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【短編小説】どうせ

私は昔から、「どうせ」が口癖だった。

どうせ、私は落ちこぼれ。
どうせ、私は誰からも期待されていない。
どうせ、私は優秀で美人な妹の付け合わせ。

どうせ、どうせ、どうせ。

何をするにも妹には勝てなかった。
何かを達成しても、妹がすぐそれを越える。
両親を含めた周囲の人間は、いつも妹だけを褒め称えた。

どうせ、私は妹の陰でありお荷物。
例えばあの子が亡くなっても、その存在はきっとみんなの中に大きく根付いていて、どうせ比較される人生からは逃げられない。

だからこそあなたが私を好きだと言ってくれた時、本当に嬉しかった。
初めて私が選ばれた、初めて誰かの一番になれたって、その事実だけで自信さえ持てそうだった。

でも、あなたが妹と楽しそうに話している様子を見て思った。

どうせあなたも妹を好きになってしまうんだ、やっぱり私は全て妹に奪われてしまうんだ、と。


だから刺したの。あなたのこと。

ねえ、痛い?苦しい?私が憎い?
そう、そうだよね。良かった。

今のあなたの感情は、全て私に向けられている。
今のあなたの関心は、妹ではなく私にある。

やった、やっとあの子に勝てる方法を見つけた。
妹に関心を持っている人達をみんな今のあなたみたいにしてあげれば、そうしたら私が、妹じゃなく私が、注目の的になれる。

報復に遭おうが捕まろうが、どうでもいい。むしろそっちの方が、より沢山の人の目を奪える。どうして今まで気付かなかったんだろう。

あ、そろそろ息を引き取る感じ?じゃあ…最期にこれだけ。
あなたに会えて良かった。大切なことを教えてもらったよ、ありがとう。

向こうで妹に会ったら、よろしく伝えといてね。


あの子のことだし、どうせ地獄の鬼もたぶらかしているだろうけど。

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