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テロをなくすには世界中が日本をお手本にすればよい ―対テロ戦争に反対した日本人たち

 もうすぐ9月11日がやって来る。アメリカでは毎年追悼式が行われるが、アメリカは、アメリカ自身の対テロ戦争によって犠牲になった人々を追悼することはない。イラクでは911の同時多発テロの3000人をはるかに上回る50万人とも60万人とも見積もられる人々が犠牲になった。

 イギリス・ロンドンでは6日、テロ容疑で逮捕されていた男が拘置所から逃亡したことが大きく報道されている。対テロ戦争を経ても、欧米諸国のテロへの警戒が緩むことがない。

 アルカイダの元メンバーだったジェシー・モートン氏は、「私は、世界中が日本をお手本にすればいいと思っています。第二次世界大戦後、多くのものを失い、他国を恨む心が多少あったかもしれません。しかし暴力で訴える事をせず、今も国民みんなが、戦争のない平和を願っています。過激派組織との戦いに勝つ最良の方法は、報復を考えず平和を訴え続けることなのです。その完璧な例が日本ではないでしょうか。」と語ったことがある。

モートン氏 https://www.afpbb.com/articles/-/3102048


 モートン氏はアメリカ人で、2010年までアメリカでアルカイダの勧誘係だったが、2011年10月にFBIに拘束された。獄中で猛勉強しているうちにフランスの啓蒙思想などに接し、過激派の思想から脱却することができ、ジョージ・ワシントン大学でイスラムに訴える過激思想を研究したり、昨日紹介したアフマディーヤの運動を支持したりした。2021年12月21日に43歳で亡くなった。

 暴力的な報復を考えないことは、広島で今年G7の首脳たちに被爆体験を語った小倉桂子さんも「私たち広島の人間はアメリカに対する報復を考えませんでした」と語っていた。暴力への報復や制圧を武力で考えるアメリカに軍事的に付き合うことがいかに危ういかはモートン氏も語っているが、彼のそのような認識も刑務所での猛勉強での結果得られたに違いない。

「見たもの追体験してもらった」G7首脳たちと対面 被爆者・小倉桂子さん https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/496300


 2015年にアメリカとの集団的自衛権を確立した日本は岸田政権になって安全保障面でアメリカとますます一体となっている。後藤田正晴氏は第二次世界大戦後最も戦争をした国はアメリカであることを強調したが、このままではアメリカの軍事行動につき合う局面が増していくことだろう。

 俳優の米倉斉加年さんはイラク開戦の直前、2003年2月に、作家小林多喜二をテーマにした舞台を前にして「東京新聞」への寄稿で「湾岸戦争、アフガン戦争。そして、ここのところのイラク問題。アメリカに加担している日本に、戦前の多喜二の死の時代が重なってくる」と懸念した。(「東京新聞」8月27日夕刊記事)。

https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=D0009250410_00000&fbclid=IwAR17PX-2x4tcTg8_APhuKPguKN939SamLzdMaLJ8sGzlxCYPX9xmR_Rm3rY  より


 「戦争絶滅」を訴え続けたむのたけじさんはイラク戦争で自衛隊がイラクに派遣されると、自衛隊員に犠牲が出ることを心配した。ぶざまな戦争をして残されたのが現在の日本国憲法で、9条があったから70年以上戦争をせずにすんだとも語っていた。

アマゾンより


 中村哲医師は自由と民主主義のアメリカがアフガニスタンに爆弾を落とすことに大きな疑問をもったと日記に書いた。爆弾を投下するよりもアフガニスタンの干ばつを救うことのほうがはるかに重要な課題ではないかと中村医師は訴えた。

 「みんなみんな哀れです。かわいそうです。かわいそうかわいそう」。(宮沢賢治『猫の事務所』)

 テロの抑制にはモートン氏の言葉のように、軍事力を行使しない、中村医師の活動のように、人々の生活ぶりを上げるということに尽きるが、アメリカをはじめ欧米諸国のテロ対策は武力一辺倒に見える。日本政府、日本の政治家には欧米諸国に武力で同調することが日本国民の生命を危険にさらすという認識が果たしてあるのか、アメリカの戦争があるたびに唯々諾々と従うところを見ると、実に怪しいものだと思わざるをえない。

米倉斉加年さんがジュニアライター藤井志穂さんに贈ったハガキ
https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?junior=2016-90


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