できないの内訳:特性と能力と評価について

これまで、知能検査のでこぼこを「特性」っていうのあんまりピンと来てなかったんです。単に「能力」だときついから、現実を直視しないですむようにやわらかくして言ってると思っていたから。でも、そういうことじゃないのではないか、と思ったので書きます。

英語で考えると。特性はfeature 、中立的な「特徴」ということです。一方で能力というのはability。何かができる(able)ためのもの。Ability(能力)とそれがどのような評価(evaluation)を受けるかは、当事者と評価者の関係性や、立場によって変わります。でも特性(feature)はただの描写であり、評価とは独立のものです。

例えば、「恋人や家族を他の誰よりも大切にする」という行動があるとします。この行動を可能にする(able)ための能力(ability)は「近くにいる特定の誰かをそうでない人よりも贔屓する」という特性(feature)です。長いので「身内えこひいき特性」と名付けます。身内えこひいき特性の持ち主は、その人の恋人や家族にとっては良い物で、高い価値があります。でも、それ以外の人にとっては価値がない、またはない方が良いものです。

特性(feature)が能力(ability)として開花するか問題行動になるかは、置かれた状況や、評価する人によって変わります。例えば「身内えこひいき特性」により、子供の運動会のために仕事を休んだとします。子供からすれば(多くの場合)それは嬉しい事=高い価値を持つと評価するでしょうし、現代の価値観では多くの人から「良い親」としてポジティブに評価されるでしょう。でも、会社の風土や時代によっては、彼/彼女の「身内えこひいき特性」による行動は「社会人としての問題行動」として悪い評価を下されることもあります。

発達障害があると「発達障害者は〇〇ができない」という言葉に振り回されますし、実際に生活のなかでもほかの人に比べてできない(ableでない)ことが多いです。正直、毎回それなりに落ち込みますし、不安にもなります。

でも、その「できない」と感じたり言われているのは、本当は何なのかを考えることで、少しは落ち込みや不安を回避できるのではないかと思います。私の持つ特性 (feature)がその人にとって高く評価できないという意味での「できない」なのか。あるいは、今のやりかたや環境では、目標とする物事がableでないということなのか。どちらにしても「今の状況ではできない」というだけで、価値を見出してくれる人に出会ったり、自分にぴったりくる工夫やツール、薬が見つかればもうちょっと良い状況になる可能性もあります。

残念なことですが、特性(feature)自体に文句を言われることもあります。自分と違うから(まれに同じだからもありますが)、存在しているのが気に食わない。笑いものにしていい。暴力や暴言の対象にしていい。これはいわゆる差別というやつです。そういうのはさくっと無視して次にいきましょう。

希望だけでは食っていけないのは事実ですが「自分が悪い特性を持っているからうまくいかない」と認識しているか「今はあまり良くない状況に置かれているだけ」だと思うのかで、どのぐらい元気がでるかは変わります。自分の特性=featureとうまく付き合っていけるといいなあと思います。

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