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サマソニ直前!今からでも間に合うThe 1975。彼らが最高な理由とは?

いよいよ今週末、夏の風物詩ことSUMMER SONIC(サマソニ)が開催される。ついに、ついにこの時がきた。3年待った。個人的には7月にコロナにかかってフジロックを断念せざるを得なくなり、桑田さん目当てで行く予定だったロッキン最終日も台風で中止になり、多くの人がフェス解禁をしているなかでずっと指を咥えていたのでようやく。しかも今回のサマソニのヘッドライナーは愛してやまないThe 1975、しかもコロナ禍でツアーを中断して以来およそ2年半ぶりとなるライブを、母国から遠く離れたここ日本でやってくれるのだから、スペシャルのほかなんでもない。わかっている方がほとんどかと思うが、今僕はとてもハイだ。

そのハイになった勢いで今回は、The 1975をつい最近知った、今の今まで知らなかったなど、まだあまり彼らのことを知らない方に向けて、今からでもその波に乗れるような記事を書いてみた。サマソニ予習の一環としても、サマソニに行かない人も新たな世界への入り口としてぜひ読んでもらえると嬉しい。

The 1975はどんなバンド?

左からRoss、Matty、George、Adam

The 1975はMatty Healy (ボーカル)、George Daniel(ドラム)、Adam Hann(ギター)、Ross MacDonald(ベース)の4人からなるマンチェスター出身のバンド。結成は2002年と実はかなりのベテラン選手で、同じ年に結成されたバンドとしては、Arctic MonkeysやMGMT、日本のバンドだと凛として時雨やアルカラなどがいる。結構下積み期間の長かったバンドなのだ。彼らはデビュー当初よりDIRTY HITというウェストロンドンを拠点にするインディーズレーベルに所属している。このDIRTY HITはThe 1975以外にも同じく今年のサマソニに出るbeabadoobeeRina Sawayamaをはじめとして多彩なアーティストがたくさん在籍しているので、興味のある方は是非チェックしてほしい。

これまで4枚のEPと4枚のアルバムをリリースし、アルバムについては4作全てがイギリスのチャートで1位を獲得。2010年代、ヒップホップやモダンなR&Bが台頭し、なかなか人気のロックバンドが出てこない「ロック冬の時代」と呼ばれた中で世界中で大きな成功を収めてきた稀有な存在なのだ。今年の10月14日には5枚目のアルバム『Being Funny In A Foreign Language(邦題: 外国語での言葉遊び)』をリリース予定だ。

2019年のサマソニでのThe 1975

デビュー時から数えてこれまで7回来日しており、そのうち4回がサマソニでの来日。彼らとクリエイティブマン(サマソニの主催企業)がどれだけ強い関係かがわかるだろう。今回が8回目の来日、しかもアルバムリリース前のめちゃくちゃスペシャルなステージになること間違いなしだ。

では、そんなThe 1975がなぜ今世界で最も最高なバンドなのか、その理由について語っていきたい。

なぜ彼らが最高なのか?

ポップさという確固たる軸がある豊かな音楽性

The 1975はまずやっている音楽がとにかく良い。本当に良い。彼らの音楽的基軸となっているのは80年代を想起させるポップサウンドだが、それだけに留まらず幅広い音楽ジャンルを取り入れ彼らなりに昇華させている。パンク、カントリー、フォーク、ジャズ、ヒップホップ(エモラップ)、ダンスミュージック(UKガラージ)、アンビエント・・・・と列挙するとキリがない。

しかし、アルバム通しで聴いていても不思議とバラバラな感じがしないのがThe 1975の音楽のすごいところ。これはあくまで個人的な意見だが、多様な音楽を横断しながらも初期から一貫して「ポップさ」を忘れていないところが、The 1975の音楽が散漫なものにならない大きな要因ではないかと思っている。デビューアルバム以降も各アルバム必ずポップで聴きやすい曲が数曲収録されており、この「ポップな面を忘れずに冒険する」ことがThe 1975をThe 1975たらしめるものであり、魅力の一つなのだ。

