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ワンダフルライフ

井浦新さんの映画デビュー作ということで観た。
この頃も今と同じく、綺麗で落ち着いたリズムがあって、静かで、哲学者のような雰囲気を持っている方だ、と感じた。

この映画が公開された年、私は生まれた。
私が物心ついていない頃すでに俳優として活躍していた人たちが、今も映画やドラマに出ている。自分が赤ちゃんだった頃、彼らはすでに大人だった。そのことがなんか不思議だった。

小津安二郎監督作品のように真っ正面からずっと映し続ける、死者たちの語りのカットが印象的だった。皆、役者としてではなく、自分自身の本当のエピソードを語っているような口調だった。
台本をもらって台本通りに喋ったとして、果たしてああなるのだろうか。「え?」と聞き返す所とかリアルな会話でしかなかったし、どういう風に演出したのだろう?と気になって仕方がなかった。
ここ見てくれ!というような人間の顔のどアップとかはなくて、ドキュメンタリーのように客観的な映像が多いと感じた。俳優さんたちにもここ見てくれ!という雰囲気は全然ない。
ジブリ映画を観ているような感覚だった。プロたちのテクニックを見られる、という作品ではなく、どうなるか分からないけどその場の会話を撮っている、という作品のように感じた。

思い出のビデオの撮影風景にわくわくした。僅かな間だったけれど私もああいうセットを生で見ていたことがあって、その時にも感じていたときめきを今も感じた。それぞれの役割のプロフェッショナルである大きな大人たちが淡々と仕事をする。誰一人欠けてはいけなくて、一人ひとりの力でひとつの作品が作られている。何一丁前に、あなたが何を知っているんだ、と自分でも思うが、「ものづくりって本当にいいな、好きだな」と感じる気持ちが自然とわいてきた。

次はDISTANCEを観る。

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