１２日、オランダ・ハーグの高裁は、Ｆ３５戦闘機の部品輸出を７日以内に停止することをオランダ政府に求める判断を下した。その理由はイスラエルの攻撃が民間人にもたらす結果を十分に考慮せず、不均等な数の民間人が死傷しているというものだった。また南アフリカはイスラエルのガザ地区ラファへの攻撃停止の仮処分を出すよう国際司法裁判所（ＩＣＪ）に要請した。１１日にアメリカのバイデン大統領は民間人の安全を確保することなく、ラファを攻撃しないようにイスラエル・ネタニヤフ首相に要請した。ネタニヤフ首相はガザ攻撃の長期化を口にするが、多数の民間人の犠牲をもたらすイスラエルのガザ攻撃についてその停止への国際社会の意思がいっそう強く示されるようになっている。

　ガザで支援活動を行っているＮＰＯ法人「オックスファム」のスポークスマンはハーグ高裁の決定がイスラエルに武器輸出を行っている他のヨーロッパ諸国にも肯定的な影響を与えることを望むという期待を表明した。Ｆ３５は１時間飛行するごとに３時間のメンテナンスが必要と言われるほどで、部品はその戦闘行動に欠くことができない。

　オランダはイスラエルの占領などについて数々の措置を講じてきた。２０２０年７月、オランダ政府はヨルダン川西岸の占領地ヘブロンで製造されたワインに「Made in Israel」というラベルを貼って販売した店に罰金を科すという警告を発した。その月、オランダの都市ネイケルクにある親イスラエルのクリスチャン・グループによって経営される「イスラエル製品センター」での検閲でヘブロンの占領地で作られたワインに「Made in Israel」というラベルが貼られていることが発覚した。

　すでに２０１５年に欧州委員会は、イスラエルの占領地の製品に「Made in Israel」というラベルを貼ることを禁じている。「イスラエル製品センター」は、中国のチベットやロシアのクリミアで製造される製品にはそのような罰則がないと不服を述べた。２０１９年欧州司法裁判所は、ＥＵはパレスチナ占領地で製造される製品を特定し、明らかにしなければならないという判決を下した。ＥＵ加盟国の措置はイスラエルの不当な占領を国際社会に、またイスラエル国内にも訴える点で重要だった。

　イスラエルがガザを大規模攻撃していた２０１４年８月、オランダ人弁護士のヘンク・ザノリ氏（当時９１歳）は、彼の親族がイスラエルのガザ攻撃で殺害されたことによって、「諸国民の中の正義の人」（ナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅、すなわちホロコーストから自らの生命の危険を冒してまでユダヤ人を守った非ユダヤ人の人々を表す称号〔ウィキの説明による〕）勲章を返上した。

　ザノリ氏は、アムステルダムで暮らしていたユダヤ人の少年を自らの住んでいた村に連れていき、彼の母親は１９４５年にナチスによるオランダ占領が終わるまで、そのユダヤ人の少年を匿っていた。ザノリ氏の父親はドイツ占領に対するあからさまな抗議によってドイツ・ダッハウの強制収容所に連行され、そこで命を落とした。ザノリ氏によれば、ナチスによるユダヤ人迫害後に、彼の家庭はユダヤ人や、その祖国建設に対する強い同情をもったという。

　甥の娘（オランダ人外交官）はパレスチナ人の経済学者イスマーイール・ズィヤーダ氏と結婚したが、２０１４年７月２０日、イスラエル軍の戦闘機による爆撃でズィヤーダ氏は３人の兄弟、義理の妹、甥、そして父親の最初の妻を失った。

同年８月１４日、ザノリ氏はオランダ・ハーグのイスラエル大使館に赴き、勲章を返上しながらイスラエル大使への抗議の書面を渡した。その書面によれば、「イスラエルのガザ攻撃は彼の勇気ある母親の記憶を侮辱するものであり、イスラエル国家が人種主義的傾向をもち、ガザ攻撃が戦争犯罪であり、人道に対する罪であることが判明した」と述べた。

　８月１５日付の「ニューヨークタイムズ」は、ザノリ氏の行動がイスラエルに対するヨーロッパの人々の感情の変化を表すもので、反セム主義とは関係なく、人道主義の考えに基づくものだと紹介した。

https://www.nytimes.com/2014/08/16/world/middleeast/henk-zanoli-israel-gaza-holocaust-ziadah.html?_r=0　

日本もオランダなどの措置に倣い、占領地の製品の偽装を認めず、またイスラエルのガザ攻撃に苦言を呈したどうかと思う。占領を継続し、ガザを攻撃するというイスラエルの国際法違反の措置をイスラエル国民にも訴え、その自覚を促すにはイスラエルを国際社会で孤立させることは有効な手立てとなると思う。ガザ攻撃を受けての日本政府の措置はイスラエルの主張に応じて、ＵＮＲＷＡ（国連パレスチナ難民救済事業機関）への資金拠出を停止するなど、アメリカのイスラエル政策を重視し過ぎている。