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『Tokyo発シガ行き➡︎』 (2018年11月号アーカイヴ/✨第1回✨)"プロローグ"

さて、2018年の年始には構想をしつつ、実行に移すのにちょっと時間がかかってしまいました。滋賀県守山市出身の小説家として、
じぶんを育ててくれた本屋さんにーーこの本屋さんで松谷みよ子と出会い、寺村輝夫と出会い、わかったさんやプロイスラー、折原みとや花井愛子を経由しながら村上春樹や吉本ばななや、江國香織にたどり着くそれはまさにひとつの旅なのであったーー何か恩返しは出来まいか、一番良い恩返しはわたしが華々しく売れて、がんこ堂の数字を上げることなのだけども、今はそれはできぬので、じゃあバーターエッセイはどうかと思った。
そこでしか手に入らぬものを何か店頭に置いて、とにかく本屋に足を運んでもらいたいというアレである。

わたしの知名度で言ったらたいしたアレにはならないが、それでも友人たちが地元にはいるじゃない、誰かが思い出して「そういえば」と立ち寄ってくれたら嬉しい、そんな感じで始めたバーターエッセイ。けれども「がんこ堂」さんとしては、わたしのエッセイを「バーター」とは言いづらい気配を感じ(それはそうだよね)、vol.2からは月イチエッセイと改めた。
続く言葉はシンプルにそのまま「東京発滋賀行き➡︎」

このデジタルの時代にアナログを重んじていくことがコンセプトなのでまずは画像として貼り付けます。そのままプリントできる方はA4またはA3(自宅プリンターでは無理だよね、半分ずつスクショしてA4で2枚プリントするとか!?)でお願いします。
このままWebで読みたい方のためにそのまま下に、文章は掲載しますね!
挿絵はライターで妹の杉田美粋。よろしくどうぞ。
それでは「がんこエッセイ」の始まり始まり!

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本屋さんに行く目的が、日本から消えかかっている。
昔、本は本屋さんに行かなければ当然買えなかったわけで、「本を買う」というれっきとした目的のために本屋さんは存在していた。
 それに加えて当時は西友の向かいの、ロータリーの角にあった「がんこ堂」は、
「迎えに来る親を待つ」とか「雨やどり」とか「なんかまっすぐ家に帰りたくない時に」という、ちょっとしたのりしろの役割も果たしてくれていて、また、「買う」という目的以外の目的での滞在も、優しく受け止めてくれた地元の本屋さんだった。どれくらいの時間を、幼い頃から東京に出るまで「がんこ堂」で過ごしただろうか。昔から読むのが早かったので「がんこ堂」で読み終わってしまった本たちもあった。
けれどももちろん、売り物を買わずに読んでいる、という後ろめたさは、中学に上がった頃からはあったと思っていて、優しさに甘えずに欲しいと思ったものは買わないとね! というような気持ちでやっていたので、
東京で暮らし始めたときに、池袋の「ジュンク堂」という大きな大きな本屋の、各階に「読むための椅子」が置いてあって、そこで何時間でも居座って本を読んでいてもいいというシステムを知った時は驚いた。
え? だってここって、図書館じゃなくて本屋さんやんな?

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おかげで貧しい学生時代は、ジュンク堂に通いつめて、戯曲とか脚本とか、結構な数の本を読ませてもらった。もはやありがたかったの一言に尽きるけれど、今から思えば、それらはやっぱり、東京という競合が多い街での、集客手段だったのだろうなあと思う。まず「足を運んでもらうこと」これがないと、そこで本は売れないわけだから。そのあと六本木なんかのTSUTAYA書店にスタバが入って、買いもしない雑誌を、コーヒー飲みながら、座って読んでもいいというシステムが投入された。
え? マジで? まっさらの雑誌やのにいいの? 零したりのリスクあるやん? 
最初は都市伝説であって嘘だろうと思っていたので、そのスタバで堂々と雑誌を読めるようになるのには少し時間がかかった。
 そしてとうとう、先日、日比谷のミッドタウンには、ほぼほぼ本を置いていない書店「有隣堂」が誕生してしまったのである。
悲しいことに本屋はもう、本を売っていては、成り立たなくなってしまった。
本屋での本は、本が主役ではなく、コーヒーとかオシャレな雑貨の「バーター」になってしまった。
(バーターというのは業界用語で、有名な芸能人を起用するとき、そこの事務所の売り出し中の新人を一緒に使ってもらうこと。おそらく「束」のさかさま読みだと思う)
でも、本屋さんたちは、本当は本をバーターなどと思っていない。
本屋さんや、本に携わる人たちにとってはいつだって本が主役で、本以外のものが基本的にはバーターなのです。なので本を愛する人間としては、
もはやどっちがバーターでもいいので、やっぱり本屋さんに生き残って欲しい。

わたしはここ3年ほど本を出していないのだけど、立て続けに本を出している時も、世間ではおびただしい本が毎月出版されているので、東京の本屋では、刊行月の次の月には、わたしの本は「面置き」もしくは「平置き」から「本棚にささって」いる状態になり、しばらくすると本屋さんから消えている、そんなことが多かった。
そんな中「がんこ堂」さんには、カートの中にしこたま積んでいただいた上、
等身大のパネルも制作してもらう、というような温かい応援をずっとしてもらってきた。そこでわたしも、何か「がんこ堂」さんに対してできることはないだろうか、と考えた。一緒にできて、楽しいこと。
そしてもしかしたら、それを楽しみにしてくれるお客さんが一人でも現れてくれて「楽しい」が、広がること。
そんなわけで守山モカコのバーターエッセイ「Tokyo発、シガ行き➡︎」は始まります。Tokyoから綴る、地元のエピソード、みんなが読んで知ってる話や、あるある〜とか、わかるなあ、というようなことを交えてお送りしたいと考えています。あ、あれそろそろかな、なんて思って、ちょこっと本屋に立ち寄ってもらえるような、そんなエッセイになるといいな、お楽しみに!

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                   (イラスト=杉田美粋☁)


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