人生で初めて絵を買った日のこと
今まで、アートとは程遠い人生を送ってきた。
美術の成績はいつも2で苦手だったし、自ら美術館に行ったこともなかった。
唯一行ったことのある展示会は、時間を持て余していた日にふらりと入った、東京ミッドタウンのフジフイルムスクエアの写真展くらいだった。
3月のとある日、インスタグラムの投稿の雰囲気が好きでフォローしていた油彩画家の根ノ木あさみさんが東京で個展を開くと知り、期間中の2日目に赴いた。
そこで、出会ってしまった。
その絵は、空の写真を撮るのが大好きな私が過去に撮ってきた全ての写真の中で最も気に入っているこの空にそっくりだった。
さすがに原画を買う予定はなかったので、動揺しながら、ポストカードや画集エッセイを眺めた。
それらも十分魅力的だったが、当然のことながら、原画の方がずっとずっと綺麗だった。
どうしても原画が欲しい、と思ったのだ。
まじまじと、まじまじと目の前の絵を見た。
何度見ても、今まで誰にも買われなかったのが奇跡だと思った。
それくらい胸に刺さる出会いだった。
頭に、「今まで買ったものの中で最も買ってよかったものは?」という問いが浮かんだ。
その問いに、この絵だと答えたくなったので、絵の前に立つ私は購入を決めた。
個展期間が終わり、絵を受け取ってきたので、飾る場所として決めかねている2ヶ所にそれぞれ仮置きしてみた。
いや〜〜。。。
いいなあ。
本当に買ってよかった。
今まで、絵とは静止しているアートだと思っていた。
ただ、私は展示会でこの絵を見て、絵が生きていると思った。
本物の空を眺めている時のような時の流れを感じたから。
お気に入りの紅茶を飲みながらこの絵を眺めていたら、ふと気づいた。
これ、しおりと同じ形だ。
私はしおりが大好きで集めている。
綺麗な絵や綺麗な写真のしおりが手に入った時は本当に嬉しい。
私、好きなんだなあ。
縦長の風景画。
腑に落ちた気がして嬉しかった。
明日は私の29歳の誕生日。
この絵をできるだけ長い期間鑑賞するために長生きしようと思った。
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