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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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嘘 ひとつ

.
今日の終わりに
嘘をひとつ ついた
あなたが
あんまりにも
泣きそうだったから

平気よ、平気
ひとりでも、大丈夫
だから いいの
ひとりきりに させて

明日 また 遊ぼうよ

夜の底で、ひとり

夜の底で、ひとり

伝えたかったはずの言葉は
もう 見失ってしまって
影さえ 掴めない

過ぎていく時間を
ただ
静かに眺めている

冷たい夜の底で、ひとり

積もるため息

積もるため息

何も言わないまま
ため息だけが積もって
あなたが
わたしが
遠くなっていく

たぶんこれで終わり
きっともう会えない

さよならも言わずに
沈黙だけが饒舌で

「流されて」

.
泣いた理由を
あなたに教えたいけど
悲しみだけが大きくなって
理由が
遠くに
遠くに
流されてしまった

遠くに、ずっと遠くに

.
思い出が
うんと遠くに
ずっと遠くにあれば
よかったのに

まだ
息が
胸が
苦しい

あなたに恋を

あなたに恋を

.
眠そうな
午後二時の横顔
流れる風に
恋をしそうな予感
あなたに
会いたい

やっぱり

やっぱり

.
やっぱり好きだなあと
ぼんやり
ぼんやり
確認しているところです
ひとつふたつみっつと
たぐりよせるように

探り合い

探り合い

.
偽りばかりを探りあって
見えるはずの真実を
通り越して
今の二人が
遠くなっていく

霞む街

霞む街

.
遠くで
街が霞む
二人の関係も
こんなものかも知れないね

知っているものだけが
知っている

そっと
そっと
呼吸をするように

運命なんて

運命なんて

.
君に
恋をしていたわけじゃなかった
午後の日差しに立ち止まり
出した答えは

さよなら
運命だと思った人

探していたのは

寂しさを埋めるための
恋をしただけ

出会いは
ただの偶然
さよならは
必然

涙は見せずに
お別れを

背中合わせ

背中合わせ

.
傷つけあうことしかできないのなら
さよならを

背中合わせの憂鬱に
どちらも気付けないで
抱えたのは
言わない虚しさ

ふたりになれなかった、二人

泣いたのは

泣いたのは

ねえ
彼女が泣いたのは
誰のせい

ねえ
彼女が泣いたのは
ねえ
なんの為

触れるはずの指先は
冷えて固まったまま
彼女の涙を拭えずに

ねえ
こぼした涙の行先は、どこ

ねえ、ほら、ねえ
声が失われていく