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サンタクロースが来た時は【才の祭参加】

もう、なんでクリスマスイブだからって恋人同士で過ごさなきゃいけないの?別にひとりでもいいじゃん!そんなの、ずっと前のバブルの頃の価値観でしょ!?

私は大きな独り言を言いながら、勢いよくワインの栓を開けた。奮発して買ったワインはとても良い香りがする。一口、口に含むと思い切り飲み込んだ。

今日はクリスマスイブ。
だけど、私は一人だ。彼氏は長いこといないし、友達と会うのもなんだか面倒。
仕事帰りにデパートに寄った。デパ地下は多くの買い物客で混み合っていたけど、せめてクリスマス気分を味わおうとあれこれ買い込んだ。

奮発したワイン、お一人様用のオードブル、それからケーキを買った。どれもおいしそうだ。
ワインを飲みながらオードブルをつまむ。やっぱりデパ地下のお惣菜はおいしい。

私だって、好き好んでひとりでいる訳じゃない。だけど、この天邪鬼な性格のせいで、上手くいくものも上手くいかない。

本当は、気になる人はいる。
でも、仲が良すぎて女として見られていないみたいな気がする。私にもう少し、女らしい所や色気があったら良かったのかもしれないけれど。
今の関係は、完全に友人関係のそれな様に感じる。

気になる人は、会社の同期の山本君だ。彼とは初対面から気が合って、すぐに意気投合した。本や映画の趣味、好きな事。山本君とは共通点はたくさんあった。本を交換して読んだり、一緒に出掛けたりもした。知らない人が見たら、まるで付き合っているみたいな関係だ。

ああ、私達これからどうなるんだろう。ずっとこのままなのかな。下手したら、山本君の結婚式で友人代表のスピーチさせられたりして。
なんて事を考えながらワインをぐいっと飲む。少し、酔ってしまったかもしれない。

ケーキ、どうしよう。おいしいケーキ屋さんの物を2つも買ったけれど。今日は酔っちゃったから明日食べようかな。
そんな事を考えていたその時。

LINEが入った。誰からだろう?
スマホを見ると、山本君からだ。
え?なんで?
メッセージには、こんな事が書いてある。

「下を見て!」

いったい、なんなの?
窓から下を見ると、山本君が、いる。なんか、山本君の格好がおかしい。山本君が赤い。全身赤い。
山本君がサンタクロースになっている!
私は上着を引っかけて、下に降りて行った。

「山本君!いったい何やってるの!?」

山本君はくしゃっとした笑顔で答える。

「メリークリスマス!さやかの所にやって来たサンタクロースだよ。」

「いったい、何で?どうして?」

山本君は、真面目な顔をして私の目を見て言う。

「俺、さやかの事が好きだから。さやかの意地っ張りだけど、弱い所が好きだから。だから、サンタクロースになってきた。さやかにずっと笑っていて欲しいから。」

あまりの急展開に言葉が出ない私を、山本君はそっと抱きしめた。山本君の腕の中の私はドキドキが止まらない。ワインがまわった私は、いつになく素直になって、山本君に言ってみる。

「私も山本君が好き。ほんとに私でいいの?」

「さやかだから、いいんだよ。そうじゃなきゃ、こんな格好しないよ。」

柄にもなく、嬉しくて泣いてしまった私の事を山本君は、ぎゅっと抱きしめてくれた。山本君の温かい胸の中の私は、ワインの酔いと嬉しさで泣きながら言ってみた。

「奮発して買った、おいしいワインとケーキがあるの。一緒にどう?」

酔っているせいなのか、お月様の側でトナカイのソリに乗るサンタクロースが見えた気がした。



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