しっかりとコンセプトが立ったアートワーク

音楽だけでなくアートワークにもめちゃくちゃ力を入れているのも、The 1975の大きな魅力の一つ。アートワークは音楽を聴く上でとても重要で、ここがしっかりしていることで聴いている音楽がより味わい深くなる。The 1975はアルバムごとにコンセプトがきちっとしているので、アートワークにもそれが色濃く現れてる。

デビューアルバムはモノクロ。シックでクールな装いが特徴的。この時からすでに滲み出てるただならぬ未来のスター感よ。

2ndはピンクと白。ポップで華やかな感じが増した上で、ロックスター特有のセクシーさと危うさも感じる。実際この頃Mattyは酷いドラッグ依存と戦っている最中だった。

3rdは。インターネット社会との向き合い方がテーマということもあり無機質な感じもある一方で、本人たちのアー写はファッションを中心にどこか等身大なルックスだ。

4thは黄色とアースカラー。3rdと地続きな作品であり、対照的に自己と向き合う内省的な内容のアルバム。ちなみに黄色は「幸せ」「希望」といった明るい意味だけでなく、「憂鬱」などネガティブな意味もあるのだそう。

このようにアートワークだったりアー写だったり、音楽以外のクリエイティブもコンセプトをしっかり決めて創っているところも彼らのいいところだ。

社会問題とも積極的に向き合う姿勢

The 1975の影響力は単に音楽の世界だけにとどまらない。彼らは社会に暗い影を落とす問題にも積極的に声を上げ、アクションをとっている。僕はこの彼らの姿勢が本当に大好きで、彼らのことを心から信頼できる理由の一つだ。
例えばジェンダーの平等における問題。数年前から海外のフェスで出演するアーティストのうち、女性アーティスト(ガールズバンドや女性がフロントマンのバンド含む)の比率が少ないことが問題視されるようになった。

イギリスのレディング/リーズフェスティバルの2015年のラインナップ。右がフルラインナップで、そこから女性アーティストだけを抜き出したのが左の画像。こうしてみるとインパクトがすごい...

そんな中Mattyはこの現実を深刻に捉え、女性アーティストの比率が50%以上のフェスしか出演しないと公言し、大きな話題を呼んだ。実際Mattyはサマソニ主催のクリエイティブマンにも同様の要請をし、これを受けたクリエイティブマンは出演アーティストの調整を行った。結果として今年のサマソニはbeabadoobeeやRina Sawayama、Carly Rae JepsenやMegan Thee Stallionといった海外勢はもちろん、日本からもきゃりーぱみゅぱみゅ、CHAI、羊文学、Awesome City Clubといった女性アーティストを多数ブッキングし、日本のフェスでは過去類を見ない数になった。

過去のグッズに新作アルバムのプリントを施して新しいグッズを作るという面白い試みもやっていたThe 1975

環境問題についても彼らはアクションを起こしている。4thアルバムの1曲目「The 1975」ではスウェーデンの若き環境活動家Greta Thunbergを迎え、彼女は朗読をしてリスナーに地球の危機と行動を促すことを説いている。その4thアルバムのCD、レコード、カセットのパッケージはすべてリサイクル素材で作られたものだ。さらに途中で中止になってしまったが、前回のツアーではチケットの販売枚数に応じて植樹をするということも掲げていたり、販売するグッズの一部は過去のグッズの上から新たにプリントを施して新しいグッズとして販売するというサステナビリティで画期的なアクションにも打って出ていた。

このように彼らは口だけではなく自分達が行動で示すことで、社会問題に真摯に向き合い世界中のファンに訴えかけているのだ。下記リンクの記事により多くのThe 1975のアクションがまとめられているので興味のある方はぜひ。


とりあえずどの曲聞いたらいい?

ここからはサマソニや今後来たるツアーの予習用として、とりあえずどの曲聞けばいいか迷っている方へおすすめの曲を各アルバムから1曲ずつピックアップ。おそらく今年のサマソニでもやってくれるんじゃないかと思われるものをチョイスした。(確実にやるという保証はないのでその辺はご留意を!)

