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日本が殺傷能力のある武器を輸出する国に?

 安保3文書の改定を受け武器輸出の緩和を議論してきた自民、公明の作業チームは、戦闘機など国際共同開発を行った殺傷能力のある武器の輸出を可能になるように議論を進めている。安保3文書の改定も国民の議論がないままに決めてしまったが、殺傷能力のある武器輸出もなし崩し的に決めようとする印象が否めない。

「5類型」に撤廃や追加の主張 なし崩しに輸出拡大の恐れ https://www.tokyo-np.co.jp/article/261176


 政治学者の御厨貴さんは朝日新聞(7月8日)で「岸田氏は状況追従型でやらなければならないことをただ進めているようです。そこには情熱も深い思い入れも見えません。これは理想を掲げる本来の意味での政治ではなく、行政のやり方です。」と述べているが、情熱も深い思い入れもなく、殺傷能力のある武器を輸出されては困る。日本もまた軍産複合体の影響力が強い米国、イギリス、フランスのように、戦争を望む国になることを懸念せざるを得ない。岸田氏は防衛費を大幅に増額し、日本に反撃能力保有も認め、さらには入管法改正の改正もやってみせたが、これらも情熱があってやっているというのではなく、米国や与党内の空気を読んで決めたという印象で、これらが日本を正しい方向に導いているようには思えない。

「立派な兵器は不吉な道具だ。善き人はみな兵器を嫌う。(略)武器は手にするだけで災いを呼ぶ道具だ。君子の持つ道具ではない。」(『老子』31章)

売れない日本の防衛装備品 輸出促進、利益率向上に課題 編集委員 坂本 英二 日経ヴェリタス 2022年11月21日 5:00 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD143U40U2A111C2000000/


 以前、旧民主党時代の参議院議員に会ったら、護衛艦の建造に反対すれば票が入らないんですという発言に接し、日本にも米国と同じ軍産複合体のような体質があるのだとあらためて知る思いだった。今回の与党の作業チームの動きも防衛産業の意向が代弁されているのかもしれない。国会議員の票田として防衛産業の意向に添うことは重要と思われているのだろう。

 経済同友会の終身幹事だった品川正治さんに会った時、「軍需で安直に儲けようとする発想が行けないのです。軍需を民需に転換すれば、世界は平和になります」と語ってくれたことを想い出す。武器見本市が日本で開かれるなど日本でも武器で利益を上げようとする姿勢が顕著に見られるようになった。

「日本でも欧州でも第2次世界大戦を生き延びた人たちがどんどん亡くなっている。彼らの話を次の世代に受け継いでいくことは、私たちの世代の責任だ。」 ―カズオ・イシグロ

 世界的なスターだった三船敏郎(1920~97年)は中国の山東省で生まれ、5歳から19歳まで満洲の大連で育った。1939年に19歳で召集された。軍隊での任務は実家が写真館であったこともあって偵察機が撮影した写真を組み合わせて敵地の地図を作ることだった。戦争末期になると、九州の特攻基地で少年航空兵の教育係となった。特攻に出撃する少年兵たちにすき焼きを食べさせ、最期の時は「天皇陛下万歳!」なんて言うな、恥ずかしくないから「おかあちゃん!」と叫べと語ったという。送り出す少年特攻兵たちの遺影を撮る三船の仕事は辛く、悲しいもので、戦後息子たちに自分の戦争体験を話す時にはボロボロ涙をこぼした。

三船敏郎 https://www.jigsaw.jp/shop/g/gyam7981727062/


 大乗仏教の経典の一つである『無量寿経』には「兵戈無用」(ひょうがむよう)という言葉があり、「仏のはたらきを一人一人が認識する限り、兵力や武器は必要ない」というものだ。キリスト教、ユダヤ教、イスラムでも殺生を禁じているが、三船敏郎は、戦争は「無益な殺生」だったと強く否定している。

 米国では、軍需産業の利益は米国の議員たちに還流するシステムにもなっていて、軍需産業の株に投資している議員も少なくない。米国では軍産議会複合体という言葉もあるほど、国防総省、軍需産業、議会の癒着が進んでいる。米国会計検査院(Government Accountability Office:.GAO)は米国の上位14の軍需産業が約1700人の元国防総省の高級官僚および元軍高官たちを雇用していることを明らかにしている。

 こうした米国の「軍産議会複合体」に似たような構造が日本にもあり、戦後営々と築いてきた日本の平和主義を損なうような動きになっていることに私たち国民は留意しなければならない。人を殺傷する兵器の輸出は先の大戦で犠牲になった人々が残した平和国家としての日本の遺産を奪うものであり、歴史の教訓をも台無しにしている。政治家がよく使う言葉を用いればまったく遺憾なことだ。

説明が一変 https://www.tokyo-np.co.jp/article/260721

アイキャッチ画像は池上彰の番組
日本の防衛関連企業のランキング
http://blog.livedoor.jp/ginger6901/archives/1871258.html  より

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