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アメリカ文化の良いところ、良くないところ

こんにちは、作曲家の村松昂です。現在アメリカの大学院に来てから四年目、今日は音楽の話ではなく、アメリカ留学に来て感じた文化の違い、大学や街での経験などをかいつまんで紹介していきます。たぶん、これがパート1(続く?)
私のアメリカ経験は、ほとんどがボストンか、ニューヨーク州のロチェスターという街(小さい街ではないが治安は悪い)、そして限られた旅行の経験から来ています。また大学院というかなりリベラルな環境にいるので、そうした偏った視点でお話することをご承知おきください。


まずは生活編

私が修士の試験に合格してアメリカに来たのは2020年の9月、まさにパンデミックを世界中が経験している時で、アメリカも町中がロックダウンしているような雰囲気でした。大学も99%オンラインになったのですが、それでも私は少しでも長くアメリカにいたくて、日本からではなくアメリカから授業を受けていました。必然的に家にいる時間が長くなり、当時のホームステイ先の家族とかなりの時間を過ごしたように思います。

こういう言い方は本当は好みませんが、ホストファミリーはアメリカの中産階級といった感じの人たちで、娘二人は大学に行っていて、一番下の息子も高校を卒業した後、コロナの影響で大学進学を見送ったものの、近所のバイク屋でアルバイトをしながら毎日本を読み、植物に水をあげ、料理をし、私からみたらなんとも心豊かな生活を送っていました。家も、古き良きTHE・アメリカの家という感じで、周辺の治安もよかったです。どの家のガレージにも星条旗が刺さっているのが、実は一番最初のカルチャーショックだったかもしれません。アメリカ人の愛国心というものは、そんな目にみえる形で現れます。とにかく彼らはアメリカに来たばかりの私にとてもよくしてくれて、よく聞くホームステイ先でのひどい扱いなどは一切なく、振り返ってみても幸運だったなと思います。

ただ、世の中の常というもので、その人たちがいい人達だからといって、全てが明るく回っているわけではありません。彼らは彼らで色々な悩みや解決したい問題を抱えていました。当たり前ですが、日本人もアメリカ人も同じ人間なので、みんながイメージするような陽気なアメリカ人像というのは実はかなりの虚像であることを最初に学びました。むしろ、とんでもない格差社会で、最低限の社会保障がなく、例え億万長者であったとしても一つの失敗でホームレスになり得てしまうアメリカ社会で生きている方が、よっぽど業が深い。私のホストマザーは、明るく健康的な人でしたが、腰に持病があり、突然倒れて動けなくなることをとても恐れていました。アメリカで救急車を呼ぶことになると、日本では想像できないような金額がかかります。そもそも病院自体も高いので、ちょっとした風邪程度ではまず誰も病診には行きません。その一方で、本当にシリアスな病気や事故にあって入院手術でもしようものなら、いったいいくらかかるのかわからないわけですから、アメリカ人の中に健康志向が異常に強い人が多いのも頷けるというものです。

アメリカの健康保険の仕組みが複雑で、どの病気にどの程度保険が適応されるのか、されないのか、素人には分かりにくいというのもあると思います。正直、international studentの私としては、いったいいつどこでぼったくられるかとビクビクしているので、なるべく病院に行くような経験はしたくない笑 もちろん大抵の医者は良心を持って診てくれると思いますが、一昔前には医者が処方薬としてマリファナを出し、それで金儲けをしていたというようなニュースも、アメリカ人の友人から聞いたことがあります。医療目的のマリファナは事実効果的なのだとは思いますが、そうしたひどいバックグラウンドのために死者や中毒者もでたのですから、少なくとも個人としては何も信用してはいけない、そういうマインドがアメリカで生きていくのに必要だと思います。