Chocolate

2013年リリースの1stアルバム『THE 1975』収録、初期を代表する人気曲であり、初期The 1975のイメージを確立させたともいえる1曲だ。ギターのリフがとても気持ちいいポップな曲調とは裏腹に、歌詞の内容は実はドラッグソング。Chocolateは海外では「マリファナ」のメタファー。同曲はジャンキーが警察から逃れる逃避行が描かれている。The 1975はMattyがドラックの問題を抱えていたこともあり、これ以外にもドラッグソングがいくつかある。(「UGH!」「It’s Not Living (If It’s Not With You)」)


The Sound

2016年リリースの2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It(邦題: 君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)』収録、ライブのラストを飾ることが多い曲。跳ねるようなビートと鍵盤、そしてラストのギターソロまで全てが最高で、ライブでも終盤は曲の盛り上がりに合わせて「ファッキンジャンプ」の嵐だ。MVに出てくる言葉は実際に彼らが受けた否定的な評価の数々。今では信じ難い話だが、デビュー当初The 1975は結構なバッシングを数多く受けており、イギリスの大手音楽メディアNMEは当時デビューしたての彼らになんと「Worst Band Award」を与えたほど!しかし、その後の大成功でこのNMEをはじめ批判した人の多くは見事に掌を返すことになる.....

ちなみに先程ジャンプではなくなぜわざわざ「ファッキンジャンプ」と言っているのかについては、ライブバージョンをぜひ観て欲しい。


Love It If We Made It

2018年リリースの3rdアルバム『A Brief Inquiry Into Online Relationships(邦題: ネット上の人間関係についての簡単な調査)』収録、世界に蔓延る社会問題をふんだんにリリックに折りまぜたメッセージソング。人種差別、戦争、移民、地球温暖化など多くの問題に言及しながら、「And I’d love it if we made it(何かを成し遂げることは素晴らしい)」と歌うサビの強さはもう鳥肌もの。目を背けたくなるような世界の現実に触れながらも、ポジティブで背中を押されるような曲なのだ。この曲については素晴らしい解説が既にあるので、興味のある方は是非ぜひ一度読んで欲しい。


Guys

2020年リリースの4thアルバム『Notes On A Conditional Form(邦題: 仮定形に関する注釈)』収録、3rdアルバムからの「Music For Cars」という一つの時代の終わりを締めくくる曲にして、長年苦楽を共にしたバンドメンバーへの感謝を述べた究極のラブソング。偶然にもコロナ禍で混沌の最中にリリースされた、音楽性や歌詞の内容ともに複雑な4thアルバムのラストソングとしてはあまりにも温かく、完璧なバラードである。2サビにあたるところでくる「the first time we went to Japan Was the best thing that ever happened”(初めて僕らが日本に行った時が人生で起きた最高の出来事だった)」の一節は、日本のファンなら涙せずにはいられないだろう。

Part Of The Band

2022年10月14日リリース予定の5thアルバム『Being Funny In A Foreign Language(邦題: 外国語での言葉遊び)』収録、The 1975の新章の始まりを告げるかの如く先行リリースされた1曲。これまでの彼らの先行配信の1曲目はキラーチューンになりうるインパクト強めの曲が多かったのに対し、この曲は温かみのあるフォーク調の曲でファンを驚かせた。歌詞も現在の世相を意識しているかのようなフレーズも多く、とても興味深い内容。2年半ぶりのライブとなるサマソニでも同曲を披露するのか注目だ。


最後に

この夏、3年ぶりに日本に来てくれたThe 1975。彼らは音楽で常に最先端をいき、社会問題に対しても自ら行動を起こして世の中のロールモデルとなってるといっても過言ではない、いわば現在進行形で伝説をつくっているバンドなのだ。彼らのことをよく知らなかった方がより彼らに興味を持ち、サマソニで観たりこれから出るアルバムを含めて彼らの魅力をより感じるきっかけになれたら嬉しい。

The 1975待望のサマソニでのステージは8月20日(土)の19:30スタート!現地に行けない方はWOWOWオンデマンドでも見れるのでぜひチェックを!

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