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つんドルを観て考えた自分の人生

「僕から見たら、君は眩しいけどね。
 全力で生きてるじゃない。心配になるくらい。」
そのササポンの言葉が、自分自身にも深く刺さった。

なにより、安希子が自分のようだった。
焦って、がんじがらめになって、自分は大丈夫だと言い聞かせて(実際、全く大丈夫ではない時ほど周囲と自分には「私は大丈夫!」と言い切ってしまうんだよな)、でも体と心は完全には騙し切れなくて、気がつく頃にはとんでもない程疲弊している。
ササポンのリズムに触れて、安希子の口調が穏やかになる。最初と最後のほうの、病院のシーンの対比が印象的だった。

安希子は正社員になったけど、「セカンドキャリアを輝かせなきゃ」という焦りから選択したもので、実際はアルバイトをしながら好きな執筆の活動をしているのが最も幸せを感じられる生き方だったと気付き始めていったんじゃないかな。ササポンとの関わりを通して。いや、もしかしたら正社員として働く前から気づいていたのかもしれないけれど、世間の見方や自分のプライドを優先して見て見ぬふりをしたのかもしれない。

私自身、四年制大学を卒業して、ずっとやりたかった俳優を目指す道を進むことにした。
でも結局2年で辞め、無期雇用の派遣社員で就職し、今、転職活動をしている。
昨年の今頃、俳優を目指していたということを周囲に知られるのが嫌だった。何となく、恥、のように思っていた。だから自分の中の負の遺産のように考えて、久しぶりの友達に会った時でさえも、「辞めたよ!事務してる!」と明るく言い切って(触れるな、という念を送ることで)、深入りされるのを全力で避けていた。

今の会社で、入社したての頃に部署のおじさんたちが歓迎会を開いてくれた時も、俳優をやっていたんでしょと聞かれて「あ、そうです!少しだけ!今はやってないです!」と笑顔で言い切ることで、話が膨らむことを避けた。
でも、今の会社でお世話になっていたおじさんに「辞めます」と伝えた時、もう一度私の過去のことを聞かれて、「もうやらないの?やればいいのに」と言われた時、私の中で何かがほどけていった。「俺の妄想だけど、主人公の友達のポジションで光ると思うんだよなー!女優、やればいいのに!」と続けるおじさんに、「それ、絶対演技うまくないといけないやつ(役)ですね」と返して笑いながら、何かが腑に落ちた。
私は結局、俳優辞めたと言いながら、心の中では全く、辞める気がないのだ。
一年前、オリンピック周期でしか恋をしない私が、何を焦ったのか出会ったばかりの人と速攻付き合い始め、「こういう些細な幸せが本当の幸せじゃん」と考え、10年以上叶えたいと思っていた俳優の夢を捨てた。
その人とは別れてまた新しい人と付き合い始め、「正社員になってもっと仕事頑張らなきゃ!」と考えていた。
それってさ。
私の場合は、多分心の中で、「何でも頑張ってきて、それなりに有名な大学に入った私が、まともに稼げなくて、not正社員で、自分の夢追ってるなんて嫌だ」っていうプライドがすごく邪魔をしたがゆえの選択だったんじゃないかな、と、今になって思う。だから彼氏作って、アルバイト以外の雇用形態で働いて、一人暮らしして、早く結婚して子ども産んで過ごそ!と、ずーーーーーっと思っていたのかもしれない。そんなこと思っていたつもりはないけど。いや、思ってたんだよ。認めろ。
あんなに好きだったドラマも映画も観なくなって、週末は家で寝るか彼氏と出かけていた。
でも、彼氏と映画の話をしていた時、「俺、映画に金払いたくないんだよね」と言われて怒りが込み上げた。
あんなに心血注いで作られたものを、なぜそんな風に言うんだ!
映画で心救われたことないのか!
映画は人の命救うんだぞ!観た人の心を慰めたり、癒やしたり、前向きにさせたりするすごいものなんだ。
みんな命懸けて作ってるんだ!
その時、見て見ぬふりをしてきた私の自我が目覚めたようだった。

そいつと別れた今、私は毎日のように映画やドラマを観ている。人生が楽しい。
恋はあまりしたいと思っていない。近年は知り合うやつを見境なく恋愛対象として見ようとしていた私だったけど、今は簡単にはときめかなくなった。それより、犬飼いたいんだよな、今は。犬を二匹飼って、一人暮らしの部屋で戯れるのが最近の目標だ。
元の私に戻った気分。

正社員で働くぞ、ということさえ、世間の言葉を聞いたにすぎない決断だったなと思う。
本当はどんな働き方でも、俳優をやり続けることが私の幸せなんだ。
どう思われようと。関係ない。
売れなかろうと。関係ない。
10年も20年もやって、いつか大河ドラマに出られたらそれでいい(願望、でかい)。

つんドルの安希子を観ていて、自分の気持ちもすとんと落ち着いていった。

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