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神さまの姿

「神さま」がどんなかたちをしてるか
ありきたりなことしか想像してなかった
白い衣の老人や
後光の差した仏像や


でも不思議に思った
けものたちの
鳥たちの
虫たちの
草木たちにとっての神さまが
「ヒトのかたち」なんかしてるかな?
自分たちを脅かしたり間違った接し方もよくするヒトが
あいつらにとって「神さま」に見えてるの?
勝手に世界の王みたいに独裁したがり
仲間すら憎み蔑み傷つける「ヒト」なんて生き物が?



ひどく汚された川を見た
ごめんなさい
もっと気をつける
あなたをこんなふうにして私たちひどい
胸痛く見つめてると
川は見つめ返した
すこしも怒らず
川そのものとして
けれど明瞭に意思を持って
川は怒ってなどいなかった、けれど
川は静かに
静かに
たしかに私を見つめ返してきたのだ


恋人の所へ行くのにいつも遠くて
いつも切なくて
けれどいつも
美しい天使のような白鷺に逢った
純白で高貴で ため息が出るほど優しい
それはトゲの後ろに隠されたもどかしい恋人の本当の心だと
のちに分かった




落ち込んで歩いていると
上空にとんびが音もなく現れることがある
音はしないのに
なぜいつも分かるのだろう?
やっぱり沈み込んで歩いていたら
突然植え込みから弾丸のように知らない猫が飛び出してきて
猛烈に脚に頭を擦りつけてきたこともある
友達になったそんな猫のうちことに仲良しだった奴がいなくなり
また泣いていた夜
そいつは雲に姿を変えてこつ然と会いに来た
あのおかしな耳の欠けかた まったく同じシルエット



うれしいと
光が満ちる
たとえ夜でも
月のひかりが
竪琴の歌のように満ちて
私を癒す
星々はうれしそうに話してる



惑いそうな時
「分かって」いる時
「声」が話しかけてくる


それは強制もせず
甘ったるくもなく
厳正でもなく
決めつけたりしない
すべきことをきちんと教えてくれる
けものや鳥や草木たちと同様
正しく捉えられることを好み
こちらがこころ誤れば
たちまち見えなくなる



ねえ
あなたはかたちが定まってなんかいないのね
性別もどっちでもいいのね
どんな姿にでもなるのね
こないだ現れた大きなごきぶり
私はその偉容に打たれ
丁重に外の世界へお連れした そっと柔らかい苔の上へ
あれもあなただよね
妙に目にとまった朽ちかけた花
それもあなたよね
窮地に駆けつけてくれた人も
優しかった通りすがりの人も



田んぼで出会った人懐っこい小さな女の子も
しゃぼん玉をいつも投げかけてくれる小さな男の子も
はたらきものの隣の外国人の青年も
草木を愛するお年寄りたちも
ひるがえる燕たちも
舞うこうもりたちも
可愛い蟻たちも
いつも泳いで来る魚たちも
止まって翅を見せてくれる蝶も
雨を知らせる蛙も
角の飼い猫のミミも
あるいはかつて
「ひどいことをした」と思える人たちも
そして同様ひどいことをしてた自分すら
理不尽と見える出来事でさえ
モップもほうきも音楽も踊りも
食べ物も
水も
ぜんぶあなたなのでしょう?



そんなことを思いながら目覚めて まだ明けていない空を見上げると
即答するように大きな金色の星が輝いていた
だからもう迷わない
一日を始めるね
今日がもしかしたら最後の日かも知れない
ならすべきことは分かってる 迷わないわ
いつものように笑って そう思って
けものや鳥たちのように私は動き出す

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