見出し画像

-映画紹介-『ラーゲリより愛を込めて』 お帰りなさいあなた・・・。

《乱れ撃ちシネnote vol.168》

『ラーゲリより愛を込めて』 瀬々敬久監督 2022年 日本

鑑賞日:2024年1月9日 U-next

【Introduction】
1月18日にはU-nextを解約してNetflixに戻るつもりなのでそろそろポイントを消化しなくては。
ということでまずは公開されたときから気になっていたこの作品を観た。

24.01.09(04) -☆☆-『エスターファースト・キル』 ウィリアム・ブレント・ベル監督  2021年 アメリカ
前作『エスター』(2009)の続編。
と言ってもその後に続く物語ではなく過去にさかのぼってエスターの出自についての物語という興味深い作品なので定額見放題を待っていた。

前作の『エスター』はこんな物語です。
ある夫婦が3人目の子供を死産したために施設で出会った9歳の少女エスターを養子に迎えた。
風変わりな少女エスターが加わることにより家族の中で分断が起こり残虐な事件で死人まで出始める。
実はエスターは実年齢33歳発育不全の女性だったのだ。

不気味な少女を養子にとったことにより一家が崩壊されるホラー映画。
演出はうまいし、少女役のイザベル・ファーマンは撮影当時12歳だったが33歳の女性のような顔つきに変貌する素晴らしい演技で驚かされた作品だった。

イザベル・ファーマン

そこで今回の『エスターファースト・キル』
撮影当時のイザベル・ファーマンはすでに25歳。
少女役に挑戦した勇気には頭が下がるがどう贔屓目に見ても無理がある。
演出も平凡で全く気の抜けたホラーにしか見えなかった。
残念。

次に観た作品も公開当時から定額見放題になる日を待ちかねていた。
ポイント消化作品にはぴったりの作品だ。

24.01.09(05) -☆☆☆☆☆-『ラーゲリより愛を込めて』 瀬々敬久監督 2022年 日本 U-next
瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督はお気に入りの監督の一人だ。
何と言っても『ヘヴンズストーリー』の面白さがピカイチかな。
今までに観た瀬々監督作品の感想メモです。

21.12.11 (07)☆☆☆『糸』(2020) 
物語に今ひとつ説得力が感じられない薄っぺらさが残る。
中島みゆきの曲の映画化。なにもかにも平凡なんだけどなんとなく気にかかる作品。

22.12.03 (02)☆☆☆『護られなかった者たちへ』(2021)
生活保護の闇がとてもうまく描かれているのに好感を持った。
清原果耶がとてもいい。
ちょっとこの監督気になるな〜と瀬々敬久監督作品を次々に観始めた。

22.12.04 (03)☆☆☆★ 『楽園』(2019)
冒頭の30分ほどやめようかと思いながら観続けていたら面白くなってきた。
十年以上前に限界集落で起きた少女失踪事件を皮切りに田舎にありがちな差別や村八分などの問題が浮き彫りにされる。
なんとも嫌になるほどうじうじした人間関係に絡め取られた人々を巡ってのお話。
時系列が複雑に入り組んでいるので物語が分かりにくかったけれどいい映画だった。
脇役でちらっと登場した石橋静河がヤッパリ素敵だ。

22.12.04 (04)☆☆☆☆『ヘヴンズ・ストーリー』 (2010)
『楽園』に引き続いて天国というのが出来すぎているけど『ヘヴンズストーリー』。
この監督が気になり始めてから観た最高傑作だ。
嫌な話だ。
でも、面白い。

《乱れ撃ちシネnote vol.30》

ほとんど見たことのない役者で綴られた278分という長丁場の陰々滅々とした復讐劇を観せられたのだから監督に力量があるってことだ。
前作でも薄々感じていた瀬々監督はときおりハッとするような美しい画面を見せてくれる。
この作品では斬新な画角や風景がふんだんに登場した。
特に北海道の森林の中に残された巨大なマンモス団地の残がいはドキドキさせるほど哀しくなるほど美しい。
廃墟となった巨大マンモス団地の動画は上記《乱れ撃ちシネnote vol.30》でご覧いただけます。

瀬々監督が三作通じて描いた日本人的ジメジメした情念の世界をワタシは苦手なのにもかかわらず三作立て続けに観せられてしまったことに驚く。
この一週間ほど気にかかる作品に当たらず《乱れ撃ちシネnote》が書けず次から次へとつまみ食いしていた悪循環に活を入れてくれた映画だ。
だからといって好きな作品ではない。
ちょっといい映画ではなくちょっと凄い作品だ。

22.12.06 (05)☆☆☆☆ 『8年越しの花嫁』(2011)
この作品の前に『友罪』(2018)も観たけれど肌合いが合わないので20分で途中下車した。
『8年越しの花嫁』は結婚式の直前に病に倒れ意識不明となった花嫁を8年間待ち続けた新郎の物語。
「YouTube」に投稿された動画が「奇跡の実話」として拡散され、
数々とメディアで取り上げられ「8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら」として書籍化もされたあるカップルに起きた奇跡の実話の映画化だ。

