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夢野久作 瓶詰の地獄(角川文庫)を読んで

今回も抽象的感覚派読書感想文の方を書いてまいります。作品は夢野久作の「瓶詰の地獄」の短編集です。

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表題作の「瓶詰の地獄」を初め、「死後の恋」や「支那米の袋」など猟奇的だが鮮やかな光景が目にまざまざと浮かび、人間の底にある暗黒の発露を感じ取ることができます。

特に好きな話は、表題作の「瓶詰の地獄」と「一足お先に」という話です。

「瓶詰の地獄」は三通の瓶詰にされた手紙が漂流し、役場に届けられるところから始まります。
無人島で兄妹が聖書を心の支えにして、暮らしてきたものの、お互いを異性として意識し罪の意識が芽生えてくる述懐が書簡形式で描写されています。

「一足お先に」は、よく夢野久作の代表作「ドグラ・マグラ」の短編版と言われる作品です。
舞台は病院にて、病気で足を切断した
主人公が足の夢を見、夢と現実が交錯する物語。
同じ病気に入院する有名な男爵の未亡人が主人公の夢中遊行で殺害したか否か、真の黒幕は誰かといった作品。

どちらも真実がはっきりと明かされず、読者の解釈に委ねるタイプで、夢野久作らしい好き嫌いが分かれる作品となります。

私はとても好みな味でした。

この短編集を例えるならば、好みが分かれる変わり種の饅頭の詰め合わせのような作品だと思いました。

「瓶詰の地獄」は無人島の南国の雰囲気もあり、パイ生地の饅頭を彷彿とさせます。パリリとした外側と餡のまろやかな甘みが夢現にしてくれます。

「一足お先に」は、味噌餡の饅頭だと思います。味噌の辛味を感じつつも甘さもあり、最後の最後に喉を通る時の最も芳醇な甘みを感じるような読後感だからです。

これで今回の読書感想文を終えます。
唯美主義的な作家が読みたくなったら夢野久作も選択肢に入れると良いです。

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私も結美主義的な作品を書いておりますので、夢野久作の作品が気に入った方はご一読いただけますと。

エブリスタにてエンタメ寄りの作品を

Kindleに純文学寄りの作品を

Twitterに超ショートショートを



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