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宮崎県を「農業県」にはしたくない、という話。

宮崎に生まれ育ったものとして、宮崎が発展しない理由というか、むしろものすごい勢いで衰退しているのがなんとも我慢がならないレベルになっていて、その理由を少しずつでも言語化し明確にしていきたいなと言うのがこのNoteを始めた理由でもあります。

できるだけ毎日少しずつでもそれを Note に記録していこうと思っているわけですが、定期的にNoteにアクセスすると農業関連をテーマに書いていらっしゃる方もたくさんいらっしゃって、おすすめ記事にそういったものが上がってくることがあります。

「いいね」が多くついている記事は田舎へのノスタルジー満載の記事が多いので、私はあまり同意できないものが多いのですが。

昨日おすすめ記事に以下の記事が上がっていて読んでみました。

書いていらっしゃる方は高名な農学博士の方のようですが、地元民からすればちょっと待ってくださいよ、という感想でした。

本州の農村部なら当たり前の光景になった広大な太陽電池(メガソーラー)が、宮崎県ではなかなか見当たらない(私が通りかかったところにはなかった)。狭いところに少し太陽電池を並べているのは見かけたけど、田畑に太陽電池を並べましたというのはどうも見当たらなかった。

「宮崎県は農業県」という意外な発見|shinshinohara|note

いやいや、ありますってw。

かつて宮崎県民が未来を夢見たリニアモーターカーの実験線の跡地は今やソーラーパネルですよ。ソーラーパネルが7Kmも並んだ光景なんて、見たことないでしょw

これら、本州では見かけない光景は、「宮崎県では農業が大切にされている」ということの証拠のように思う。GDPだと、三重県は農業が0.8%しかないのに対し、宮崎県は5%近くある。食品関連(加工・物流)を含めばかなりの存在感。農業が主要産業と言ってよいだろう。

「宮崎県は農業県」という意外な発見|shinshinohara|note

農業が大切にされているというより、むしろJA関連が威張りすぎぐらいの感じです。宮崎県のGDPの農業比率が高いのは、端的に言えば他の資本集約度が高く労働生産性の高い産業の時間も金もかかる育成を怠り、目先の手っ取り早い農業や観光にばかり利益誘導を行ってきたためです。

最近はどこに出かけても農業の衰退が目立つ中で、こんなにも農業を軸に据えた経済社会を維持できてる県が存在したことに、ちょっと驚いた。

「宮崎県は農業県」という意外な発見|shinshinohara|note

農業を軸に据えて経済社会が維持できる都道府県なんてありませんよ、今の時代。このNoteでも何度も持ち出しているグラフですが、宮崎県の人口推移で、現在の人口ピラミッドはこんなんですよ。

宮崎県の人口推移 宮崎県のHPから 一部筆者加筆
宮崎県の人口ピラミッド 令和2年 政治山から

農業では、高校を出たての若い人たちの雇用の受け皿にはならないために、宮崎県の若者は高校を卒業した時点で、就職者で40% 大学進学者で60%以上全体では半分以上が県外に出ていってしまい、戻ってこないという状況になっています。(20代から女性のほうが多くなるので、人口あたりのスナックが全国1位です。)

それによって合計特殊出生率は全国トップレベルなのに、人口減少率が全国で上位になってしまいます。

その結果として労働生産性の低い農業や観光だけが宮崎県に残り、かつ大企業従業者が県庁職員よりも少ないという全国的にも非常に歪な就労構造となっていいます。

そして、宮崎県内の中小企業従事者比率が全国でも最悪レベルであるために、県内企業のゾンビ企業率も全国最悪レベルです。

県民所得は全国でも最低レベルで低く、経済的な理由のために中学生が大学進学さえも希望できない 状況なんですよ。経済が悪いため自殺率も九州で最悪であり続けています。

私自身は以前書いた通り 農業を救うためには、農業に直接金を出すのではなく、農業以外の産業を近郊に発展させるほうがよい とか、「儲かる農業」を目指さず、「農家も儲かる」政策を目指したほうがいいんじゃないか と思っています。現代の先進国において、農業を中心に据えた地域振興と言うのはほぼ夢物語ではないでしょうか。

宮崎県では、農林中金の支店はとっくになくなっており、2019年には営業所さえ撤退し、JA内に連絡事務所が残るだけになっています。農業で経済は維持できないわけです。

上記の記事を書かれた農学博士の方も、以下のような記事を書かれています。

別の労働生産性の高い産業もなく、人口が増える見込みもほぼないため、何十年も民放が2局しかない状況が変わらず、先日のWBCの決勝もテレビで観ることができない地域でもあるわけです。

自分の生まれ育った場所を嫌いなわけではありませんし、心から発展してほしいと思っていますが、そのための中心産業は農業ではないと思います。

追記です:

「JA宮崎組合員一人あたりの生産額」を各国の「一人当たりのGDP」と比較してみたら、むしろ発展途上国だった件。|宮崎県政ウォッチ (note.com)

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