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イノベーションのジレンマと政党

こんにちは、海原雄山です。

今日は、イノベーションのジレンマという話をさせていただきたいと思います。

イノベーションのジレンマとは、経営学の世界で使われる言葉ですが、そのことばの意味からお話をさせていただきたいと思いますので、少々お付き合いの程を。


イノベーションのジレンマって何?

イノベーションのジレンマとは?

イノベーションのジレンマとは、既存の大きな企業がスタートアップ企業の革新により競争力を失う理由を説明した経営学の理論です。

大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、今ある既存の事業や技術と競合することで、事業をそのものを破壊する可能性があります。

また、既存の商品が持つ特色ゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要を逃してしまう。

そのため、大企業は、新しい事業や技術に乗り遅れてしまい競争力を失うと言うことです。

最初は新しい技術も粗削りで市場で大いに受け入れられるということはないかもしれませんが、改良を重ねることで、だんだんと世の中に受け入れられ始めます。

その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業が、やがて既存の商品等を駆逐してしまうのです。

この大企業が既存の事業や技術との競合を避けるために新しい技術等を取り込むことができないことを「イノベーションのジレンマ」と言います。

イノベーションのジレンマの具体的事例

理屈で説明してもわかりにくいかもしれませんので、具体的事例を用いてご説明させていただきます。

今や過去の懐かしのアイテムとなってしまった「ガラケー」がまさにそうでしょう。

私も昔は、随分折り畳み式携帯のお世話になりました。

かつて、NECやシャープ、パナソニックは、今でいうところのガラケーで大きなシェアを確保していました。

2000年代前半には、ソニーが世界シェア上位に名を連ねるなど、日本もこの分野で戦うことができていました。

しかし、最近では国内においてもアップルやサムスンといった外国企業にシェアを奪われ、NEC等は携帯電話事業から撤退していきました。

残るはソニーやシャープ等極々限られたメーカーのみです。

では、なぜそうなったのでしょうか。

90年代から2000年代にかけて、日本の携帯電話は、手元でインターネットができる「i-mode」やカメラ付ケータイ等、先進的な技術を取り込むことで成功していました。

しかし、拡張性に欠け、一度買ったら、そこから大きく機能が変わることはありませんでした。

そこで2000年代終わりから2010年代初頭にかけて登場したスマートフォンが、「破壊的イノベーション」を起こすのです。

スマートフォンは、iOSやandroid等の基本ソフトをベースに、「アプリ」でさまざまな機能を拡張できました。

例えば、ガラケーならば基本的にキャリアメールしか見ることはできませんが、アプリを入れたりすることで、Gmail等も観ることもできますし、電子書籍等のアプリで読書を楽しむこともできます。

ネット銀行のアプリを入れれば、簡単に振込処理なんかもできてしまうから、便利なものです。(まあ、こうやってnoteを読んでくれる方々は言わずともわかるかもしれませんが💦)

しかし、ガラケーはそういう柔軟な機能拡張性はありませんでした。

ガラケーメーカーは、スマートフォンの優位性や将来性に気づいていたかもしれません。しかし、スマートフォンに本格的に乗り出せば、既存のガラケーの開発がおろそかになりますし、スマートフォンが出現した当初は本当に市場として成立するのかという不確かさもありました。

また、ガラケーで培ったノウハウ等を捨てることになるかもしれないのが、足かせになったのかもしれません。

そういう、ある意味で「行くも地獄、引くも地獄」な状況となり、スマートフォンへの対応が遅れてしまい、ガラケーにこだわる(あるいはこだわらざるを得ない)メーカーは、あっという間にシェアを奪われてしまうのです。

かわりに台頭したのは、携帯電話メーカーとしてはNEC等に比べ後発のアップルやサムスンだったのです。

まさに、イノベーションのジレンマの事例に当てはまるものと言えるでしょう。

では、日本の政界にこれを当てはめると・・・

大阪の政界での事例

このnoteは政治マガジンですので、政界に当てはめるとどうなるかを考えて見ましょう。

身近な事例としては、まさに大阪維新の会が大阪に巻き起こした破壊的イノベーションがあります。

それこそ、大阪都構想、もっと正確に言うとそれをバーチャルで実現するバーチャル都構想こそが、大阪維新の会が大阪の政界にもたらした破壊的イノベーションと言えるでしょう。

大阪府は、バブル期の無計画な開発と大阪市との無駄な張り合いで財政が悪化し、財政破綻寸前まで追い込まれました。

そこでのちに大阪維新の会初代代表になる橋下徹さんが大阪府知事になって、大ナタを振るったわけですが、ポテンシャルがあるはずなのに大阪の発展を阻害している要因がありました。

それが、大阪府と大阪市の二重行政です。

大阪市は大阪府域を超えて、西は神戸、東は京都府南部や奈良市あたり(滋賀県南部もか?)まで、実質的な都市圏を形成していましたが、その広域権限は大阪市という小さな領域にとどまっていましたので、大きな視点に立った時、大阪府と大阪市との間で利害が衝突し、物事が進まないことが多数。

