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廃車の扉〜なんとなく向田邦子

タバコに次いで酒もやめられそうな勢いだ

この調子で何もかもやめられて無になれたらよい

本心なのかどうか、自分でもよくわからない

身体のあちこちが故障して、複数の医者へ通い続けるのは、生きることへの執着とか未練にちがいないのだ

他人にはあまり言いたくない部位の違和感が募り、予約を前倒しして専門医へ飛んだ

今年たぶん二度目の雪の朝だった

薬局とカー用品店の建物の隙間に、車のドアが並んで立たされていた

あえて彼らと呼ぶ

廃車を解体した残骸であるから、もはやドアであってドアでない某教祖のようなものだ

自分はまだまだ若いと思うのは錯覚どころか幻想で、小津安二郎が死んだ年を過ぎてまもなく、夏場以降はめった打ちが続いて二軍落ち、メジャーだったらリリースされる投手のようにガタガタッときた

少し前までは地の涯てまでも歩こうと、一日20キロも徘徊していたりしたのに、つくづく人生不可解、不如意だ

すたれものに心を寄せるのはもとからだが、廃ドアに自分を重ね合わせる心性は捨ててから死にたい




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