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『歩いてたら知らない人から花をもらった』

歩いていたら知らないおじいさんから花をもらった。

カメラを片手に畑に咲くコスモスなどを撮りながら、
のんびりと実家に向かって歩いていたら、おじいさんに声をかけられた。

「良かったら、花をもらってください。」

立ち止まると、庭の手入れを一休みして、
にこにことしながら庭先に立つ気の良さそうなおじいさんがいた。

綺麗に刈り込まれた、垣根の代わりの庭木の上に花が並べられている。

「少し枯れているのもあるけれど、好きなだけ、持って行ってください。」

庭には小さな花壇があって、色々なものが植えられている。庭の手入れをしては、こうして近所の人に配っているのだろう。
縁側などから庭先に咲く花を眺める穏やかな日々を想像すると、暖かな気持ちになる。

「じゃあ、せっかくなので少し頂きます。」

そう言って、少なめの枝を手に取ると、

「こっちの、白いのも、持って行って。」

と、花切りばさみで小さめに枝を切って渡してくれた。

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何かお菓子でも持っていたら、お裾分けして渡したいが、あいにく何も持っていなかったので、お礼を言ってその場を立ち去る。

日常の中に、往来の人との会話のある暮らしは、良いなぁと。それって、なんだか豊かな感じがするなぁ、と思いながら、だいぶ傾いた日差しに照らされて実家へと向かった。

母に、歯医者さんの向かいの家のおじいさんにお花をもらったよと言うと、

「あの角の家のおじさんは色々とくれるのよ。」

と、笑いながら、花を受け取る。

「ちょど、お仏壇のお花を買おうと思っていたので、良かったわ。」

そう言って、手際よく花を切り分けて、仏壇に花を手向けた。
仏壇に添えられた花は、お店で買った花よりも暖かく輝いて見えた。

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