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【奈良県三宅町町長の声をレポート#6】三宅はスタートアップヴィレッジへ。人や企業が主体となり、行政が夢をサポートをするまちづくり。

2020年10月11日に奈良県との覚書を交わした「大和平野中央プロジェクト」。大和平野の中央に位置する奈良県磯城郡(しきぐん)川西町、田原本町、三宅町の3つの町が、まちづくりに関する協議を進めてきました。

2021年5月27日、三宅町はまちづくりのテーマを「県立大学を核としたスタートアップヴィレッジ(産業の活性化)」、対象地区を「石見地区」として、協定を締結。奈良県立大学の新キャンパスが、三宅町の近鉄石見駅近くに新設されることが決まりました。このプロジェクトを通して、住民さんにとってどんないいことが起きるのか。そして将来、三宅町はどんなまちづくりを構想しているのか。森田町長に伺います!

本記事は、三宅町の魅力発信し隊・宮武由佳(@udon_miyatake)が森田町長へインタビューを行なった内容です。

▼プロジェクトがひと段落し、ほっとした表情の森田町長。

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住民さんのハッピーを。人や企業が主体となるまちづくり

―奈良県立大学の新キャンパスが三宅町に建設されることが決まりました。住民さんにとってはどんないい変化が期待されますか?

森田:住民さんのハッピーが生まれることです。

実はこのプロジェクト、単なる大学誘致だけにとどまらない、三宅町の「スタートアップヴィレッジ」構想の一つなんです。三宅町に起業家を集めて、住民さんのための事業やサービスを作れば、住民さんのハッピーにつながります。

また、企業活動によって税収がアップすれば、その分を住民福祉や防災力に投資できます。そうすることで、例えば、病気になったとしても給付を受けて仕事に復帰でき、再チャレンジできるとか、災害時に命を落とすことを減らせるなど、「自分らしくハッピーに住もうる」まちづくりにもつながりますよね。

―その構想を実現するための誘致だったんですね。

森田:そうです。「Society 5.0」と呼ばれる昨今、 地域課題は新しい技術を利用して克服し、変革を通じて解決されます。そこには、技術者の育成や、若い世代との連携が絶対に必要です。

だから大学は、その未来に近づくために必要な手段であり、いずれ三宅町を起業家がどんどん生まれるおもしろい町にしたい。地域課題の解決を一緒に楽しんで取り組んでくれるプレーヤーが集まっておもしろいことが生まれると思っています。

―起業家が活躍する三宅町にするために、行政の役割を教えてください。

森田:私たち行政は、起業家に三宅町を選んでもらえるよう、魅力的なまちづくりをしなければならないと思っています。主体はあくまでもやりたい夢を持つ人や企業。行政も一緒に汗をかき、夢を支援をしていきたいです。住民さんが「自分らしくハッピーにスモール(住もうる)タウン」を目指していきます。

10年後の三宅町を見据えた、大学誘致プロジェクト

―では、誘致が決まるまでの背景を教えてください。

森田:今回の大学誘致は、「大和平野中央プロジェクト」の中の一つです。このプロジェクトでは、大和平野の農地が広範に広がる地域において一団の土地を取得しまちづくりを進めていきます。奈良県と、磯城郡に属している川西町、田原本町、三宅町で、何か未来につながるプロジェクトができないか、という知事との雑談から始まったんです。

2020年の7月末にプロジェクトの構想が生まれ、10月にプロジェクト推進に関する覚書に署名しました。2031年に奈良県で開催される国体のためのスポーツ施設の整備、奈良県立大学の理工系の学部の新設、そのほか地域活性化のための拠点となる施設の整備などが話にあがっていました。

▼2021年5月27日に行われた、奈良県と磯城郡3町との大和平野中央プロジェクトの推進に関する協定締結式の様子。(左から、奈良県知事 荒井正吾氏、川西町長 竹村匡正氏、三宅町長 森田浩司氏、田原本町長 森章浩氏)

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―その中で、大学誘致をしたいと考えられたんですね。

森田:三宅町の10年後を想像して、一番必要だと思ったんです。

三宅町の課題として、町の教育施設は小学校や中学校(※)のみで、高校や大学がなく、若者がどうしても三宅を離れていってしまうという現状がありました。

一方、私たち三宅町が目指すのは「自分らしくハッピーにスモール(住もうる)タウン」です。住民さん一人ひとりが夢をもち、その夢を叶えることのできる町にしたい、と思っています。だから、若者が夢をもつきっかけとなる出会いのある場所、その夢に向かってチャレンジできる場所が必要だったんです。