ラスト間近、フェリーでヒロインがケータイの過去動画を観るシーンまでは瀬々監督の持ち味じゃないでしょこの作品はと思いながら観ていたら、いきなりフェリーのシーン。
まずい、これは切なすぎる、これは反則だと言いたくなったけどそこから最後まで見事な畳み掛けで不覚にも泣いてしまった。
ホントにいい映画だね。
それにしてもコレが事実とは!すごい人生もあったもんだと思わせる純愛映画。
主演の佐藤健と土屋太鳳の二人が見事だった。

22.12.06 (06)☆☆☆『とんび』(2022)
またまた瀬々監督。
これが最新作。
おとなしめ。
この監督は時系列を崩すのが好きなんだね。
ときにはそれが物語を分かりにくくしている。

22.12.07 (07)☆☆★ 『島々清しゃ』(2022)
面白くなりそうな話だけどボツ。
大好きな安藤サクラも持ち味が生かされていないし。

23.04.03(05)☆☆☆『悪党〜加害者追跡調査〜』全6話 (2019) 瀬々敬久監督
メモなし。

ということで、
瀬々敬久監督の新作『ラーゲリより愛を込めて』は劇場公開された時からサブスク配信を待ちかねていた作品だ。
実話に基づくかなり悲惨な物語。
もっとも戦争の時には世界のどこにでも起こっていたであろう平凡な物語かもしれないが・・・。

冒頭のシーンがあまりにも安っぽくてこれはダメだと思ったほど。
戦場の描写があまりにも安っぽい。
兵隊たちがきれいすぎてリアリティーが感じられない。
嘘をつききれていない安っぽさ。
けっこうお気に入りの監督なのに、何だこれは。
岡本喜八監督の「独立愚連隊シリーズ」の方がよっぽどリアルだぞと思ったほど。

すべてがきれいすぎて類型的な戦争映画にしか見えなかった。
とても切ない映画なのにもったいないな〜・・・と頭の中でブツブツ文句を言いながら30分ほど観ているうちに印象ががらっと変わってきたのは次々登場する魅力的な脇役たちとシナリオの力だ。

【物語の概要】
1945年、第二次世界大戦終結後のシベリア。
零下40度の厳冬の地にある強制収容所(=ラーゲリ)では、不当に抑留された多くの日本人が、わずかな食料で過酷な労働の日々を送っていた。
死者が続出するこの地で、“生きる希望を捨ててはいけません。帰国(=ダモイ)の日は必ずやって来ます”と絶望する捕虜たちに訴え続ける山本幡男(二宮和也)。彼自身も身に覚えのないスパイ容疑でここに収容されたものの、日本にいる妻・モジミ(北川景子)や4人の子どもとの再会を信じて耐えていた。
だが、劣悪な環境に、誰もが心を閉ざす。
戦争で心に傷を負い、傍観者を決め込む松田(松坂桃李)。
旧日本軍の階級を振りかざす軍曹の相沢(桐谷健太)。
子犬の“クロ”をかわいがる純朴な青年・新谷(中島健人)。
過酷な状況で変わり果てた同郷の先輩・原(安田顕)。

分け隔てなく皆を励ます山本の行動と信念は、次第に凍っていた抑留者たちの心を溶かしていく。
やがて終戦から8年が経ち、山本に妻から葉書が届く。
厳しい検閲を潜り抜けたその葉書にあった“あなたの帰りを待っています”の一言に、涙を流す山本。
ところが、誰もがダモイの日が近づいていると感じるようになった頃、山本の体は病魔に侵される。
山本を病院に運んで欲しいと、決死のストライキを開始した松田の行動が功を奏し、山本は病院で診察を受けることに。しかし、そこで告げられたのは、余命3ヶ月という残酷な事実だった。
それでも妻との再会を諦めない山本だったが、彼を慕う仲間たちの勧めに従い、震える手で家族への想いを遺書にしたためる。
その遺書は、帰国の時まで仲間たちが大切に保管するはずだった。
ところが、ラーゲリ内で文字を残すことはスパイ行為とみなされ、遺書は無情にも没収されてしまう。山本の想いはこのままシベリアに閉ざされてしまうのか。
死が迫る山本の願いをかなえようと、仲間たちは驚くべき行動に出る・・・。
〜キネ旬webより〜

【Trivia & Topics】
✥絶品!北川景子
主役二宮和也の妻を演じた北川景子の儚げな美しさと役のハマり具合が絶品。

✥魅力的な脇役たち。
中島健人、安田顕、桐谷健太、松坂桃李、酒向芳など素敵な脇役たちもこの映画の魅力です。

✥ラストの慟哭がスゴイ。
思いもかけない結末には号泣するしかない。
スゴイ話だ。
陳腐な言い回しだけど事実は小説より奇なり。
いくらでも難癖をつけることができる映画だけどこの作品は多くの人に観てもらいたい。
やっぱりいいんだな〜瀬々敬久監督は。

こんな悲惨な戦争を体験したにも関わらず何も改善されず進化も進歩もしていない我が国ってどうなんだろう・・・。

こんな素敵な映画を観たらもう一本観なくては寝られない。
ということで次に観た作品がまたまた素敵な映画だったんだけどそれは次回に。

【5 star rating】
☆☆☆☆☆

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。

【reputation】
Filmarks:☆☆☆☆★

u-next :☆☆☆☆★




電子書籍「きっかけ屋アナーキー伝:昭和♥平成企画屋稼業♥ジャズもロックも本も映画も」を販売しています。
Kindle Unlimitedでもお読み頂けます👇


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?