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サブカル大蔵経694森岡督行『荒野の古本屋』(小学館文庫)

私もあの時、著者に一誠堂でお世話になっていたかも…。と夢想。

主人公の著者は本好きのヒーローです。

ボンクラな本好きを、自分もこんな世界があったのでは?と並走させてくれる興奮。

〈本〉の世界を愚直に突き進む中で、それぞれの場で差し伸べられる手の縁の貴さ。

好きなことを商いにしていくことの努力と大変さもしっかりと伝えてくれる物語。

東京行った時訪れたい聖地がまたできた。

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古いビルの話になると私はボルテージがあがる。p.52

 着目点が縁をつないでいく。視点と行動力と人の縁でたどり着いた世界。

午後、中野ハウスに戻り夕刊を開く。「帝國・英米に宣戦を布告す」p.74

 解説の酒井順子さん曰く「過去留学」

「陸軍号」は編集責任者に林達夫がつき、全体のデザインと原文を担当した。p.93

 林達夫!戦時中の書籍という世界。古書という分野の無尽蔵さに驚嘆。

わからないことは、わからないと謙虚にいえる姿勢が、より大切。古今東西の本のうち、我々が把握できるのは一%もない。p.99

 一誠堂専務の諭し。印哲関係も充実しているので、何度か足を運びました。日本の古書店の王様だと思います。著者の任されたアナログな仕事が、知を支える信頼になっていくくだりは感動しました。大変だろうけど、うらやましい場面でした。

たしかに私の発言は、澁澤龍彦の何かのエッセイに出てきたくだりを、そのまま思いつきで口にしたまでだった。p.125

 私もよくする行為なので親近感を感じるやりとりでした。

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