―三宅町の未来を見据えて決断されたんですね。

森田:そうですね。三宅町の入口である石見駅周辺の土地を活用して、住民さんの安心を守り、そして、住民さんにとっておもしろい場所にしたい、と考えています。

現在、石見駅周辺には田んぼが広がっています。耕作地の持ち主である兼業農家さんたちは、だんだん高齢化してしまっていて。担い手がいなくなれば、駅前の土地が荒れてしまうのではないか、と危惧していたんです。また、三宅町の東の端に位置する石見地区周辺には公共施設がなく、避難所をどうするのか、などの課題がありました。今回、駅周辺の土地を活用することで、将来の耕作放棄地の問題と防災面の問題を一緒に解決し、住民さんの安心を守ることができる、と考えました。そして駅周辺を、住民さんにとっておもしろい場所にしたい、と考えていたことも理由の一つです。なので今回、駅前に大学誘致をしたい、と手をあげました。

10月に覚書が公に出てからは、毎朝駅前で立っていると、住民さんから「絶対大学誘致してや!」などいいプレッシャーをいただいてきましたね。大学誘致が頓挫してしまえば、私は町長の職を辞すことも考えていたほどです。私や役場職員だけではなく、住民さんも10年後の町のことを考え、課題を感じていましたし期待を寄せてくれていました。

※川西町・三宅町式下中学校組合立 式下中学校
子どもたちは三宅町の小学校を卒業後、川西町にある組合立の中学校に進学する。

▼大和平野中央プロジェクトの協定締結内容。テーマ別のまちづくりを計画している。

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起業家が集まるまちづくり。小さい町だからこそ大きな可能性をもっている

―「スタートアップヴィレッジ」は、MiiMoのコンセプトにも繋がりますね。いつから考えていた構想ですか?

森田:2016年の町長選挙に当選した頃からですね。

住民さんが、自分たちの手で自分たちに必要な場所や事業を実現させていく。そして自分たちが誇れるまちづくりの先端を示す。その核となる場所を作ろうと目論んでいたんですよね。やっと時代が追いついてきました(笑)。

今後は、MiiMoとの連携、民間企業のプレイヤーとの連携も考えています。三宅町に来れば、何かできるかもしれない。そうやって三宅町のファンが増える、そんなまちづくりをしたいです。小さい三宅町だからこそできることに、大きな可能性を感じています。

▼2016年11月に町長が個人的に描いていた「三宅町プロジェクト」構想。三宅の未来を想像して、作ろうとしていた施設。

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―具体的にどんな大学をつくりたいと考えていますか?

森田:住民さんに「ここに来たら誰かおもしろい人に会える」「ここにいたら居心地が良い」と思ってもらえる場所にしたいです。単なる大学だけではなく、創業支援をするインキュベーション施設や、飲食ができる施設、マルシェやお祭り、ワークショップが開かれるイベント広場などを併設したいと思っています。町内外の新たな交流がうまれることで、三宅町に活気が生まれれば、と今からワクワクしています。

あとは、手ぶら登園が可能な保育所を作って、女性の起業家が集まれるようになるとおもしろいな、と思っています。子どもが元気にかけまわっている隣で、最先端技術が使われている。めちゃくちゃかっこいいですよね。

▼「これからの三宅にとてもワクワクしている」という森田町長。

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All三宅がOne teamとなり、スタートラインに立てた

―今回のプロジェクトが成功した一番大きな要因は何でしょうか?

森田:三宅町が一つになれたことですね。特に、耕地組合の方や地元自治会、役場職員には、とても感謝しています。非常に短期間で、建設予定地の地権者と協議し協力の意思をいただけたのは、本当にすごい。All三宅が、三宅の目指す未来を描けたことでOne teamとなり、やっとスタートラインに立てました。

最終的には、県が決定しましたが、潜水艦のように動いていましたね(笑)。奈良県知事にも、三宅町の本気度を示せたんじゃないかな、と思っています。もし今後何かが起こってプロジェクトがなくなったとしても、三宅町が一つになれた経験は、三宅の将来にとってかけがえのない財産になったと感じています。

▼大和平野中央プロジェクトの推進に関する協定締結について
https://www.town.miyake.lg.jp/chosei/sesaku/post_825.html

▼森田町長のTwitter(@miyake_cho_cho

編集後記
「時代がやっと追いついてきた」と笑いながら語る町長。2016年に町長が作った資料と今回の締結内容の資料を見比べ、まちづくりの方向性や施設の建設予定地がほぼ一緒だったことに驚きました。今回のインタビューでもめちゃくちゃワクワクできました。ありがとうございました!

【話し手=森田浩司(奈良県三宅町町長)/聞き手・執筆=宮武由佳(@udon_miyatake)(うどん県出身ライター)/編集=佐野創太(@taishokugaku)】


【お問い合わせ先】
●三宅町 https://www.town.miyake.lg.jp/
●森田町長Twitter @miyake_cho_cho

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