例えば、計画は随分前からあったのに長らく放置されていたなにわ筋線なんかはその最たる例とも言えます。大阪府全体や関西全体で見たとき、なにわ筋線は大きな利益を生むもので優先順位は高いはずですが、大阪市は自らの領域を侵されるのを嫌い、大阪府と大阪市でこの話は長らく頓挫していました。その間、大阪のポテンシャルは埋もれたままで、そのくせ大阪市はあまり意味のない今里筋線なんぞを作ってしまうのです。

この広域行政の権限が大阪府と政令市である大阪市で被っているために生じる意思決定の不一致をどのようにして解決するかという問題への解答として、大阪維新の会と大阪都構想が生まれました。

大阪維新の会は、世論の理解を得るために、大阪府議会と市議会で第一会派と首長ポストをがっちり掴んで、大阪都構想を先取りするように、府市一体での改革を進めていきました。

その結果、徐々に大阪の発展が実現していき、市民からの支持が大阪維新に集まっていき始めました。

他方、中央と同じく長らく大阪の政界の中心にいた大阪自民党は、従前と変わらず「大阪市のことは大阪市で決めるべき」と府市別々での政策や行政を志向していました。(当然都構想も反対)

従前それで守られる利益があり、その恩恵にあずかっている大阪市民(というか支持団体)からの支持を捨て去るわけにはいきませんから、世間が府市一体での大阪維新の改革を支持し始めても、そっちに路線転換できません。

結果、大阪維新はいつしか大阪自民の支持率を抜き、一過性のブームかと思いきや、すっかり大阪ではその地位を盤石なものにしました。その結果は、大阪W(クロス)選や、大阪府議会市議会で比較第一党をキープしていることからも、すでにお分かりかと思います。

吉村フィーバーは、吉村洋文さんのルックスの良さもありますが、そもそもコロナ渦において、大阪市の松井一郎市長(いわずもがなの維新公認市長)が、コロナ対応の司令塔を大阪府知事に一元化したことで、迅速な対応を可能としたことから、大阪のコロナ対応が国に先んじていたこともあり大きな注目を集めたことに端を発したものです。(そもそもで、吉村洋文府知事が超優秀であることは今更説明する必要もないでしょう。)

これが以前の大阪なら大阪府知事と大阪市長が主導権争いをして、まともなコロナ対応等できなかったでしょうから、府市一体での行政運営がいかに有効かと言うのが、改めて世間に認知されたことと考えられます。

結局その年の秋に行われた都構想住民投票は僅差で否決となりましたが、これは、それまでの維新府政(市政)で、「都構想がなくても都構想と同じ効果が得られる」ということをほかならぬ維新自体が証明してしまったため、都構想の必要性が薄れたという皮肉な現象も多分に影響していたとは思いますが、府市一体での改革の有効性というものを大阪の人たちは十分理解しているものと考え、維新を支持しているのだと思います。

その証拠に、否決された都構想の出口調査でも、維新市政は7割にも上る支持率があったわけです。

都構想が頓挫し、いよいよ維新も終わりかと思われましたが、結果はその逆でした。

国政選挙についてはまだ自民党の支持は盤石で、実際、地方選では大阪維新、国政選挙では自民党を選ぶという投票行動は、珍しくなかったわけですが、吉村フィーバーを境に、国政選挙でも維新がその強さを発揮することになり、2021年の衆院選ではご存じのように維新が大阪で候補を出した14小選挙区で全勝という結果になりました。(前回2017年はわずか3勝)

恐らく府市一体で大阪を変えた実績を持つ維新に国政でも期待しての結果が、この選挙結果に影響したと考えられます。

こうして、府市一体の改革を行ってきたバーチャル都構想という、文字どおり府市の今までの枠組みを破壊した、破壊的イノベーションで、維新はその地位を盤石なものとし、地方選はもちろん国政選挙でも大きな支持を得るに至りました。

一方、イノベーションについていけず、府市バラバラでの政策にこだわり続けた大阪自民は凋落したというわけです。

イノベーションのジレンマを乗り越えるには


経営の世界の話に戻すと、イノベーションのジレンマを乗り切った事例があります。

マイクロソフトは、ワードやエクセル等のオフイスというソフトで大きな収益を上げていましたが、クラウドやsaasによる同種の機能を提供するサービスが勃興しそうになっているタイミングで、素早くオフイスのクラウド化(saas化)も進めました。

そうすることで、マイクロソフトはビジネスチャンスの変化の波に乗り遅れることなく、今もGAFAMの一角を占める地位を維持し続けています。

このように既存の財産を捨て去る決断ができるかどうかが、イノベーションのジレンマを乗り越えるカギとなると考えられます。

では先ほどの大阪の例で言うと、大阪自民がイノベーションのジレンマを乗り越えるにはどうしたら良かったでしょうか。

まだ維新の基盤が弱い初期に、大阪自民が多少の既存の支持者を多少振り切ったとしても、府市一体の政策に転換していたら、短期的には維新に負けたとしても、長期での維新の躍進を許すことは無かったかもしれません。

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