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-映画紹介-『七人の侍』 誰が死のうと構いませんがこの作品を観てからにしてください。

《乱れ撃ちシネnote vol.110》

《乱れ撃ちシネnote vol.110》 『七人の侍』黒澤明監督 1954年公開 日本

「死ぬまでに観たい映画1001本 第5版」選定作品。

鑑賞日 2023年6月1日 U-next

【Introduction】
前回の『市民ケーン』はほぼ50年間我が生涯のベスト3の一本だった。

今まで何回観たか分からない作品だけど久しぶりに観てベスト3から外すことにした。
もちろん今観ても面白い映画だ。
斬新な撮影テクニックで創り上げられた映像にはビックリする。

しかしその後世界中の多くの監督たちによってウエルズが開発した撮影テクニックは上塗りされてきた。
今観ると映像に対する興味よりも82年前に24歳の素人の若造がこの映像を創り上げたことに対する驚きに面白さのウエイトが締めていることを実感したからだ。

ということで我が生涯ベスト3から『市民ケーン』は引退していただくことにした。
となると、
いまだにベストから外せない残り2作品のことを書くしかない。

その前に。
『市民ケーン』をアップしてからちょっと気晴らしに面白そうなTVシリーズを観始めたら3日間泥沼にはまったようにやめられず全16話観終えてしまった作品がある。
そのことを書き始めると[イントロダクション]が長くなってしまうのでそれは別の日に。

閑話休題。

ぼくがリアルタイムで劇場公開初日に黒澤明監督作品を観たのは1963年3月1日。
映画館は今はなき渋谷東宝でその日が初日だった作品は『天国と地獄』。
ちなみにワタシは15歳

それ以前は黒澤作品を観るために名画座を追いかけて引っかき傷でボロボロになった旧作を観るしかなかったんです。

なので、
『天国と地獄』はまさに待望!の新作だった。
当時書いていた映画感想ノートにつけた評価は最高点のA上。
だけど『天国と地獄』以上に楽しめたのが名画座で観た『用心棒』と「まさにこれが映画なんですよ」と感動した『七人の侍』だった。
ちなみに黒澤作品マイベスト3は『用心棒』『七人の侍』『隠し砦の三悪人』で当時は『七人の侍』のフィルムを手に入れたいと願ったほどだ。

【Story】
(オープニング・クレジット)
戦国時代〜
あいつぐ戦乱と
その戦乱の生み出した野武士の横行
ひづめの轟が良民の恐怖の的だったその頃〜

戦国時代末期。
麦の収穫が終わる頃になると毎年野武士たちに収穫を略奪される山奥の数十人が暮らす貧しい村があった。
今年も40騎の野武士が山
間にある村を下見に現れた。
焚き木をとりに山に入っていた一人の村人が野武士を見つけて村人たちに告げるために山を駆け下りる。

「また今年もか!」と、
絶望のどん底に突き落とされた村人たちは嘆き悲しみ泣き叫ぶばかりだ。
村の集会で利吉が立ち上がり「野武士と戦うしかない」と口にした。
村人たちはそんなことが出来るはずがないと怖気づいてみんな反対するが、長老(高堂国典)に相談すると「食い詰めて腹をすかせた侍を雇って野武士と戦わせるだ」と提案される。

百姓が侍を雇うなど聞いたこともないが、
利吉(土屋嘉男)、茂助(小杉義男)、万造(藤原鎌足)、与平(左卜全)の4人は侍探しのために宿場に向かった。

白米を腹いっぱい食べさせることを条件に通りがかりの強そうな侍に声をかけるが誰にも相手にされず笑われる毎日が続いた。
ある日近くの農家に盗賊が押し入り赤子を人質にとって納屋に立てこもる事件が起きた。
多くの村人たちが恐る恐る見守る中で一人の初老の侍が頭を剃り僧侶に扮してみごとに盗賊を切り捨てて赤子を救い出した。

そのことを間近に見た利吉たちはその侍に助けを乞うが勘兵衛(志村喬)は一旦は断る。
その様子を見ていた木賃宿に同宿していた人足が「こいつらがどんな辛い暮らしを続けて侍を探しているかあんたは分かってない」と勘兵衛に訴える。
自分たちは雑穀を食べながら勘兵衛には白米を食べさせようとしている利吉たちの強い想いを感じた勘兵衛は申し出を受けることにした。

