工藤吉生の短歌【13】2014年7-9月〈20首〉
【第十三期】2014年7-9月。61首発表。
河野裕子短歌賞「愛の歌・恋の歌」部門で入選〈11〉。
現代歌人協会主催・全国短歌大賞で佳作第一席(田村元選)。
短歌研究新人賞で候補作に選ばれた〈13-20〉。
〈1〉
ズダラニズダラズラブニフ袋から取り出すダラズラブニフ愚か
〈2〉
ばらばらのブラスバンドの練習のそのばらばらに聞き入って春
〈3〉
これほどの歯痛に耐えているオレに世界はいやらしいほどしずか
〈4〉
匙なんぞ使わず直に飲みほしてなんぼのものだ煮え湯というのは
〈5〉
クリームの陽のあたる街ここに住む誰もが泣いたことのある人
〈6〉
爆破する音のテレビを物言わぬ男見ているその上に夜
〈7〉
アパートの扉に鍵をかけている女性をオレが電車から見た
〈8〉
プリンセスプリンセスのことを略すときンセスンセスという裏世界
〈9〉
うっかりと入って行くと晩飯をふるまわれそうな灯りの家だ
〈10〉
広告の集合である球場のすごくゆっくりしたファインプレー
〈11〉
おのおのの枝ひんまがる木の下で言われるままの愛であったな
〈12〉
礼というよりはつかのま下を向くくらいでよいと思われている
〈13〉
泣いているある時点から悲しみを維持しようとする力まざまざ
〈14〉
・ ・ ・ ・
四拍のゲンパツイラナイ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
七拍のキレイナミヤギヲトリモドソウ
〈15〉
仙台の町にウサギとサンタいて看板を持つ「原発NO」の
〈16〉
「仙台駅」三文字「SENDAI STATION」十三文字で大差がついた
〈17〉
打ち出され釘に転がる銀玉の特にあっさり消えたものへの
〈18〉
近づけば夜のマンホールさざめいていつかは海になりたい汚泥
〈19〉
震災にヤマザキ春のパン祭り景品皿に傷ひとつなし
〈20〉
そこここに空を見ている人がいて青さを喜び合っている夢
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