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水瓶座の満月と真夜中の海


 

死んだように寝ていた。眠くて眠くて体が動かない。
2日間の旅の疲れかもしれない。いや、それもあるかもしれないけど、
私は人生で何か変化が来る時に物凄い眠気に襲われるのだ。
〝未来の私〟からのメッセージかな、なんて思ったりしている。

今はただ、体中の細胞が脱皮でもするような、何かがうごめくような感覚を自分の内側で感じているのだった。



 

 〝今日は水瓶座の満月なんだって。要らないものを手放す時期らしいよ。〟

 要らないもの…。パッと思いつかないな。

海を見るとちょうど月が顔を覗かせ始めた頃だった。
真っ赤な月で、みんな写真を撮っている。

 
海の近くのキャンプ場。

集まっているのは、年齢も職業も住む場所も全然違う人たち。
2日間の旅を共にしている。
不思議と居心地よく、楽しくおしゃべりしたり、音楽を奏でたり、
その音楽に耳を傾けたり、ゆったりと時を過ごしていた。



 月が高さを増していく。

月明かりが海を照らして道を作っていた。

わぁ、と歓声があがる。

 
月明かりの道の上を歩けるんじゃないかと思う程、色鮮やかにキラキラと、こちらに向かって伸びている。


 あまりの美しさに見入ってしまった。
少しずつ月は高くなり、月明かりの道は幅が広くなる。
時々雲が流れてきては、その景色に変化を与える。
ずっと見ていたい。見逃したくない。
人生で見てきた月の中で1番綺麗な満月だった。


相変わらず要らないものは思いつかないのだけれど、
月明かりの道を見ていると
〝道は出来てるよ、大丈夫〟と声がしたような気がした。

 


夜も深まった頃、誰かが海行こうよと言った。
みんなでコンビニへ行きアイスを買って海へ向かう。
 
真夜中の海なんて初めてかもしれない。
いや。そんな事無いか。
アイスを食べながら昔の記憶を辿った。

 

深い紺色の波と夜の闇。波の音がすごく大きく感じる。
ドドドドー、ザザザザー、と波の音は振動となって私の細胞を揺らす。

力強い音に、地球が生きてることを実感する。
ここから全てが生まれたんだ、と生命の始まりを感じる。

 

じっと海を見つめていると誰かの声がした。

周りにいるみんなの声じゃなく、知っているような、知らないような声。

 

それでいいの?

見て見ぬフリしないで。気づかないフリしないで。

全部見てるよ。知ってるよ。

 

意識が夜の波に飲み込まれそうだった。

はっとして満月を見上げる。
月明かりはなおも優しく穏やかに波の上を照らしていた。

 

 

暑さに目が覚めた。
自分の部屋のベッドの上にいた。旅からはもう帰ってきている。
頭がフワフワする。あの夜の満月が頭から離れない。


要らないもの、思いつかないなんて思ったけど、
ホントはあるんだ。
ホントは気づいてるんだ。

 自分の在り方、生活の事、働き方、大きい事、小さい事、色々あるんだと思うけど、
〝違和感を感じた私を無視する自分〟の存在。
要らないよね。

ちょっと黙っててもらおう。

違和感をちゃんと感じてみよう。
無視せずに。


ゆっくり体を起こして大きくのびをした。
窓を開けて
真っ青な青空に浮かぶ太陽の光を浴びる。


〝未来の私〟はメッセージを送り続けてるのかもしれない。なんて思ったりした。



全ては幸せに、生きるために。




2021/7/24~2021/7/25   和田浦にて
おへそリトリート より

 

 

 

 

 

 

 

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