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Web・UIデザイナーが大型印刷物制作時に注意したことと制作プロセス





ビデオチャットサービスを展開するスタートアップのお客さまが出展する展示会向けに制作した大型印刷物のロールバナー(80cm×200cm)の制作プロセスの記事です。

発注したのはロールバナーくるりんという商品です。
https://www.kinkos.co.jp/service/sign-and-display/standing/rollup-40210169.html

発注・リサーチ・入稿まで8日と短いプロジェクトのため、できることは限られましたが、突然、大型紙媒体を作る必要が出たWebデザイナー・UIデザイナーさんたちのお役に立てれば嬉しいです。

※この記事は、チラシ・ブロシュアなどのグラフィックデザイン制作の知識がある前提で書いています。
わからない用語などあった場合は、現在、印刷通販サービスで手厚く解説がありますので、そちらを参照ください。

アジェンダ

(1)大型印刷物とWeb・スマホデザインの違い
(2)要件の洗い出し
(3)案出しからOKをもらうまで
(4)モックアップ制作
(5)完成


(1)大型印刷物とWeb・スマホデザインの違い

一番戸惑ったのは、ユーザと制作物(ロールバナー)の「距離」です。

Web・スマホのデザインはユーザが画面を見る距離が30cm程度のため、遮るものがない状態ですが、展示会向けのロールバナーは、1m〜3m位の距離から一目を引くことを想定する場合が多くまた人が前に立っていることもあるかもしれませんし、ユーザが歩きながらみている可能性もあります。ので、距離を起点にデザインをどう見えるようにしたいか考えをまとめはじめました。

感覚をつかむために、街中を歩いてロールバナーを歩きながら・止まってみたり様々な距離から確認したり、メジャーをもって測ったりしました。

また、立ち止まって人の動きを観察。
人が集まる場所では、隠れてしまうため縦長のロールバナーの下の方にメッセージを載せると読めないのでやらない方がいいのでは?など必要要件を見つけ出して組み込んでいきます。

散歩しても理解できない部分はGoogleで似たような展示会の規模の写真をググって、イメージを膨らませました。

(2)印刷要件の洗い出し

ロールバナーの大きさは80cm×200cm。
元々グラフィックデザインをやっていた時期もあるものの、大型すぎて実際にどうデータを作ればいいのか全くわかりません。

ので、オンライン印刷通販でテンプレートを落として見比べたり、印刷を頼む会社さん(クライアント先から近かったのでキン●ース)に度々電話をし、印刷要件の調査をしました。

わかったのは4点。いずれも印刷会社さんなど直接関わるところに問い合わせをしたほうが良いです。不安な場合は、テンプレートをダウンロードできる印刷会社さんに決めるのが良いかと思います。

a. トリムマークが3mmではなく、15mm以上になる。
A4の数倍あるので、裁断機も大きく、誤差が出るためだと思います。

→トリムマークの広げ方はこちら。
https://no-mark.jp/designer/illustrator_tombo.html

b. 印刷可能範囲は各印刷会社さんにより相当まばら
大事なメッセージが印刷できないと困るので、この辺もしっかり調べました。

c. 写真の解像度は100dpi〜
小型印刷物は見る距離が近いため、300〜350dpi必要などになりますが、
大型印刷は見る距離が遠い・また機械が対応していないなどの理由でポスターは150dpi〜、ロールバナーは100dpi〜位が多いです。

d. 消防法とイベント規約
大きな展示会の場合は、消防法などの観点から持ち込んで良い大型印刷のサイズ・スクリーン材質などの規約が存在しています。

特にロールバナーのスクリーン素材の確認は必須です。
私が今回依頼しようとしたロールバナーの商品には2つの素材があります。

まずは、ターポリンという素材です。
小さいお店の中などで使う分には良いですが、防炎加工をしていおらず、大きなイベントでは持ち込み禁止の可能性もあるそうです。

そのため、防炎ポリエステルクロスという素材にしました。また、他でググったところ、防炎素材を保証するシールがあるらしく、一緒に頼みました。

(3)案出しからOKをもらうまで

要件が出揃ったので、一通りの要件や印刷に必要な期間などをクライアントに提出。
制作に入ります。

【初校】
文字多めの原稿をもらったので、だいたいどの程度まで削れそうかイメージしやすい初校に加え、背景色がある法が目立つ?目立たないなど検討してもらいやすい案を6つほど出しました。
この時点でビジュアルの方向性がまだ決まってなかったので、数を出すことを重視しました。見た目があると、クライアントの意見も引き出しやすいです。
ので、ロールバナーの比率のみ守って小さいサイズで制作しました。

一番右が背景が青い方がメッセージが目立ち、後ろのネットワーク的なグラフィックも良いもののイメージに近くプロダクトを出すよりもイメージ寄りの写真を出したいという方向性が出たので、第2校に進みます。

【第2校】
イメージにあった写真を探したかったものの、普段素材探し〜合成で2日くらいかかってしまうため、今回は基本コーポレートサイトで使用している写真で乗り切ります。

第2校から170cmの人のシルエットを貼り付けました。ここでも4案位出してます。また、手が追いつかなかったところは、良いなと思った他のロールバナーの事例などもコメントつきで送っていました。

結果、左と右をブレンドした案に落ち着きました。

メッセージを多くの人に読んでもらうために上に配置し、その下にイメージ写真をみてほしい順に置くという案です。また、写真は裁ち落としより右の下部のような形が落ち着くので、こちらが採用になりました。

方向性が見えたところで、大きすぎる背景グラフィック・サービスロゴなど見た目を詰めたり、背景グラフィックでキャッチにまず目がいくように上に「●」を配置するなど、ブラッシュアップとグラフィックの設計をしました。


(4)モックアップ制作

ここから、実寸で印刷するための準備をします。
今まで小さいサイズで作っていたデータをイラレ実寸に拡大。
Acrobatか自宅プリンタのCanonに分割印刷機能があるので、使用しました。(曖昧ですいません)

全て印刷する前に、
・キャッチの大きさとコピーのサイズが本当にいいのか
・グラフィックの線の太さ
・グラフィック背景(ネットワーク風)と背景のコントラスト
を検証するために部分印刷をしました。

以下は、グラフィックの背景の濃さを検証しています。

ここからカッターで不要な部分を落としてナンバリング。お客さまのところでつなぎ合わせます。印刷に使用したA4は40枚。切るのに1時間位かかりました。

本来だとスプレーのりなどで貼り合わせますが、客先を汚せないので、セロテープで会議室を借りてくっつける作業をしました。だいたい1時間位です。

(5)完成

確認をしてもらい微調整をしてキンコースに持ち込んで、とりあえず今回のお仕事がおわりました。

デザインのスペックの覚えておきたいところを公開します。キャッチをできるだけ大きくという観点からグリッドに確実にそったわけでないころがちょっとアレですが。。

以上です。

自分メモも含めていますが、誰かのお役に立てれば嬉しいです。

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