村を守るには勘兵衛をいれて腕の立つ侍が7人は必要だった。

通りを歩く勘兵衛の目にかなった侍に声をかける日が続いた。
百姓のために命がけで野武士と闘って報酬が腹いっぱい飯が食えるということだけで集まった侍一人ひとりの目論見は何だったのか。

タイム・リミットとなり勘兵衛の目にかなった侍6人は40人の盗賊退治のため村に向かった。
6人の侍は誰一人として歓迎の出迎え
ない広場に到着した。
いったい我々は誰のために助けに来たのか?
その時、
村中に警戒警報の音が鳴り響いた。
火の見櫓の上で拍子木をかき鳴らし、
今までこそこそ隠れていた住民たちに「お侍さま助けてくだせえ」と広場に駆けつけさせたのは7人目の侍だった。

武器を持ったことのない村人たちに連日戦い方を教えながら村の防備を固める忙しい毎日が続いたある日盗賊の斥候が村を確かめにきた。

百戦錬磨の勘兵衛が野武士を迎え撃つ立つために練った戦略プランとは。

勘兵衛の目にかなった5人の侍と押しかけ1人を含む7人の侍の役割は。

槍が降り注ぐような激しい雨の日に7人の侍と村人数十人とはどんな闘い方をしたのか。

闘いが終わって村人たちは?

7人の侍は生き残れたのか?

映画の面白さは何なのか、映画は何が語れるのか、映画とは何か?
すべての答えが207分のセルロイドに焼き付けてあります。
この映画を観て「何が面白いの?」と疑問を持った方は一生涯映画を観る必要のない幸せな人生をおくれます。

【Trivia & Topics】
◯冒頭のシーンからやられます。
40騎の野武士が山頂から山間にある村の下見に訪れたシーン。
真下に村が見えるこの映像を観た時にぶっ飛びました。
どうやって撮ったの?

◯何度観ても涙ぐんでしまうシーンが三ヶ所あります。

・このめし無駄には食わんぞ!

・これは俺だ!

・また負け戦だったのう。

◯モノクロが美しい。
モノクロなのに山の中に咲き誇る花たちがカラフルだと思いませんか?

◯一日中スクリーン・テストを受けた新人。
4人の農民が宿場町を行き交う侍たちを値踏みするシーンの中に一人の若者がいます。たった数秒の出演シーンために何度も歩かされてスクリーン・テストされたその若者は仲代達矢です。

◯制作費も製作日数も予定を大幅に膨れ上がった。
当初半年の予定だった制作日数は一年を超え通常作品の7倍以上に制作費が膨れ上がりあわや制作中止となりましたが公開されるや大ヒットを記録しました。

◯マルチカムの導入。
黒澤監督はこの作品でマルチカム撮影法(複数のカメラで同時に撮影する)を初めてとり入れています。
3台から8台のカメラで同時に撮影しているので役者たちはいったい誰を撮っているのかが分からず全員が必死に芝居します。
それにより生まれるリアリズムや、望遠レンズの多用がダイナミックなアクション・シーンを生んでいます。

豪雨の中で野武士たち相手に七人が闘う最後のシーンはそれまでの時代劇の枠を大きく飛び越えてまるで西部劇のようだと言われて世界中で絶賛されました。
黒沢監督は西部劇の巨匠ジョン・フォードの作品をこよなく愛していました。

◯受賞歴。
・1954年大15回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞。

・2018年BBCが発表した「史上最高の外国映画ベスト100」第一位。

映画の面白さはなんですか?と問われ時に「この作品を観て下さい」と答えています。
映画の面白さのすべてが詰まっているからです。
世界中の監督に影響を与えています。
アーサー・ペン、サム・ペキンパー、ウォルター・ヒル、フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ミラーなど多くの監督がこの作品に学んでいます。

【6 star rating】
☆☆☆☆☆

【reputation】
Filmarks:☆☆☆☆★(4.3)

Amazon:☆☆☆☆★

u-next :☆☆☆☆★



映画とは何か。
映画の面白さとは何か。
世の中に面白い映画はあるのか?
答えは簡単です。
たった207分で答えた作品がここにあります。
人種・世代・時代を越えて感動を与える作品です。

この映画が面白くないという人は不感症です。
映画不感症だけですめばいいのでが・・・。

この映画がどれだけ面白いかは今すぐ『七人の侍』とググってみてください。

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こうなると次回は我が生涯のベスト作品のもう一本のお話です。

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