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『長い長い恋の物語』 玉造小劇店

2023年2月15日(水)14時開演
下北沢 ザ・スズナリ
¥4,500

ふっこ(わかぎゑふ)さんの作品を観たのはものすごく久しぶりのような気がする。気がするだけじゃなくて確かにめっちゃ久しぶりなんだけど、最後に観たのが何だったのかいつだったのか・・・。
もしや外部作品の『夜の姉妹』かも?(7年以上前!)
あー、ぜったいに面白いことはわかってるのに、なぜこんなにご無沙汰してしまったのか。
逆に7年以上のブランクがあって、なぜ今回は観に行けたのか? すでに何のきっかけでチケットを押さえたのか覚えていないが、半月くらい前の自分GJだぜ。とにかく面白いであろうことは判っていたんだけど、果たして、何とも言えぬよいお話であった。

あらすじ

1910年から日本の統治に置かれていた朝鮮半島では、
日本語教育も実施され、
朝鮮人は基本的に「日本人」であった。
大正中期になると、多くの人が 働き手として
日本に強制的に、 自主的に渡ってきたのである。

そして昭和になり
働き盛りのパク・ソジンも
自国にいても食べていけないという事情で、
先に日本に 出稼ぎに来ていた兄を頼って
朝鮮半島から 日本にやってくる。
仕事は土木作業だったが、
米飯が食えるだけで幸せだった。

しかし、生活するうちに段々と日本人から
差別の目で見られている事に気がついていく。

ある日、作業中に怪我をしたのだが、
偶然作業事務所に来ていた建設会社の令嬢、
桜子に手当てをしてもらう。
ソジンは美しくて優しい桜子に
恋をしてしまうのだが…

それは彼らの人生の
長い長い恋の物語の始まりでもあった。

公式サイトより

知識として知ってはいたけど、東京で生まれ育ったアタシにはほとんど触れたことのない世界。自分が鈍感なだけで、関東でも色々あったんだろうか・・・?
このお話は脚本のわかぎゑふさんが、実際に見聞きしたことだけを描いた物語なのだそう。身の回りでコレだけたくさんのことがあったっていうのがすごいな。

希望を胸に日本に来たソジンは職場で激しい差別に遭い、暴力を受ける。冒頭から苛烈なシーンで見ているこっちがひるんだけど、社長のお嬢さんのやさしさにソジンと一緒に救われる気持ちになった。桜子さんの声が素敵。タイトルの「長い長い恋の物語」はこのふたりの物語で、恋の成就はきっと年を取ってからなのだろうとすぐに判った。

ふたりが惹かれ合っているのを悟った社長は、早々に桜子を嫁に出す。第二次大戦が始まりソジンは出兵前に同じ朝鮮から来たヨニと結婚。こどもには朝鮮語を教えず、日本語を話し日本名で呼び育てる。言葉が同じなら日本人と変わらないと。差別を受けぬように。

ソジンの娘・洋子はクラスの友達・たまきと仲良くなり、家に遊びに行く。たまきは桜子の娘であった。そしてたまきは「高架の向こうへは行くな」との言いつけを破り、「向こう」にある洋子の家に遊びに行ってしまう。
そこで起こったことはよく解らなかった。寝込んでいた洋子の叔母にスイカを持って行ったふたりの少女が泣き出して、洋子の母・ヨニが少女ふたりを部屋から放り出し、自身も泣き出してしまったのだ。(帰宅してからパンフレットを読んだところ、ただこういうことがあったという事実だけで、ふっこさんも何があったのか解らないそう)
このことは大きな問題となり、小学校に呼び出されたソジンは桜子と再会。責任をとって洋子を転校させると言うソジン。「あなたは変わった」と桜子に言われたソジンが返した、「戦い方を変えたのです」という言葉が印象的だった。

変わらなければならないのは日本人、差別する側だとソジンは言う。
本当に、それ。その通り。それが難しいんだけど。人は簡単に変わらない。けれど今、変わったなあ、とも思う。
ソジンの孫の時代。挑戦が日本の統治下にあったことを知らないこどもがいる。
ドラマから韓流ブームが起こり、韓国グルメが輸入され、K-POPが流行している。コスメやファッション、映画などなど、かつて差別されていた国は、いまは逆に日本の若者が憧れる文化の発信地になっているのだ。
半世紀も生きていると、時代というものを感じる瞬間がくるものだ。

でも差別というものは無くならない。悲しいことに色々な差別に溢れている。
最初にソジンを差別していた社長は、長年真面目に勤め上げた彼を信頼する様になり、最後には孫に残した財産と遺言状を託す。実は社長は部落の出で、桜子と孫を差別から守るために縁を切ったのだった。

シリアスだったり辛いシーも多かったけど、関西らしい笑いもけっこうたくさん。おっさんがヒゲ生やしたまま女性役をやるっていう無理矢理なキャスティングも、あれはある意味コントだし。ちょっとコテコテすぎる笑いも、まあ箸休めと思えばいいかな、と。
(ちょっと気になったのは、ソジンが暴力を受けるシーンで声を上げて笑ってる人がいたんだけど、あれは一体どういうこと? 絶対に笑うようなシーンじゃないはずだけど。)

そして人と人とのあたたかい触れあい。洋子とたまきが子連れで再会するシーンも良かった。年をとり日本語を忘れたヨニと、朝鮮語を話せない息子のシーンは、ふたりのお互いを思う気持ちがやさしいんだけど、だからこそ言葉が通じない切なさがつのって。
老境にさしかかったソジンと桜子がまた再会し、お互いの想いを確かめ合うラストシーンは胸熱。
素敵なシーンがいっぱいあって書ききれない~

やはりふっこさんの描くお話は良いわ。これからはちゃんとチェックして観に行かなくちゃ。
そして役者としてのふっこさんも大好き。ソジンの孫の少年役がとても生き生きとして良かったなあ。


カーテンコールは撮影OK


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