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何が中国をダメにするのか?

中国の景気が悪い、会社を経営する老板も、会社で働く会社員も、仕事を探す学生も皆口をそろえてそう言う「景気が悪い」と。

ほんの数年前まで、中国の前途は洋々だと思われていた。

GDPは日本を抜き去り、あと数十年もすればあの最強アメリカをも追い抜きGDPで世界第一位となる。いや数十年も必要無いかもしれない。近い将来中国は世界に君臨する大国となる。アメリカなどもう敵ではないと。

不動産は永遠に値上がりを続けると皆が思っていた。日本のバブルは確かに崩壊し、失われた30年を生み出した。確かにそうだ、だが中国はその日本の失敗をしっかりと研究しているので日本と同じ轍を踏むことはないと。

中国は世界最大の人口を持つ、すなわちそれは世界最大の市場を持っているということを意味する。確かに農村部や地方ではまだまだ貧しい人々も存在するが、今後生み出される富が次第に庶民にまで行き渡り、小康社会を生み出すであろうと。

多くの人々が祖国に誇りを感じ、自分がその偉大な国家の勃興に一役買い、明るい未来を信じて生きていた。

ただ、その輝きは2023年どうやら一瞬で暗転したと感じられる。

世界の多くの経済学者、また中国の一部の学者は今ではすっかりトーンダウンして、中国がGDPでアメリカを追い抜くは不可能、或いは更に遠い未来のことになるだろうという意見を発表するようになった。

不動産はついに値下がりが始まった。地方都市は特に状況は酷く、工事は止まり、凄まじい値下げでも家は売れず、マンションを一部屋買えばもう一つ部屋をプレゼント等という冗談のような販促も行われている。

そして2023年、人口でインドに追い抜かれ、中国は世界第一位の人口を持つ国ではなくなった。また子供の出生数や婚姻数も専門家も驚くスピードで低下しており、見通しは非常に悪い。

成長の減速、不動産神話の崩壊、人口の減少、こうした十分すぎるほどの巨大なネガティブ要素は果たして巷の反中論者が言うように中国を崩壊させるのだろうか?

私はそうは思わない。成長は減速しても成長は続く、不動産バブル崩壊のインパクトは大きいが何らかの対策は取られるだろう、人口の減少についても同じことが言える。

それよりも、重要なことがある。

それは、この国の人々が持つ空気だ。空気とは何か?すなわち「俺も、私ももしかしたら一山当てて、大金持ちになれるかもしれない」という空気だ。もっと簡単に言えば、「チャイナドリームへの信頼」だ。

どんなに格差が広がろうとも、どんなに偉い人が腐敗していようと、どんなに世の中が不公平だと感じられたとしても、「俺も頑張れば、チャンスを掴んで一旗上げられるかもしれない」という思いが社会に溢れている限り、人々は日々の貧困に絶望せず生きていくことができる。

成功である必要はない、成功できるかもしれないという空気だけで十分に社会に活力を維持することができる。中国の人々にはお金儲けに対する迷いは一切ない、そこに社会的成功、大金持ちになるチャンスが空気として感じられる限り、笑顔で苦労にも耐えられる。

しかしである、昨今その空気が変わりつつある。

苦労の多いの現代の若者の間では「どうせ何も変わらない、我々は親の世代のようなチャンスは望めない、なら何を好き好んで汗水流して苦労する必要がある、そんな努力や泥臭いのは意味が無いし、格好悪い。このまま何もせず親のスネをかじりながらスマホを眺めながら生きて行ければOKだ。」

日々業績に追われる営業マンの間では「どうせ何も変わらない、死ぬ思いで仕事を取ったところで、ボーナスも出ないし、給料も上がらない、それどころか、明日にはクビになるかもしれない。なら何を好き好んで汗水流して苦労する必要がある、そんな努力や泥臭いのは意味が無いし、格好悪い。このまま何もせず給料をもらいながら、適当に生きて行ければOKだ。」

コロナが直撃した経営者の間では「どうせ何も変わらない、家族を犠牲にして必死に会社を生きながらえさせたとしても、利益は全部税金で取られるし、上がる物価でかかるお金はどんどん増える。なら何を好き好んで汗水流して苦労する必要がある、そんな努力や泥臭いのは意味が無いし、格好悪い。このままほどほどに経営しながら、適当に生きて行ければOKだ。」

皆、「俺も、私も頑張ればチャンスをつかめるかもしれない」という中国をこれまで覆っていた、「俺も私もいけるかも」空気感を信じなくなりつつある。自分の国からこの空気が急速に失われていることを皆が感じている。

端的に言う

何か中国をダメにするのか?

米国でもない、不動産バブルでもない、人口減少でもない

それは

中国から「チャイナドリーム」という空気感が無くなることだ。

この空気が完全に消え去ったとき、中国は本当にまずくなる。

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