水野 英一

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sample『ばらの花』評(3)

あんなに近づいたのに遠くなってゆく(くるり『ばらの花』より) なわとびをしていた もう、どれほど飛んでいるのだろうか 握った手のひらに汗をかき ロープが滑って抜け落ちていった コンクリートの地面に プラスチックの部分が叩きつけられて 響きのない、乾いた音が鳴った 片方の手から足下に垂れさがる ロープの曲線を何度も目で往復させながら 今日はこれでおしまい ロープを手繰りよせて結んだ もう解けないくらい きつく結んだ 第3聯である。 《なわとびをしていた》と一行目から、不

    • sample『ばらの花』評(2)

      だけどこんなに胸が痛むのは 何の花に例えられましょう(くるり『ばらの花』より) 意味も解らず嘔吐した 溶けかけた宝石を拭ってくれた 考えるだけで泣いていた 眠り続けていたい 天井を蹴破ってみたい 一生のお願い を、たくさん抱えている 朝はいつも怪物が訪問する 冷たい空気を吸い込むと 肺に魚の骨が突き刺さる 咳と痛みを創造する 幼児の悲しい魔法 前回は第1聯を読解し、今回は第2聯である。 冒頭より『意味も解らず嘔吐した』とあり、前聯の空腹からの連関である嘔吐(吐くという

      • sample『ばらの花』評 (1)

        暗がりを走る 君が見ているから でもいない君も僕も (くるり『ばらの花』)より

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