- 運営しているクリエイター
記事一覧
ワイヤレスイヤホン ~『未来』2020年1月号掲載
ワイヤレスイヤホン
そうかこれ、一月号か 正月の自分を思う 口半開き
イヤホンを充電式に変えたけど震災の夜を忘れていない
ワイヤレス ワイヤーがない ワイヤーと思わずつないでいた細い線
いつのまにこんがらがったイヤホンの線は人間関係みたい
断線の冬の朝には片耳でバッハのヴァイオリンソナタ6番3楽章
人命は重いものだと書いてあるそう思うけどオレのはどうか
のぼりからくだりに変わる泣きな
クイズノックほか ~『未来』2019年12月号掲載
クイズノックほか 工藤吉生
クイズノック二週間見てミョルニルとベイカーベイカーパラドクス知る
わるいときだけ思い出す肉体の臓器は幸福論に通じる
ビッグイシューの「イシュー」の意味を検索しきれいに忘れ現在に至る
まっしろなくしゃくしゃ紙を内に秘め買う者を待つブランドバッグ
聴覚の検査するとき押しボタン持ってクイズの緊張感だ
マジシャンが指から落とす砂のよう財布を出る出る出るレシートは
守護霊シクシクとかのやつ ~『未来』2019年11月号掲載
守護霊シクシクとかのやつ 工藤吉生
守護霊がオレのうしろでシクシクとシクシクとああ、ああシクシクと
首もげるくらい共感したというそのままもげて飛べばたのしい
そうこれが二十九度だよ冷房をなにもつけずにいてやや暑い
自販機のルーレットいま惜しかったもう一度やったら遠かった
あちらへと行きたいオレとこちらへと来たい見知らぬ人、信号機
短冊にねがいごと書くような人の願いがきれい叶ってほしい
ビューティー・トワレ【短歌10首】 ~『未来』2019年8月号
ビューティー・トワレ 工藤吉生
ツイッターやめると言ってやめぬ人だいたいやめてもらいたい人
パイプしか吸ってないからコーヒーが好きかは不明のBOSSのおじさん
真夜中にパイの実喰ってるんだよと教えてあげるツイッターにだけ
言おうって思って忘れちゃうんだが思い出したら自慢話だ
そのへんでチャンネル桜を知ってから桜が保守の花に思える
トワレって書いてあるから調べたらトイレのことだやりやが
枯れ枝と財布【短歌10首】 ~『未来』2019年7月号
枯れ枝と財布 工藤吉生
におい付きの風がでてきて春になる虫も変態たちも目覚めて
微笑んで穴掘る人はいないのだ「のだ」なんて言うから土になる
オレ、飛沫、わりと見るかも だいたいは透明なのが多かったかな
ピンクの雲いいなさわってみたいなあ財布にいくら入ってたかな
魔王と言い枯れ枝と言う子と父で馬の手綱を握るのは父
筆くわえアシカが新元号を書くみたいな・でかい白紙みたいな
体液を拭
ミューズさん ~『未来』2019年6月号
「ミューズさん」
むしゃくしゃな日でも遠景ゆっくりと近景はやく飛び去っていく
走ってる「時」に振り落とされるのは嫌だシワシワしたおでこ嫌だ
あたらしい波がいったん退いてそれを含んだ次の波くる
好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者
消しゴムがないからツバで消したって少し離れた席で荒れてた
細ければいいのかよ!? って怒ってた脚線美コンテストのタモリ
母親の故郷と旧姓お
平成三首、そのほか【短歌10首】 ~『未来』2019年5月号
平成三首、そのほか
平成のはじめに性に覚醒しあくびしながら平成おわる
年号がうつるくらいじゃ変わらんよ、人は 奥から牛乳えらぶ
振り向けばうしろすがたの平成が後ろ歩きをしているでしょう
デパートとデパートつなぐ空中の通路に人っぽいもの揺らぐ
一点の撮ったおぼえのない画像でてきて知っている白い壁
筋トレじゃなくて赤ちゃんあやしてる動きも視野に信号を待つ
赤ちゃんのころのアルバムひらいた
さくらももこさんと多くの仕事 ~「未来」2019年3月号掲載
さくらももこさんと多くの仕事
工藤吉生
神のもつ力のひとつは「新聞」をさくらももこに描かせるちから
ルレカーサの占いによればドブに落ち犬に噛まれる人生、オレの
いいことも悪いこともしないコジコジに夜空の星はみなぎってゆく
「コジコジはコジコジだよ」の真実に機械教師は打ちのめされて
性的に興奮すればお湯が沸き人が集まるやかん君あわれ
おなべからとびでるインチキおじさんのような大人よあと
新人賞受賞式 ~「未来」2019年2月号掲載
新人賞授賞式 工藤吉生
東京へ、授賞式へ ~『未来』2019年1月号 http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52228775.html
のつづき
「愛情」「美」「情熱」などの花言葉もつ赤バラがスーツの胸へ
緊張をほぐし待ちたい一室に社長、代表、馬場、篠、永田……
賞状を穂村弘が読み上げる様子ながめる一番近くで
金屏風背負ってしゃべるオレが
東京へ、授賞式へ【短歌10首】
東京へ、授賞式へ 工藤吉生
オレの行くときだけ雨がやんでいる予報だったがもう過去のこと
革靴になじまぬ足で歩いてるいつもの道が水中みたい
新幹線 何年ぶりに 乗ったかな 「ん」が3つある しんかんせんに
人混みを我慢して行くガマンしてがまんしてまだひとごみのなか
狭くって高くて不味い東京のうすぐらい店も旅の思い出
地下道をながく歩いて外へ出た雨の水面を白鳥うかぶ
TOKYOは外国
エライ【短歌10首】
「エライ」 工藤吉生
よいしょ、って座ったソファが思ってたよりも深くて天をあおいだ
眼球のない目でこっちをにらんでるマネキンのコートもう秋だねえ
何時間寝たか計算しているがよくわからない二時間がある
玉ねぎが十キロ入っている箱を持ち上げるときこころはひとつ
悪臭はするけど誰がすかしたかわからぬ電車の客、客!客。客?
コインだと思えばあまり痛くないすごく激しい雨のつぶつぶ
クイズ出し