マガジンのカバー画像

六本木素描

6
運営しているクリエイター

記事一覧

東京今昔物語

東京今昔物語

数年前のこと。

福岡出張からの帰り、モノレールを降り浜松町でタクシーに乗る。

ワタシ  「六本木の元IBMの隣のビルまでお願いします。」
運転手さん 「えっ、六本木にIBMがあるんですか?知りませんね。」
ワタシ  「六本木のIBMですよ!知らないんですか?ANAホテルの道をはさんで
六本木寄りのIBMですよ!」
運転手さん 「アー、サムスンのビルね!それならそ

もっとみる

朝7時25分の六本木駅小景

 午前7時25分の六本木駅。
 上りエスカレーター。
 ちっちゃなランドセルの花が咲く。
 東洋英和の低学年の小学生たちだ。

 女の子A 「あのね、典子様はね、天皇様のね、従兄弟様のね、お嬢様なのよ。」
 女の子B 「あら、御結婚のお相手は天照大神のご子孫だって~」
 (う~ん、さすが東洋英和の風格ある小学生の会話だ。)

 あれ、エスカレーターの列の一番後ろで、なんだかやたら下を向いて

もっとみる

六本木交差点点描

 2月18日17時15分。
 六本木交差点。アマンド前。

 寒さは未だ冬本番でも、日が長くなり、明るさだけにも、どこか春めく夕刻の六本木。
 放課後の解放感に包まれた下校途中の東洋英和の女子中高生たちと、黄色い笑い声。
 早めに宴会に繰り出すのか、タクシーを降りる、やや高揚したビジネスマンの四人組。
 アマンド前で待ち合わせていた、学生のカップル。仲良く手をとり、芋洗い坂に消えていく。
 そ

もっとみる
雪の南部坂

雪の南部坂

 東京は坂が多い。洒落た名前がつけられているのがなかなか小憎らしくもある。本もたくさん出ているし、研究家もいるらしい。

 さて、今日通りかかった南部坂である。赤坂六丁目から六本木二丁目にかけてアメリカ大使館職員宿舎を横目に北西へ下る。車1台がようやく通れる狭い道だ。江戸時代南部藩の中屋敷がここにあったのが坂の名の由来だと言う。

 有名なのが忠臣蔵「南部坂雪の別れ」の段。討ち入りの朝、大石内蔵助

もっとみる
市三坂から六本木界隈の往時を偲ぶ

市三坂から六本木界隈の往時を偲ぶ

 昨日坂の話など始めてしまった。ならば毎日往復する市三坂を語らぬ訳にはいかない。六本木交差点から一丁目辺りまで六本木通りを溜池方面へ下る坂だ。

 今の六本木一丁目界隈で明治の名主の名を取った市兵衛町。
かたや六本木交差点の溜池側一帯は江戸時代初期に越前宰相松平三河守の屋敷があった所以で三河台町と呼ばれた。
各々の頭の一字を繋いで市三坂が命名されこの坂が開かれたのは明治20年前後だと言

もっとみる

朝7時20分の六本木俳優座前すしざんまい

 6月25日朝7時20分。
 六本木交差点近く、24時間営業のすしざんまいに初めて出勤前に道草を試みる。

 上ちらし丼を注文してお茶をすすっていると、肌の露出度が明らかに高いワンピースに身を包んだ若い女性が倒れこむようにカウンターの対面にバサリと音を立てて座る。
明らかに酔っている。

 板さん   「取り敢えずお茶と赤だしでいいっすか?」
 オネイサン 「は~い、オネガイシマ~ス

もっとみる