いきなりシビアな話をしてしまいましたが、もちろんポジティブなカルチャーショックもありました。まず、アメリカに行って私は初めてヴィーガン・ベジタリアンというものを知りました。いえ、もちろん定義自体は知っているつもりでしたが、実際にそうした人たちに日本で会ったことはなかった。まずそのホストファミリーがヴィーガンでしたし、街のどのレストラン・カフェに行っても必ず菜食主義者のためのメニューというものが存在します。私がアメリカに来てからの四年、毎年違う人たちとシェアハウスなどして住んでいますが、大抵いつもヴィーガンかベジタリアンの人がその中にいます。どういうわけか私のアメリカ生活は、ヴィーガンの人たちとの切れない縁があるようです。そんな経緯で、私自身は肉も魚も食べますが、一緒に食事をしたい、そんな時にどうやって野菜だけで美味しいものが作れるかなと考えたり試してみるきっかけになりました。特に和食は大抵、肉か魚が"sneaking"しているので、これを野菜だけで作ろうとするのはとても難しく、しかしそれが楽しい笑


自由の国

大前提としてアメリカは移民の国ですから、街のどこに行っても白人も黒人も、ヒスパニックもアジア人も、普通に混在しているのが当たり前の光景です。ヴィーガンやベジタリアンに社会全体で配慮する文化が日本に比べて圧倒的に早く実現しているのも、その表れでしょう。そんな中で、個人の自由という価値観、つまり「あなたが何を思っていても私は受け入れるけれど、逆に私の考え方も否定しないでね」、そんな考え方が社会の基盤となるのは至極当然だと言えます。日本は単一民族で、むしろ共通のルール・価値基準をコミュニティ全体として持つことで秩序を保ってきたのですから、この両者のカルチャーは正反対といっていいでしょう。なので、日本のそうした文化に違和感を持っている人、分かりやすい例では学校の校則が嫌いだった人なんかには、アメリカは向いているのかもしれません。でも私はそれ以上にむしろ、心が繊細な人ほどアメリカで暮らしてみることをお勧めしたい。誰も何も押し付けてこないこの社会は、「〜しなきゃいけない」「本当はこうなるべきなのになれない」、そんな心の悩みを解放して、自分の本当の気持ちに向き合うのにはとても良い環境なのではないかなと、思っています。私自身も、日本の生活も大好きな一方で、アメリカに住んでいて、気持ちは本当に楽になりましたし、自分は自分でいていいんだ、自分のありのままでいたい、そんなマインドで毎日を過ごせています。少し前のルームメイトに言われた言葉、"You are the least pretentious person I've ever met." これは今までいただいた褒め言葉の中でもベスト5に入るくらいには嬉しかったです。

ただし、先に書いたようにアメリカは自己責任の国でもありますから、最終的に頑張る、乗り越えるのは自分、ということは添えておきます。日本にいれば期待できる「誰かが助けてくれる」はなくて、現実的なことで言えば例えばコロナのワクチン接種も日本みたいに国から案内の手紙やメールが来たりするわけじゃなく自分でネットで探して申し込まないといけませんでした。(それでワクチン摂取できていなくて、クラスに来たのに大学のエントランスで帰される、そんなこともありました…)
空港でも私は色々なトラブルに遭遇してきて、予約してた飛行機に乗れない!間に合わない!みたいなことがたくさんありましたが、ヨーロッパ含む欧米の空港の職員が親身に解決してくれたことはほとんどありません。大抵の場合は、一言でまとめると「私は悪くないから自分でなんとかしてください」みたいな感じで対応されます。羽田や成田の人だったら、例え悪いのはこちらだったとしても、まずは「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」なのにな…などと意味もなく日本を懐かしみ、そんな時初めて日本人のホスピタリティを実感します。

ネットでもたくさんの人が書いているので、今更私が書くことでもないかもしれませんが、これから海外に行く人のために、たった四年の経験から最後に一応警鐘しておきますと、銃を誰が持っていてもおかしくない、(表現は悪いですけれど)向かいから歩いてくる人が頭のおかしい人かもしれない、そんな環境では、極端な話自分がしっかりしていなくて銃で撃たれたり刺されても、救急車を呼んだり警察を呼んだりするのは自分しかいない(と思っておかないといけない)のですから、それが日本を出て「自由」を手にいれる引き換えの、自己責任ということになるでしょうか。


次回、大学編に続きます(?)

ボストンの街。私にとってアメリカの故郷とでも言うべき大好きな街です。


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