残業時間DI

残業カットで消費増税では景気がもたない

昨日、ある記者から尋ねられました。「消費者マインドは何故こんなに低いのか」「働き方改革で、残業代が減ったからじゃないですか」「厚生労働省の毎月勤労統計で確認できますか」「できますが、毎勤統計なので説得力ないです」「そうですよね」てなやり取りがありました。

数日前にも、同僚のエコノミストと似たようなやり取りがありました。派遣社員の時給が落ち込んでいるというグラフをリクルートジョブズのデータで示したのですが、毎勤のデータを使わなかった理由を「毎勤は信用できないから」と伝えたら、同僚に納得してもらいました。統計不正の影響は深刻です。

さて、毎勤が信用できないのに「残業代が減っている」との結論に至った理由の一つは、消費増税に関する博報堂のアンケートです。前回の消費増税よりも負担を感じる理由の1位は「収入の減少」だそうです。

「残業代が減っている」と判断したもう一つの理由が、トップ画像でお示ししている、日本政策金融公庫「中小企業景況調査」の残業時間DIです。このDIは常にマイナス、つまり景気動向にかかわらず経営者が常に残業時間を減らしているというバイアスがかかっていますが、循環的な変動は総じて景気と連動しており、景気の基調判断の一助となります。

残業時間DIは、働き方改革の取り組みが加速した2018年から下向きになっています。そもそも景気が悪くて仕事量が減ってるから残業時間が短くなっている可能性もありますが、いずれにせよ消費者の懐具合は苦しいわけです。残業代が減って家計が苦しい中、消費増税で値段が上がるわけですから、消費増税後に不要不急の支出を控えるのはやむを得ないでしょう。増税対策として、いくら教育が無償化されても、家計が支出全体を控えてしまえは意味がありません。消費増税後の景気は、やはり厳しいものになりそうです。


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