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イスラエルのイランへの報復攻撃 ―イラン人から最も好感のもてる国とされる日本の可能性

 イラン中部のイスファハーンの軍関連施設で爆発があり、イスラエルが報復攻撃を行ったと見られている。

イラン・イスファハーン シャイフ・ロトフォッラー・モスク

 イスラエルは今月1日、シリア・ダマスカスのイラン大使館領事部に攻撃を行い、革命防衛隊の司令官やシリア市民などを殺害したが、それに対してイランも13日にドローンやミサイルで報復攻撃を行った。イスラエルが先にイランを攻撃し、それも国際法で禁じられる外交関連施設への攻撃だった。イスラエルのさらなる攻撃は事態の悪化を招くだけだと思われたが、イスラエルは報復攻撃に踏み切った。イランが位置するペルシア湾岸地帯からの石油輸入に依存する日本にとって深刻な事態となる可能性がある。

 イランはイスラエルの安全保障上の脅威であり続けている。現在、イランとイスラエルは激しく対立するが、パフラヴィー王朝時代、イランとイスラエルは良好な関係にあった。非アラブのイラン(ペルシア)とイスラエルは、アラブ諸国に対抗するうえで協力関係にすらあった。また、イランからイスラエルへユダヤ人の移住が行われたが、こうしたイラン出身のユダヤ人も両国の懸け橋の役割を果たしていた。現在、イスラエルには20万人から25万人のイラン出身のユダヤ人がいると見積もられている。イラン革命の指導者ホメイニは、「イスラエルは消滅しなければならない」と唱えたが、それでもなお1980年代のイランは戦争を行っていたイラクとの対抗上、イスラエルを戦略的に必要とし、イスラエルから秘密裏に武器を購入していた。

 イスラエルがイランを警戒する背景にはホメイニなどイラン政府指導者たちのよって唱えられた「イスラエルの抹殺」の訴えとともに、イランの核エネルギー開発を行っていることがある。イランが核爆弾を保有するようになれば、「イスラエルの抹殺」も現実性を帯びることになる。また、イスラエルはパレスチナのハマス、イスラム聖戦、レバノンのヒズボラなど親イランで、反イスラエルの武装組織の活動によって囲まれ、隣国シリアでのイラン革命防衛隊の活動に神経を尖らせている。 ちなみに カナダのイランを専門とする世論調査会社IranPollが2019年8月にイラン人1000人を対象に行った調査で、日本、中国、ロシア、ドイツ、国連、フランス、イギリス、米国についてその好感度を尋ねると、日本が最も好感をもてる国という調査結果が出た。

https://cissm.umd.edu/sites/default/files/2019-10/Iranian PO under Maximum Pressure_101819_full.pdf?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR2s6Wc9qKmaO3EA1aRmzlmY4wEPZoBJaWK-C7od3OtuNDeW2EJ4aHl7-b8_aem_AdlX9wzGOLPRTgKk3ekuIod0C0sep2Jmy58VXp9pln0AYlEpFsvYNCjnE8NOPfX-fZrwWfUkIVQWMFIWLchMR9aU

 日本に好感をもつ人々は70%(「とても〔Very〕」「幾分〔Somewhat favorable〕」を合わせて)で、対照的に米国は「好感をもてない(Unfavorable)」人が86%(「とても〔Very〕」「幾分〔Somewhat favorable〕」を合わせて)にも上る。トランプ政権のイラン政策に従い、有志連合に加わったイギリスも「好感がもてない」が73%となっている。イギリスの場合はイランに帝国主義的進出を行ったという歴史的背景もあるだろう。

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 世論調査の結果は52%のイラン人が欧米よりもアジアとの外交的、経済的関係を強化すべきと考え、49%の人々が、ヨーロッパよりアジアを好むと回答している。日本に続くのが中国の58%だが、中国に対しては「好感がもてない」も39%で、そのうちの25%が「Very unfavorable」だ。

 日本はイラン・イラク戦争でも中立的姿勢を示し、敵国同士であったイランとイラクとの和平調停も安倍晋太郎外相などを中心に行った経験があるが、安倍外相は、植民地主義で手が汚れていない日本は地域的紛争、世界平和に貢献できようと述べている。イランから好感をもたれ、イスラエルとも良好な関係をもつ日本だが、岸田首相、上川外相に調停を行うだけの気概あるだろうか。

アイキャッチ画像は日本テレビより

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