政府見通しにはバイアスがある

政府の経済見通しは常に高めです。7月29日発表の政府「年央試算」で示された、2020年度の1.2%という実質GDP成長率見通しは、おそらく半年後ないしは1年後の改定で下方修正される可能性があります。実際、同時に発表された2019年度の実質成長率予測(実績見込み)は、1月時点の1.3%から今回0.9%に下方修正されています。

毎年7月に公表される「年央試算」で、当該年度(今回だと2019年度)の成長率が上方修正されるケースは滅多にありません。最近だと2013年度に2.5%から2.8%に上方修正されましたが、2014年度以降の同試算では、下方修正(6回中4回)か横ばい(6回中2回)でした。下方修正が当然で、横ばいなら上出来という感覚で、政府見通しは捉えたほうがよさそうです。

一方、対照的なのが政府の財政健全化計画です。プライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)の予測値は、政府の経済見通しと同様、例年1月と7月に更新されますが、7月は足元のプライマリーバランスが上方修正されるケースが多くなっています。経済見通しの修正状況と比較するべく、2013年度以降の修正状況をみると、2013年度は政権交代のゴタゴタのせいで1月と7月の比較ができないのですが、14年度から18年度の過去5年をみると、PBの上方修正(赤字の縮小)が4回、下方修正(赤字の拡大)は1回です。19年度は未だ発表されていませんが、もし下方修正されたとしても、経済見通しとは逆に、上方修正が当然で下方修正は珍しいということになります。

もともと政府の経済見通しは高すぎる!と指摘する声は比較的多いのですが、政府の財政健全化計画は妙に慎重すぎる!という声がなかなか上がらないのは不思議です。一種の緊縮病みたいなものでしょうか。

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