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何故近親相姦的関係はタブーなのか?

 実は先週コロナ陽性になってしまいまして、暇を持て余した私に友人が送ってくれた本が、桜庭一樹さんの「私の男」でした。友人、そのチョイスよ、、、。表紙から分かる、絶対重くて暗いやつじゃん!!!逆にコロナ悪化しそうだわこれ!(笑)とツッコミを入れたくなるが、もともと私、救いようのない話が好きだ。流石は私の友人。よく分かってる。以下、あらすじ引用。



落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

私の男 桜庭一樹


 近親相姦という禁忌を犯した親子の物語。ネタバレ含むので見たくない人はストップ。では行きます。

 花と淳悟は、「遠い親戚」と周囲の人間には認知されていたのですが、実はそうではなく「血の繋がった親子」だったんですね。花、淳悟は互いに父子関係を超えた恋愛感情をも抱いています。二人はこれまで世間一般的な親からの愛情を受けなかった、それに飢えています。だからこそ二人は「血」を互いに求めるのです。
 近親相姦のタブーを描いた夢野久作の「瓶詰の地獄」という小説があります。それは無人島に流れ着いた兄妹が成長するにつれ互いに恋愛感情を持ってしまうという物語です。それは無人島に人間が兄妹という男女しかいない。そんな環境下で本能に抗えないといったものなんですが「私の男」は違います。あえて同じ身体に流れている「血」を持つ親、子を選んでいるのです。求めているのです。
 世間一般的にどう見ても歪んだ関係ですが、そんな二人が強い愛情を持っている、想い合っている、そんな風に描かれているのです。読み進めているうちに「なんで親子で恋愛しちゃだめなんだろう。本人たちが良ければ良いんじゃないんだろうか」と投げやりな気持ちになります。それほど二人の関係は歪みながらも柔らかく美しく描写されているのです。皆さんはなぜ近親相姦をタブーと考えますか。第一声に出てくる言葉は「血の近しい者と交わってできた子どもは障害を持って生まれる確率が極めて高い」。ではないでしょうか。そして「親、きょうだいと婚姻を結ぶことはできないと法律で決められている」。本能的、今の国の法律的に禁止されているのは分かります。ただ、倫理的には?道徳的には?そこを説明するのはとても難しい。近親相姦的関係は、確かに性的虐待による認知の歪みによる要因が大きいでしょう。しかし、この小説のようにお互いが求めていたら?そんなケースは極めて0に近い確率でしょうけど。
 親子がなぜ恋に落ちちゃ駄目なのか。私自身、強い嫌悪感が湧きます。その関係にどんな愛情を持っていて想い合っていたってそれは、お互いの認知の歪みが生み出した関係だから。親子は「性愛」ではない「愛」の関係を持つべきだからです。それこそがやはり「人間関係の基盤」となるものであらねばならないのです。親子でドラマを観ていてえっちなシーンになり気まずい。それが健全なんです。一緒にエロビデオが観れちゃう関係は健全ではないのです。
 小説は良いですね。普段考えもしないことを嫌でも考えることができます。普通に生きていたら絶対分かり合えない類の人たちの気持ちを考えることができる。内容は終始暗いですがおすすめです。



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