きあげる展開は早々に諦めて、額の枠を越えたコンセプチュアルアートを目指そうと考えました。ここ2年ほどデザイン関係の活動をしていたこともあり、グラフィックデザインをベースに展開したものに決めました。
さて、「あお」と聞くと何を思い浮かべるでしょう。連想ゲームです。
ぼくは最初に「空」が出てきました。青空の直感的なイメージとして「自由」→「無秩序」ときました。同時に「となりの芝生は''青い''」なんて言葉も出てきました。そこで、自分の背負う青とそれよりももっと自由で解放されているような他人の背負う青を自分の目線で比べている様を作品にしようと考えたのです。

全体像はこんな感じです。額に飾られたグラフィックデザインの上下に言葉で埋められた紙をあしらっています。手前にはコップに青い水。これで一つの作品です。説明がなければ非常にわかりにくい作品だったと思います(笑)
まわりに飛び回っている紙には自分から見て、相手の青が自由で素敵に見えるというような短文で埋められており、マージン(余白)は天地左右すべて同じスペースをとることで、非常に「きっちりと堅苦しい」仕上がりに見せています。上へ飛んでいくにつれて染まっていく青は透明水彩でプリントした紙に着色しています。

コップは無個性に見えるデザインのものを。水に着色された青は紙を青く塗るのに使用した水彩絵の具で、筆を洗う際に筆から離れたものです。
個性さのない、非常に狭いコップの中に止まっている青。これが「自分」です。外へ向けて高く飛ぶ青い紙と対照的で、小さな佇まいをしています。

額に入った印刷物はInDesignで組みました。今回のグループ展でInDesignを活用した作家さんはおそらくいないでしょう(笑)Illustratorでも問題なく作れるものですが、単にぼくが慣れているアプリケーションがInDesignだっただけです。二本の交差する線。そこに二つの丸があり、ひとつは「自分」が見上げる目。二本の線の間にきれいに納まるように配置されています。その隣には「自分」にはない空が置かれておりますが、その自由さを物語るように二本の線の法則を無視しています。この空は決して外部的に与えられたルールに法らないのです。しかし、それがかえって見るに人によっては「気持ちが悪い」「違和感がある」とマイナスな感情を与えかねません。そういった負のエネルギーを背負う責任も含めてこの空の自由なのだと思います。

改めて作品の見方ですが、本作品は全体像を見ていただくとおわかりいただけると思いますが縦に展開された作品です。目線の位置、下の部分は「自分」。そこから上に見上げていくにつれて、自分の背負う秩序よりも解放されていく青を見ることになります。日頃の目線の位置とはその人の視界であり、等身大。自分が抱く憧れなどのプラスのイメージは自分より「上」にあるものという印象が強いのではないでしょうか。だからこそ上にいくにつれて青く解放されていくビジュアルにしました。自分が羨む相手は自分には見ることのできない自由があり、自分よりも解き放たれて見える。当然相手にだって多くの責任や義務を背負っていることくらい、生きていれば想像はつきますが、それでも尊く見えるものです。
ぼくは少し前までスーツを身につける職に就いていました。その会社は給与は決して悪くなく、待遇も今の厳しい社会の中では恵まれていた方だと思っています。しかし、そこで生きていることが自分の求めていた、思い描いていた青ではないということをずっと抱えていました。作家活動やプライベートでたくさんの方と出会い、どうしても今の自分と相手を比較する機会が多くなりました。当然知り合ったお相手はその方なりに苦労をたくさんされていることも想像できます。その上で今の自分の生き方を見直し、それでもその生き様が素敵に見える。このような経験はぼくだけでは決してないと思います。今の自分を捨て、新たな責任と共により大きな青を背負うか。少し前のぼくはまさにその選択に迫られていました。そして大きく「見えた」青を求めて一歩を進め、カフェギャラリー開業の道を選びました。空とは飛んでいけるだけの頭上の広さもあれば、同時に落ちてしまうことができる空間が下にあるものです。この先は自分次第ですが、その覚悟がなければ手に入れられない青に手を出したわけであります。自分の青と他人の背負う青。この経験は今を生きる方全員に、生きている限りそれぞれに与えられているテーマであると思います。少しでもこの作品に心通じていただければ幸いです。
最後に、この離れていってしまっていた一つの色へ、今一度向き合う機会を与えていただいた作家は ま やさん、そしてご一緒させていただいた作家の皆様に改めてお礼申し上げます。

無い頭脳(あたま)を捻ったような文章ですが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

きのねのまこと

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